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青空文庫

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青空文庫で読める作品を紹介しています。
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#源氏物語

本が私を育ててくれた 【読書エッセイ】

 母は他人の意見に流されやすい人だったので、子どもの頃、誰かが言っていたという理由で、自分には合わないことをあれこれやらされたものです。いつかひとこと言いたいと思いつつ、言ったことがないのは、「流されてくれて良かった!」と思うことがいくつかあるからです。  その一つが、祖母の家の近所にあった本屋さんのアドバイス。その本屋さんのアドバイスに従って、季節ごとに本を買ってくれたのです。今でもたまに話題になるようなロングセラー本が多かったのですが、どれも夢中で読みました。  母は本を

2024年1月読書記録 クンデラ、太宰、紫式部

 1月の読了本は6冊。川端康成の『山の音』については別途感想を書く予定です。 廣野由美子『批評理論入門「フランケンシュタイン」解剖講義』・『小説読解入門「ミドルマーチ」教養講義』(中公新書)  十九世紀の英国女性作家二人の小説『フランケンシュタイン』と『ミドルマーチ』を題材にして、小説をどう読めばいいか解説する新書です。  noteで書いている読書感想文の参考にしたいと考えて読んでみました。自分でも実践している読み方もありましたが、より深くより幅広い読み方を教えてもらえま

魅力的な脇役たち 与謝野晶子訳『源氏物語』 後篇 【青空文庫を読む】

 前回書いたように、現代語訳や翻案を繰り返し読むぐらいに『源氏物語』が好きなのですが、実は、主人公の光源氏をそこまで好きなわけではないんですね。  嫌いではないですが、そんなに思い入れはない。私には、明るすぎ、王道すぎる主人公なので。  光なりに、苦労はしているのですが。母親と早くに死に別れたり、こじらせ気味の恋愛を繰り返したり。手を出してはいけない女性との関係がバレて、須磨に逃げたりもしています。でも、京に復帰した後の源氏は、全てにおいてパーフェクトで、何をやってもうまくい

どの訳を読むか? 与謝野晶子訳『源氏物語』 前篇 【青空文庫を読む】

 これまでも毎月の読書記録に少し書いていたのですが、今回からは「青空文庫を読む」というタイトルで、特に良かった作品や深掘りしたい作品を取り上げていきたいと思います。  青空文庫には主に著作権が消滅した作品(作者の死後50年経ったもの)が収録されていますが、古文で習うような作品を入れても読める人が少ないという判断なのか、ざっと見たところ、江戸期以前の作品は『古事記』ぐらいしか見当たりませんでした。ただし、古典作品を有名な作家が現代語に訳したものがいくつか見つかりました。  以