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エル・ウッズみたいな女のコ。番外編。オトコの嗜み身だしなみ。

それから何日かしてアルベルトさんと連れ立って僕のスーツや衣類をみにいった。フレッドさんは後から来るらしい。ずいぶん前にもこういうのあったなあと回想を巡らしているとアルベルトさんがハルくんとはあまり話したりする機会なかったけど、これからは増えそうだね。と言われた。

あ、はい!是非!よろしくです!

勉強はどう?

まぁまぁですかね…人に教える。って難しいですよね。アルベルトさんはひよこの家庭教師して長いんですか?

ああ…そうだねえ、アカデミーの頃からだし、まあ、うん…昔もそうだからひよこちゃんにはかなり長い間家庭教師してるなあ…

そうなんですね。

自分のおさらいにもなるし、ひよこちゃん好奇心旺盛だからこちらが全く予測してない質問くるから僕もただそれだけ教える。ができないからやっぱり前もって本読んだり調べたりするようになったし。

あー、あー!わかります、それ。

ここだよ。

見るからに高いってわかる外観の店構え

見るだけでも為にはなるし、試着だけでも何も問題ないよ。まあ、でも…うん。たぶん気に入ると思うよ。

見透かされてる

別に僕は趣味らしい趣味もないし、浪費家ってタイプでもないし、だから払えないってことはないんだけど

ハルくん。

はい、あれ、試着してみたら?

アルベルトさんが指さしたスーツはパッと見でいやこれいくら?みたいないい感じのスーツだった。

値段今見たらだめだよ。買うかどうかもわからないなら値段知らなくていい。単純にそれが好きか嫌いかそれだけわかればいいから。

はい。

前にも言われたなこれ。

店員さんにジャケットを羽織らせてもらう

うおー、なんつうかこれ、めちゃめちゃカッコよくね?スルッと腕が通って肩も窮屈じゃない。

うん、似合うね、それ。背中もいいラインになってるよ。

くるりと背中を鏡にむけてみる、
おおっ!なんだコレ、3割増しに見えるし!

アルベルトさんは店員さんがいろいろどっさり抱えてきたスーツを生地を見て手で触ってボタンを眺めていた。

単なるネイビーのスーツなんだけど段違いに違う。コレかっけーなー。いいなあ。

パンツも履いたら?

あ、はい。

彼に似合うシャツとネクタイも出してくれる?

アルベルトさんは上顧客なのか担当の店員さんらしき人がキビキビ動いて他の人に指示して
シャツとタイを用意させて持ってきてくれた

試着室に入って全部着替える
滑るように滑らかな生地に誂えたかのようにピタッとジャストフィットする。

こういうのミシェルさん好きだろうなあ。
とか何故かミシェルさんを思い出した。
なんで?今ミシェルさん思い出したんだ?

どうですか?

試着室からでてくる。

黙ってじーっと見ているアルベルトさんとアルベルトさんの担当の店員さん。

え、似合わない?

いや、いい感じだなとおもって

ええ、ほんとに

強いて言うならシャツのだぶつきを補正かな。

ですねえ、後ろ身頃と袖口を少し直せば更にいいですね。


ハルくんこれ好き?

あ、はい。気に入りました。

じゃあこれはどう?

山のように積み上げられたスーツの山山山!
僕ここまでしたことない。試着からでて戻っての繰り返しでクラクラしてきた。

かたやアルベルトさんは2〜3着厳選したのか
ジャケットをさらっと羽織ってはうん、これ。とか、アレは直して。とか。

何かもう違う世界

肩と背中は自分のラインに直さないと着ちゃいけないよ?

当たり前のように言いながらそこにあるソファーに腰掛けるアルベルトさん。いやもうなんか
この人達はなんなんだろ。でもそうだフレッドさんもそんな事言ってた。

着道楽はフレッドのほうだろ?
僕はそんなにたくさん服は持ってないよ?

さあ、行こうか。さっきのネイビーはハルくんに似合っていたよ。

ええ、はい。でもまだ値段知らないです

気に入ったなら値段聞いてきたら?

そうします。

僕はネイビーのスーツとネクタイとシャツの一揃いの値段を聞いた。やっぱり案の定な値段だったけど、あれだとやっぱりそうなるよね。て納得させられるようなスーツ達だった。

次に行こうか

意外にもアルベルトさんは真反対な感のお店にぶらりと入った。

え?こういうとこにもアルベルトさん行くんだ?

ハルくん、あれ、さっきのネイビーのスーツに似てないかい?

ああ、ほんとだ!

羽織ってきたら?

これなら余裕で買えそうな。最初から値段が表にでてる。

似ているが異なる。当たり前だけど。

パッとしない。いつもならこっちを間違いなく買うだろうが気乗りしない。

どうだった?

Tシャツを物色中のアルベルトさんが聞いてきた。

うーん、ピンときませんでした

そうか(笑)

じゃあ次に行こうか。フレッドも着いたみたいだし。

はい

外にでるとフレッドさんがいた。スーツじゃないフレッドさんは会社と印象が違う
カジュアルなのだがやっぱりでも決まってる

ハルくんと見てきたよ

ああ。どうだった?

ハルくんはMKHDでどんな仕事展開したい?

いきなり?

そうですねえ…まあ、もっといろんなプロジェクト関わりたいなとかは思いますけど。

また直球な質問してくるなあと苦笑いしながら言うと

おまえがどの程度の権限持ちたいかで持つものが変わるから。てか、おまえ、女のコと遊びに行くときどんな服きてんの?

それ聞く?

あえて聞く。

女のコと遊びにいくなんてシチュエーション生まれてこの方数える程度ですよ。すいませんね

ならスーツはともかく、普段着もいるってことだよな?

下着も…だね?

なんで下着?

おまえ…いやいい、でもいる。必需品だし。消耗品だし。

前に買ったスーツは軽く修理してだな…型くずれ直さないと、で、スーツ一着、普段着、アンダーウェア、靴、スニーカー。

結構な出費になりますね(笑)

車買うより全然安いぞ。

車と比較しないでください

で、どうすんだ?

チラチラと頭をよぎるミシェルさん

…意味がわからない…けどなんとなく変えた方が良さげなのはわかる。

…揃えます。約2年ぶりに洋服買うし。この際全部。

おおっ!かっけーな。ハル

お二方も買い物されますよね?

ああ、そのつもりだけど?

僕はさっきスーツ選んできたよ?

あ、あれですか?

うん。

やっぱりあのお店もう一度行っていいですか?

もちろん。

僕は最初に試着したスーツを買った。
もちろん補正が必要なのでしばらく手元にはないけれど。

フレッドさんが入ったお店はセレクトショップでいろんなブランドのいろんないいものが取り揃えられていて、もうこうなるとお手上げで僕はフレッドさんとアルベルトさんに丸投げをした。

おまえこれきろ、ハルくん、ちょっと。の繰り返しでめちゃめちゃお腹が空いてきてしまい
ぐったり。

僕らの山のような荷物は配送してもらうことにしてオトコばっかりのメシとか味気ねえのフレッドさんの一言でひよこを呼び出した。

おまえいまからこい。うまいもの奢ってやる。近くに来たら電話しろ。とかフレッドさんの言い方がひよこにしか言わないくだけた口調でここはほんとに仲良しなんだなと空腹マックスな僕は聞いていた。

フレッド、ひよこちゃん呼んだの?

ああ。夕飯ここで食べて帰ればいいだろ?

そうだね

ハル。ミシェル来るぞ?

は?ひよこと遊んでたのミシェルさん?

ああ。

なんか二人ニヤニヤしてる

なんですか?

いや、おまえ、もうすぐ春だなあ。と思って

いま秋ですけど?

いいんだよ。

あの洋服やっぱり買った甲斐あったね。

ですかねえ。

まさかそれから半年もしないうちにミシェルさんと結婚するなんて誰もが予想外だったんだけど。あのスーツ買ってて良かった。






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