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エル・ウッズみたいな女のコXVI

勢いづいて海に来たはいいけれど、寒い…
赤いオープンカーの季節では無いことは確かだ。幌がついているのでよかったけども。

アイスコーヒー。会社ではそればかりだけど、冬の始まりの海沿いのカフェのテラス席では不向きだと知った。温かな湯気をのぼらせているミシェルさんのショコラショーのが断然美味しそうだ。

何か話さなきゃと思うが、饒舌ではない僕の口からおよそ女のコと2人のときに話が弾む話題がでてこない。こんなの楽しくないだろうなあ。。とも思うが、海は断然綺麗で大きくて果てがなくてさすが保護区だけあるな。とそっちについ目がいってしまう。

ハルくん?

あっ!!いや違うんです!なにをはなしていいかわかんなくて…すいません。

そう?よかった。つまんなかったかな?て思っちゃったから。

つまんないなんて!そんなことありません。
いい景色だな。と感心してました。

そうねえ。うん。当たり前の風景だけどハルくんは違うもんねえ

そうですよ。だいじにしてほしいです。

ハルくんは…どうしてちゅーぎんに入ったの?

入社理由ですか?それとも試験内容についてですか?

…じゃあ両方教えて?

あ、はい。まだコミューンの教育機関にいたときにですね、惑星環境学についての授業がありまして、そのときにちきゅうをはじめて見たんです。

うん

感激したんです。なんて美しいんだろうって。

うん

それが動機です。

え?

はい。それです。ちきゅうは…ミシェルさんとこもそうだと思いますが連合規約で特別観察保護区に定められています。ご存知ですよね?

ええ。まあ

なんでこんな美しい自然溢れる所で生活してる人達がどんどんエネルギーを放棄してるのか意味がわからなくて。

はあ

あ、それは太陽系歴史学のちきゅう人類についての授業で知りました。ぼくたちのはるか昔の祖先は…粉々に砕け散る星一つから命からがら逃げてきて今はコミューンを築いてそこに居住してます。それはご存知ですか?

ええ。

もう、帰りたくとも帰れないんです。

僕らははじめからもうそこに住んでいるからそもそもどんな惑星だったかわかりません。

そうなんだ

はい。

さみしい?

どうだろうなあ…正直わかんない。
でも…うん…寂しいというか…切ないですね。

そっか

はい。で、話を戻しますが、7つある評議会でちきゅうは度々議題にのぼりますが、、僕ら…と同じ道筋を辿ってほしくないので特別観察保護区に指定されました。

うん

僕はちきゅうの文化を調べるのがすごく好きで面白くて。ひとり勝手に研究していて。それでいつだったか忘れたんですが、就職活動が始まるシーズンに張り紙を見つけて。

張り紙?

うちゅーぎんこうの新規採用試験です。

ああ〜

幸い勉強はキライではなかったので受けてみることにしました。

…ちゅーぎんてめちゃめちゃ難関じゃない?

アカデミーの評定は基準を満たしてましたので

ハルくん…評定いくつだったの?

バンドライン8.5です

え…そんな人いるんだ?

ちなみにどこのアカデミーに行っていたの?

…評議会アカデミーです

!!うそっ!!最難関アカデミーじゃないっ!!そこで8.5て…

さして趣味もなく…というか趣味がちきゅうのあれこれを調べる事だったので、僕にうってつけだ!と。


まあ…そうなのね

ちきゅうだったからです

ん?

ちきゅうの人にエネルギーを投資する部門の募集だったからです。
然るべき人に然るべき投資をし、さらに増幅されて還ってくるエネルギーをまた次の対象に投資するんです。その原資はちきゅうの全生命体で、もちろんこちらの惑星外エネルギーもありますが投資の対象は全員。誰しも可能性があるのです。しかし基準を満たし、やる気があれば。なのですが…

確かにすぐに投資が難しい場合もありますが、サポートできるんです。

うん。。

ワクワクしませんか?

ええ

で、教授に推薦状だしてもらって、試験うけて面接5回して合格しました。

ふうん…て面接5回もあるの?!

ええ。

仕事は好きですよ。やりがいがある。でもまあ、その…あまり僕、立ち回り上手くないんです。出世とか派閥とかあまり興味なくて…で、、その直属の上司と相性があまり良くなかったみたいで。で、その時にちょうど社員研修でミカエルさんとこに研修に出されて。

なんか知らないけどミカエルさんが気に入ってくれたみたいでヘッドハンティングされてMKHDに転籍しました。

ボス自らヘッドハンティング?

はい。別に珍しくないですよ?フレッドさんもそうだし。て、あの人はひよこ絡みなのでまあ、パターン違いますけど。

ああ、ひよこのガイドだもんね

あの人ちきゅう人だったから詳しいんです。ガイドだけどここで一緒にひよこをサポートしてもっと引っ張りあげてやれ。てボスが。

…あの人やっぱりひよこファーストね(笑)

まあ、うん、そうですね、彼本人の資質と才能を存分に振るえますしね。かつて存在していた場所に貢献できるし。

ひよこ…なんかなんかポテンシャル高めね?

全員そうなんですよ?宝の持ち腐れにならないように全ガイド必死なんです。フレッドさんだけじゃなく。みな保護する側は必死です

本人たちが一番わかってない。皆ちきゅうに必要な人材なんです。

ダイヤモンド鉱山なわけね?

はい。ミシェルさん例えが上手いですね。

掘りだして磨いて。みんなそうなんです。でも磨かれる過程を嫌がる人が増えてきました。年々増えてます。だから懸念されてるんです。自分で考えることを放棄しはじめて、、です。

ああ…

すいません仕事の話ばかりで

いえ!すごく興味深いわ

だからその…僕、仕事好きなんです。

それは、見ていてよく分かるわ

ミシェルさんは?

え?わたし?

はい。

…うん、仕事好きよ。美容とファッションと同じくらい。まあ…あまりそんなふうには見られてないけどね。

ミシェルさんはキラキラしてます

は?

ミシェルさんはキラキラしてるから大丈夫です

あ、ありがとう。

フフっ

何か僕変なこといいましたか?

いえ、違うの。嬉しかっただけよ

よかった

ハルくんは誠実が道を歩いてるって感じね

そうですか?

わたしはそう思うわ。

はは

あ、アイスコーヒー寒いから無理やり飲まなくていいから。わたしの飲んでみない?温かいし。

あ、はい!じゃあ遠慮なく。

フフ

帰るときもっと寒いだろうから夕飯は温かいものにしない?

そうしましょう。

ハルくんといると安らぐわ。いいね、こういうの。

僕はなしがうまくありませんよ?

いいじゃない、別に。

ね、次はどこにいってみたい?まだ行ったことない所とかある?

…あー、雪。雪を見てみたいです

雪?わたしもそういう所あまり行ったことないかも。

みんなでいきましょ?雪遊びしに

はいっ!楽しみにしてます

ミシェルさんは…えっとその僕といてつまんなくないですか?

いいえ、全然!一度もつまんないなんて思ったことないわ。

よかった。実はちょっと気がかりだったんです

えー?!ハルくんといると気分がいいのよ。
安心するわ。ほんとよ?

…よかった。












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