【無料公開中】保健指導の極意
~面談に臨む際のマインド~
とても、ひとつの記事にまとめられそうになくて、ちまちま書いてはやめて。実は3か月かかりました・・・
よかったら読んでください。まとまりないです(笑)
保健指導を行う上で、わたしが大切にしていることは…
相手が何を大切にして生きているかに目を向けること。
私たち支援する側も、支援の対象者となる働く社員も、病気よりも健康な方が、不摂生よりも健康的な生活の方がいいのはわかってるし、でもそんなにうまくいかないし、生活に気をつけていても避けられない病気もあります。
今、その方がどんな生活をしていて、仕事は忙しいのかひと段落してるのか、悩んでるのか前向きなのか、毎日を楽しんでいるか、孤独じゃないか、仕事以外の役割に追われてないか、何時に寝て何時に起きて、体のために何に気をつけているか(ひとつもない人ってあまりいない)・・・
相手を知ろうとすること。
働く場で見せてる姿だけじゃなく、その背景も含めて対象者を知ろうとすることかなと思います。
過去の失敗から
わたしは、保健師が複数いる大きな企業から、中小企業などを対象とする健保に転職した時に、保健指導が全然うまくいかない!と壁にぶち当たりました。自分は今まで何をやっていたのだろう。。
それを感じたエピソードがこちら。
↓↓
あるとき、ジーパンを縫う工場のパートさんの保健指導をしたときです。できるだけ短く!という会社側のオーダーもあり、ありきたりなことをこちらがお伝えする一方的な保健指導をしていました。
LDLコレステロールが高い方が来られ、きくと毎日菓子パンを買って食べていたので、
「菓子パンよりも、ごま油とかオリーブオイルなどいいあぶらを摂るようにしましょう」
と伝えたところ、対象者の方から「何それ、安い?」といわれたんです。
衝撃でした・・・
それまでは、人はある程度の健康に対する知識があって当然だし、何よりも健康に気を付けて当たり前、といった価値観を私が勝手に持っていて、それを押し付けていたんじゃないか、、
それまでいた大きい企業では、勤務時間中に保健指導をやってもだれも咎めることもなかったし、一般的な知識をお伝えする保健指導でみなさん理解してくれていると思っていたので、「伝わっている」と勘違いしていました。
うまくいっているように自分で思っていても、果たして本当にそうか。
たぶん、その大きい企業の社員さんたちは、うんうんって聞いてくださって、がんばってやってみますと返してくれて、「大人の対応」をしてくれていたのだと今は思います。本音と建て前ですかね。
そんなんで「自分なりに意味のある行動」を人に言われたからと言って簡単に変えよう!なんて思ってもないんですよね。
前述の衝撃の保健指導のあと、いろいろな研修を受ける機会もあり、いろんな刺激を受けました。
例えば、コーチングの研修を受けたときに、講師の先生は(もともと薬剤師さんだったが今はコーチングの先生)
「わたし保健師でもないし、保健指導の知識ないけど、保健指導できる」と言っていて、それも衝撃でした。
そうか、健康に関する知識を与えることではないんだ。
相手のタイプを知って、何が響くか見ることも大事なんだ。
そして、自分の強みを生かしてのばしていくこと(苦手なことではなく、得意なことに目を向けること)も大事。
石川先生の健康学習では、行動科学に基づき、「人に元気を与える」ような存在になることを学んだり。
社会学の勉強では、「業務が遅くまである会社の従業員に『食事が遅くなると太りやすいのでやめてくださいね』といっても個人の力では変えられない」ということも。
いろいろな学びがつながってきて、今は「個別支援メインで時間を割くより、少しの力で全体を動かす仕組みづくり」をメインに活動をすること、でも個別支援も大事じゃないわけではない。みなさんの日々の生活を振り返って、より幸せに生きるためのきっかけをつくる大切な時間。なので、個別支援のテーラーメイド的な補足で全体の仕組みだけでは行き届かないところを補いながら、企業全体の底上げをしていけたら。
そんな思いで(そんなうまくいかないけど、そうなったらいいな!という気持ちで)、今は一人職場での活動を展開しています。
保健指導だけやってたらいいわけじゃない、でもせっかくやる保健指導もその方だけに準備した大事な時間。
気持ちよく帰ってもらいたい。
明日への活力にしてほしい!
保健師としては、来てくれた方に笑顔をお渡しして、お互い元気をチャージして、疲れているときはお互い励まし合い、そういった対等な関係性での貴重な時間になるように、心がけています。
保健指導するにあたって
みなさんは、保健指導は苦手ですか?得意ですか?
例えば保健指導の場面で、
保健師「○○の数値が高いですね。塩分控えた方がいいですね」
対象者「わかりました、控えます」
え?本当?
次にきたときに、期待していた効果はみられましたか?
次会ったときにできていなかったら、「行動を変えられない困った人」ですか?
専門職として、「私が指導する人」「あなたは指導される人」ではなく、一人の人間として関わるには…?
自分だったら人から言われてすぐに変えられますか?
例えば、一日の疲れを発散させるのが毎日の飲酒(適量を超える)だったとすると、保健師に「お酒は控えてくださいね」で控えられますか?
とっている行動には理由(背景)があって、自分がおおかた良しとしてやっているんですよね。がんばったから好きなだけ飲みたい!とか食べたい!とか。
実際、かくいう私も30代後半からむくむく太りだして、しかも子育てしながらの仕事でなかなかストレス発散できない!
嫌なことがあったときなどは、人に話すより(その人の個人的な意見を言われると逆にもやもやすることもあったり、結局向こうの話を聴く側になったりするので、実はあまり相談しない)、好きなだけ食べたい!深夜にスイーツ食べちゃう!などをしてバランスをとっています(笑)なので、ここ数年は、8㎏くらいの増量、減量を繰り返しています・・・わかっててもできないですよね。
太ってるの、気にしているときに保健指導を受けて、「去年よりずいぶん太りましたねー。少し減量しましょうね」なんて言われたら・・・静かにシャッターを閉めます。。
なので、言いたい!
保健指導の場面が、「パンフの説明屋さん」になっていませんか?
それなら保健指導、いるのか?と思うのです。
あるとき、とある学会で(公衆衛生学会だったのか・・・ちょっと覚えていない。かなり昔)こんな言葉を聞いて、ハッとしました。
もとになる言葉はこちら↓↓
老子『授人以魚 不如授人以漁』
そうか、自分で考えて、やり方がわかればその人は日々日々困らなくなるのか、と思いました。どうしても支援職って、すぐに魚を与えて、その日はいいですがまたその方が困ると頼ってきて、という共依存の関係性をつくりがちになります(感謝をされるから、支援職も承認欲求を満たせるというメリットあり)。でも、人から言われてやったことではなく、自分で考えてやってみてできた喜びって、ずっと継続できていくんじゃないか。
看護の理念を思い出しました。
もし、片麻痺の方がいたとき、本当にその方の人生を考える支援職であれば、食事を食べさせたりしないですよね。介護士さんも、よく勉強している方ほど、ご自身の残存機能を落とさないように(逆に高めるように)いろんなできることを探して一緒にやってみて喜びを味わうみたいな…何も考えずにそのときだけのお手伝いをしてもその方は、誰かがいないとできなくなってしまう。そんなうわべのやさしさ、ご本人の生きる楽しみを奪っているだけで、「やったね!できたね!」って自分で食べる喜び、楽しさ、自由、そういうものを支援職のエゴで奪ってしまってはいけない、そう思っています。
健診後の保健指導だけでなく、メンタルの相談でも(自律を目指さないカウンセリングも薬だけ与える治療も)一緒かなと思います。よくよくありがちなのが、本人が言いづらいことを保健師が代弁してしまったりすること。ご本人の口で語られるわけでもないのに、そんな無責任なこと、なかなかできないし、どうしてもそうなってしまうときは重々、気を付けないといけません。できれば、その方に自分の口で話してもらうこと。
保健師はそれを応援する(最初は横にいるでもいい)、少しずつご自分で、職場の人との関係性をつくるコツをつかんでもらえたら。
私が自分の活動のなかで目標としているのは、みなさんが定年後も人生を少しでも楽しんで送っていけるように、「自立」を目指していて、「相談に来なくなる、産業医、保健師がいらなくなる」こと。そういう思いで支援をしています。(仕事なくなるじゃん笑。そしたら別の会社に行けばいっか。というか、そんな果てしない夢はなかなか叶わないかも笑。)
どんな時間にするか?
どんな保健指導だったら、「きてよかった」「また来たい」と思ってもらえるか。そういったことを頭に置きながら、相手が今日この面談時間をどんな時間にしたいかをお尋ねして面談をスタートします。
「保健指導」といってしまうと、上下の関係性のように聞こえてあまりいい印象を持てないので、弊社では「保健師面談」と呼ばれています。健診のあと、年に一回全員面談を行っています。全員やる必要があるのか?(お金と時間をかけて)という話は産業医の先生によって賛否両論いろんな意見をいただきますが、今のところ人事、役員の要望で全員が基本です。コロナで健診の予約も取りづらくなり、スケジュールが延期になって「希望者だけ行います」という方針に、県によっては「なぜ全員してくれないのか」問題が勃発しましたが苦笑。
毎年保健師面談受けたって、例えばお一人お一人は、自分のLDLコレステロールをどうやってコントロールしたらいいか、血圧管理のためには何をしたらいいか、なんてわからなくて(それじゃあ保健指導としてだめじゃん的な短期的な評価もあるんだけど)、保健師面談の効果ってどうなの?に関しては、私たちも惰性でやるのではなく、せっかくお時間をいただくなら有意義な時間にしたいものだなあと思ったりします。
弊社は、1000人以上の社員を常勤保健師1名で対応しています。なので、保健指導は外注しています。が、まる任せにするのではなく、その保健師さんたちにどのようなポイント、マインドで保健指導をしてほしいか、私自身がみなさんに研修を行ってから業務にあたってもらっています。
弊社では、生活習慣の問診票を記入して面談にきていただくので、まずは「保健師面談でききたいこと」に記述があるかをチェックしています。
健診結果ご覧になられてどうでしたか?気になるところはありましたか?
日頃体のことで気になっていることはありますか?
など伺います。
勤務時間中に、しかも会社が認めて保健師面談できるなんて、ありがたや。
少しでも、みなさんの人生が充実するよう、専門職としてお役に立ちたい。
そういう気持ちでやっています。
保健指導における姿勢
まずは、相談に来ていただいた方に、
お忙しい中お時間下さり、ありがとうございます。
お会いできて(お話できて)うれしいです。
という言葉や姿勢で態度を示します。
相手を不愉快にさせるような態度や威圧的な雰囲気では、保健指導ではなくとも、そもそも信頼できる相手としてのコミュニケーションができません。
保健指導を行う上では、アサーティブコミュニケーションや傾聴法が基本になると思います。
アサーティブコミュニケーションでは、「相手もOK、自分もOK」という関係性で、信頼関係がうまれます。
そして、相手に関心を持つこと。相手の生活を想像すること。
「保健指導」というと、保健師が一方的に伝えたいことを伝える場面、のように思っていませんか?正しい情報をもとに、相手をコントロールしようと思っていませんか?
社員さんから過去にこんなことを言われたことがあります。
「保健師さんってアドバイスしないといけないから大変ですね」と。
実は、私はアドバイスほとんどしないんですよーと答えています。
まったくしないこともないけど、まずは傾聴。ひたすら傾聴。そして「いい面」のフィードバック。そして応援!
どうしても私たちは「悪い面」に目がいきがちです。
例えば相手から「お酒がストレス発散です。土曜も仕事をすることが多くて。休肝日は日曜の1日しか作れていないんですよ」と言われたとします。こちらが「休肝日は2日とるようにいわれています」などと言ってしまったら・・・
自分が言われたらいかがですか?
ポジティブな面に目を向けて、こんな言葉でお返しできたらどうですか?
「体のことを気遣って、1日お酒を飲まないようにしているんですね。すばらしいですね。お酒を飲まない日曜日はどんなふうに過ごされているのですか?」
またそこからお話が広がったり、1日しか取れていなかった休肝日も、いい面としての気づきを促し、相手を勇気づける(続けてみよう、何かほかにもやってみようなど)ことにつながるかと思います。
また、みなさんだと、保健指導を受けに来た場面で、保健師がどういうスタンスだとやる気になると思いますか?
どんな声かけが気分を害さず、なんだか元気になれて、「何か体にいいことやってみよう!」と思えますか?
保健指導の場面では、
よかったですね!とか
すばらしいです!とか
がんばってますね!とか
できていることを認めることもそうですが、できていなくても相手の存在自体を認める。
相手の存在を承認するような場であると、「来てよかったな」「話せて楽しかった」「次に会う時までこれをやってみようかな」と思ってもらえる気がします。(自分に置き換えて考えること!)
承認された!という信頼関係が、
やってみよう→続けてみよう→結果が出た→生活の一部になる(定着)、という好循環を生みます。
話を聴くときはわかったつもりにならず、本当に、本気の本気でよくよく聴くこと。人は、自分の経験や価値観で途中まで聴いて、あーわかったわかったと判断しがちです。(ここは認知行動療法の概念を役立てること)
※こちらもよかったらご覧ください↓↓↓
何かお伝えしたいときは、許可をとって伝えるようにしましょう(4A+Aの記事でも触れています)。
【相手のやる気をなくしてしまう、不愉快にさせてしまうワード】
そうじゃなくってとか、
前にも言ったと思いますがとか、
なんでやらないんですか?とか、
言われたらどうでしょうか・・・
たちまち心のシャッターが下ろされますよね。
ご本人だって変えられるもんなら変えたいと思っている習慣もたくさんあります。自分の型にはめて(こちらが)正しいと思う行動をさせようとしたり、決めつけ(例えば血圧が高かったら、塩分をたくさん摂っていると思い込むなど)で物を言ったりしていませんか。
保健指導に必要な知識
基本的には傾聴の姿勢で、ご本人の気づきを促し、自分で目標が立てられるようにします。自分で立てて、実行して、できた結果は自信につながります。アメリカの調査※(米アトランタ地区連銀の経済学者が、1992年から2011年の間に米国人口動態によって行った調査)では、「もともとタバコを吸っていない方(非喫煙者)」や「現在吸われている方(喫煙者)」よりも、「禁煙に成功した方」の報酬が一番高いことがいわれています。
この調査の読み解きとしては、禁煙できたという自信が他の生活行動にも影響し、報酬が上がったのではといわれています。
禁煙に成功した人、喫煙者や非喫煙者よりも報酬高い=調査 - WSJ
なので、できた!という経験は、その後の生活に大きく影響してくると思います。よい習慣が継続できたり、生活に定着してくるだけでなく、喜びや達成感、自信、人生の味わいにつながります。前述のように、仕事のパフォーマンスにも影響するかもしれません。人が変われるチャンスを保健師がよいと思う方向に誘導しようとすることで、ご本人の力を奪っているのかもしれませんよね。
保健師に言われたからやったのに、結果が出なかった!と悲しい結末にならないように。ご自身で選択できるように(人生の醍醐味!)促していきます。
ただし、選択する際に必要な知識(相手が疑問に思ったことや知りたいこと)がすぐ情報提供できるように、私たちはいろんな分野の最新の情報を勉強しておかないといけません。
保健指導は、保健師の「知識の披露の場」ではありません。相手が必要とするときに、必要とする情報をお渡しできるように、たくさんの引き出しを持っておく必要があります。
保健指導の進め方
これからの人生を誰とどんなふうにどんな考えで過ごしていきたいか、それを引き出していきたい。そのために何が必要か。
やっぱりある程度の健康状態がないと、それは実現できませんよね。
そして、産業保健のよいところは「また次があること」。
急がず焦らず、じっくりとその方との対話を重ねて、少しずつでもともに前進できたら。
顔見知りになると、保健指導の場だけでなく、ちょっとした立ち話や電話でも、健康に関する話ができるようになります。(歯磨きしてても健康相談されたり苦笑。見つけられると話しかけられるので、昼休みは隠れてまわっています…笑←半ば冗談です。)
保健指導はゆるっと。
その方が居心地がいい空間が作れたら。
そうはいっても、特定保健指導などの場面では、目標を立てないといけないときもありますので、そのようなときは目標を立てられるようにアシストする役割もあるかと思います。
食べ過ぎているならどのタイミングで食べて、どういう理由でその食事を選択して、どのくらい食べているか。それをどう思っているかなどから、一緒に目標を考えていきます。
また、就業制限を検討するくらい数値が悪い社員に関しては、安全に働けるように、治療が必須となることがあります。そのようなハイリスクの方は、しっかりフォローすることが大事です。
また、企業として「喫煙率の低下」に積極的に取り組んでいるところであれば、相手が望んでいなくても、禁煙の話をしなければいけないときもあるかもしれません。そのときはきちんと意図をお伝えすること。「会社として喫煙者の禁煙サポートをするようになっています。なので、1分でいいので禁煙の話をさせてください」や少し禁煙補助薬などの紹介をしたら「やめたいと思ったときはお声かけくださいね」といった風にお話します。
企業としてのミッションがある場合は、しっかり実行できるといいですよね。
保健指導のときにみるポイント
相手の生活に目を向けて、相手が必要とするタイミングで情報をお渡ししたり、他の方でうまくいった事例をお伝えしたりします。
というか、あまり指導という指導はしてなくて、ひたすら相手の生活を知るために「聴く」がほとんどで、その場ではこちらから何もお渡しできなくても、相手が気づき行動できるイメージかなと思っています。
お話しを聴いて、「こうやってみたけどデータが改善していなかった」といったケースもあるかと思います。
その方が実際工夫してやってみたというプロセスも大事にして(工夫してやってみられたんですね!がんばってますね!と賞賛して)、そこは保健師としての経験と知識が役立つ場面です。「ここの部分をこうしてみたらうまくいくかも」「こうしたら結果が出た社員さんがいますよ」など情報提供を行いながら、どうしたらいいか一緒に考える姿勢でお話しできるといいですね。
その方に合った保健指導を行うために大事なのは、データばかりにとらわれないこと。
LDLの受診勧奨値を1超えただけで、受診勧奨するかしないかが決まり、LH比をみていなかったり、経年データを見ていなかったり。そもそも「その方の生活」をみようとしないとうまくいきません。データだけがすべてじゃないこと、人をよく観察し、その方の人生をそのものをみること。
数値がすべてA判定でも、本人が困っていることがあるかもしれないし、本人がもっとこうなったらいいなと思っていることがあったり、人生で大事にしていることなどがあるわけです。
なので、
・経年をみること
・本人が本当にいきいき元気に楽しく生活できているか。
をしっかりみて、サポートできるとよいかと思います。
今の自分に満足しているかというのもあるし、モチベーションというか、生きる力も含めて、お話ができたらいいなと思います。
(そこから一歩踏み込んだ戦略的な保健師面談を行うには・・・)
メンタルの相談で、今の自分の体調が悪いのは親のせいだ(過去にトラウマになることがあり)とおっしゃる方が来られたことがあります。
変えられるのは、未来と自分だけ。
カウンセリングの基本に立ち返って、ポジティブなフィードバック、お声かけができるように心がけています。関係性ができてきたら、私の気持ちも伝えることがあります。それもひたすら傾聴の時期(強固な信頼関係を築いてから)を過ぎてからです。
その方との信頼を紡ぎながら、よい方向へ導けるお手伝いができたら。その方が「今の自分は、自分の選択で成り立っていて、誰のせいでもなく、自分でポジティブな人生にも、ネガティブな人生にもできるんだ!」と感じてもらえるように、という気持ちでお伝えしています。死にたいくらい辛い、そんなことを口にされることもあります。そんなに辛かったんですね、でもその経験をどう捉えて、自分でいかようにも選択できるこれからの人生を、どんな風に生きていくか、それは○○さん次第だけど、私はこうなってほしい!
と少しずつ、そして、何より自分を大事にできるように、自分の心や体に目が向けられるように、サポートをしているつもりです。
人はみんな健康のために、という意識ではないかもしれないけど、自分は辛いもの食べすぎたらお腹壊しやすいから控えめにしてるとか、そういうささいなことでも気をつけてることがあると思います。健康を維持するために工夫していない人なんて、めったにいないんですよね。みなさん上手にバランスをとろうとしている。そこに気づけるようにフィードバックしたり…
もしかしたらこちらのお声かけでは何も変わらないかもしれない。
でも、支援職としてそこは、AIにはできない、私らしさ(いいところも、悪いところも含めて、その方との関係)を大事に支援したいなと思っています。相手も自分も、元気をもらえるような時間にしたいなと!
最初だけ少しお手伝いすることも
元気が枯渇して、体調が悪く、よくなりたいんだけど改善する気力もないときもありますよね。ご自分でできるように、が基本ですが、そういうときは、少しだけお手伝いをすることもあります。
例えば、受診する病院を一緒に探して、最初の電話だけかけてあげたり(何年も受診せず放置していた人で、そこをやれば継続して治療できそうな場合など)、減量のプログラムを最初の1週間だけお手伝いしたことも。
30代半ば、100㎏の方で血圧が160を超え、中性脂肪も高く、血糖値も上がって、腎機能も落ちてきている方でした。
受診をしても薬を飲みたがらず、放置していましたが、明らかに「減量すると改善するかも」という状態。(きちんと検査をして所見はない状態です)
「腎臓が、この年齢でこの数値であれば、喫煙者はこのくらいのスピードで腎機能低下してくるといわれている。○○歳くらいにはもしかしたら透析が必要な状態になるかもしれない。今年齢も若いし、データの劇的な改善が見込めると感じています。減量やりますか?どうしますか?」と半ば強引に迫ったこともあります(そういうケースはまれ)。ご本人が「やります!」とおっしゃったんですよね。実は、保健師的にNGでしょうが、わたしが1週間おかずを作ってきてお渡しして、夜は置き換えダイエット(昔産業医に勧められたものを紹介して)、1週間で6㎏痩せられました。そのあと、ご自身で工夫され結果的に15㎏の減量に成功。職場では、「○○くんがイケメンになっとる」「ニヒルな感じ」と評判でした。
3~4年ほど体重を維持していましたが、昇進し、本部から他県に異動(保健師なかなか会えない)したのをきっかけに、また半分くらいリバウンドしている(笑)!
まあ、そんなもんです・・・
でも、やればできるんだという経験から、またチャレンジした時には、あきらめず行動できるのかなあと、今は服薬もしながらなようなので、静観中です。(※やり方がまずいので笑、他の方がやる場合は要検討です。。)
個別面談だけを頼りにしない、組織の健康づくり
個別の保健指導を成功させるためには、組織全体の健康課題の解消も重要です。ずっとデスクに座りっぱなしであれば、運動する時間をちょっともうけてもらったり、帰りが遅ければなるべく早く帰れるように、業務の工夫も大事になってきます。
個人でなかなかきっかけづくりが難しい、継続が難しい場合は、会社の取り組みとしてはじめること。そのよい効果が、プライベートな時間にもいい影響を及ぼします。
例1)職場で運動の取り組みをしたら、体を動かすことに意識が向き、休みの日も運動するようになった(データもあり。弊社で取り組んでいる運動の取り組み→evidence.pdf (paradiso.ne.jp))。
例2)社員食堂で、バランスの摂れたメニューを食べるようになって、他の食事もバランスを意識するようになった。
個別指導だけでなく、同時に組織全体の健康度をあげていけるといいですよね。
最後に・・・保健師としてのマインドセット
保健指導を行うために必要なスキルは、疾患の理解だったり、面談技法だったり、勉強は必要です。
でも、その前に自分自身が人生を楽しんでいるか。日頃から、自分を大切にできているか。
自分を大切にできていないと相手も大切にできません。
感情の浮き沈みはあっても、それに気づき、ありのままを受け入れ(言葉でいうと簡単ですが、なかなか難しい)、自分が喜ぶこと(自分の幸せ)のためにできることを見つけていく。そして、人の幸せを心から喜べるか。苦楽を共感できるか。人の話を受け止められるキャパ(ゆとり)があるか。
自分以外の人と気持ちの良い関わり、関係性を築けるか。
わたしは、自分自身が生活(人生)を楽しみ、「この人といると楽しい」と思えるような人になりたいし、そのことで相手からいただく笑顔や喜びを感じて自分もまわりもともに成長していけるような人生を、謳歌したいなと思っています。
そのためには、普段から悲観的にとらえる癖がある方は、保健指導でもそのような投げかけしかできなくなりますので、ポジティブにとらえる(変換できる)癖をつけられるといいと思います。(かくいう私も自己評価が低く、ネガティブな面もあり。控え目、と表現したい(笑)!)
そして、仲間をきちんと選ぶこと。
切磋琢磨する同業の仲間は、よい刺激になり、モチベーションになり、とても勉強になります。ただ、いつも人の悪口や小言をいうような仲間と一緒にいると、別の仲間を悪くいう方もいて、そういう方とずっといっしょにいると、自分も引っ張られて「そういう人なんだな」と私もまわりをみてしまったり、私自身が別の方にそう伝えてしまったことがあります(実際はちがいました…)。今も、そのときの自分の発言の場面を思い出すとすごく嫌です。なので、ともに勉強する仲間は、前向きにがんばることのできる保健師を選びたいなと思います。(社内となるとそうもいかないときもあるでしょうが)
関わる人によって自分のマインドも変わってくるなと思っています。
保健師自身が楽しく、明るく、前向きに(前向きになれないときも、気づけるだけで大丈夫)過ごしていたら、社員さんもきっと引っ張られて、前向きに自分を、健康を、大事にしてくれると思います。
それから、社員にいろいろ言う前に、自分でもなんでもやってみること。
糖質制限も、休肝日も、ダイエットも、運動も、
まずは自分でストイックにやってみること。
続かない笑!
そう、私が続かないんです。
そんなずっとずっとがんばれない(楽しんでやれてないから、我慢してる!って感じなんだと思う)…
だから、社員さんたちも毎日一生懸命働きながら、プライベートでもいろいろありながら、大変だと思うんですよね。
アサーティブでいう「対等な関係性」で、私もいろいろやってみてうまくいくばかりじゃないし、でも少しの工夫でもできることを見つけて体を大事にしていきたいですよね、とお伝えしたい。
わたしの職場では、同じ建物にいる社員がよくわたしのことをみてくれていて、痩せただの太っただの(太ったは遠慮してあまりいわない(笑))、今日は声が枯れてるだの、この前休んでいたけど大丈夫かだの、、
みなさん本当によく気がけてくださっています。
応援したり、されたり、ですね。
わたしも保健師の前に人間なんで、そんな完璧にできません。
風邪だってひくし、落ち込んだりもするわけです。
だめだめなところも含めて、みなさんフォローしてくださいます。
父が亡くなってしばらくしてから久しぶりに出勤した時は、そっと顔を見に来てくれたり、電話をくれたりで、結局出勤して席にいても泣きながら誰かとしゃべっていて、ほとんど仕事してなかったと思います(1年半前のこと)。隣にいた事務担当者さん、困っていたと思う。。でも、無理しないでいられる場なので、仕事にも全力投球できるんですよね。
ありのままの自分でいること。
背伸びしないのが大事です。
そして、人間ですから完璧にはできません。
できるときもできないときも含めて受け止めて、職場のみなさんと自分もがんばるつもりで、応援し応援される存在でありたいなと思います。
そのためには、
うれしい!楽しい!にちゃんと気づける保健師でいたい!
みなさんの人生がすばらしいものでありますように。
※保健指導のロールプレイや、ご自身のメンタル相談など、必要でしたら月1,000円でWeb面談20分またはメール相談3往復ができます。ぜひご利用ください。
(おまけ)
春に異動で本部に来られた方から、
「単身赴任になるんで、食事のバランスがとれるお店とかあったら、今度教えてください」
といわれました。
しばらく会う機会がなく、数か月してすれ違った際に呼び止められて、
「cocomiさん、僕、自炊してるんですよ」
といわれました。「ええ!すごいですね!自分じゃ作れないからお店で食べて帰るっておっしゃってたのに、ご自分で作ってるんですか?え?どんなものを作ってるんですか?」
というやりとりがありました。すごくうれしそうに、「野菜もたんぱく質もとった方がいいから、鍋にしてます」と報告してくれました。
特に保健指導してない(笑)でも、関係性ができていれば(この方とは長く、部下のメンタル相談で連携してきた方)、ご自分で取り組み、保健師に報告してくれるように思います。そこで私がその方をまた承認、賞賛し、応援できたら。そういったやりとりが喜びにつながる、産業保健は本当に楽しいです。
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