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「世界で一番いのちの短い国」を読んで

本書は西アフリカの西部の国、シエラレオネへ著書の山本敏晴氏が国境なき医師団から派遣され経験した半年間の奮闘と涙と笑い(本書記述より)と、「国際医療協力」についての考え方が著述されています。

まずはじめにシエラレオネ🇸🇱という国はどこにあるかご存知でしょうか。参考にウィキペディアURLを添付いたします↓


著者が派遣された平成13年においてシエラレオネの平均寿命は日本人の約1/3程度でした。激しい内戦が長く続く中、医療従事者は国外に脱出し医療システムはほぼ崩壊している状態。著者は当時世界で一番命が短いといわれていたシエラレオネへ派遣されます。そして現地の医療水準をあげ、それを維持するべく文字通り寝食を忘れて目の前の命を救うことに尽力する姿が描かれています。

本書は非常に分かりやすく親しみやすい文体であるため読みやすい一方、「国際医療協力」という言葉の深い意味を問いかけられます。十分な医療資源がなく、マラリアなどの感染症で幼い子供も含め命を落としていく人々がそこにいる。
緊急で輸血が必要な患者を大きな病院へ搬送する間に反乱軍に襲撃されるリスクがある世界。シエラレオネで行う医療はいつも命がけです。

日本の医療制度にも様々な問題があるにせよ、こちらは全く次元の異なる問題をはらんだ世界なのです。このような世界で著者はいかにこの国の医療水準を高めるか思考を重ねます。
そして著者は述べます。

現地の貧乏な人に一時的にお金を配ったり、短期間ボランティアの医師が出かけていって必死に医療活動をしたりしても、根本的にはなにも解決しない。ただその人の自己満足だと言われてもしかたがないような結果になってしまう。よって、本当に意味のあるボランティア活動をやりたいのならば、現地の問題が解決するまでずっと援助を続けていくことがなによりも重要なのである。(P210)

本当の意味のある国際協力をするためには、自身が帰った後にも同じレベルの医療が行えるよう現地スタッフを徹底的に教育し、国連などの国際社会に安定した薬や医療物資の供給をするように訴え続ける事が何よりも大切であると信じているのです。

日本で医療をしている私にとって、シエラレオネのように、これほど政治と医療が直結している世界に衝撃を受けました。そしてそのような世界に命がけで対峙する1人の日本人医師の姿に、感銘を受けたのでした。


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