和菓子日記 〜和菓子の〈はじめて〉物語展へ〜(後編)
虎屋文庫の資料展『和菓子の〈はじめて〉物語展』へ行ってきました。虎屋赤坂ギャラリーで、本日11月23日までの開催です。
前回の記録はこちら。
今回は、その続きです。
資料展そのものの記録というよりは、会場の虎屋赤坂店で出会った和菓子について綴ります。
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11月某日
虎屋赤坂店 地下のギャラリーで資料展をたのしんだあとは、3階の『虎屋菓寮』へ。
ここまで来て、食いしん坊の私が菓寮に行かないわけがありません。
そこで私が頂いたのは...
和菓子『色木の実』と、お抹茶です。
ほんとうは、ピンク色を基調とした『秋の彩』などにも心惹かれたのですけれど、今、赤坂店に来たならコレを頂かなければ!と、チョイス。
この「色木の実」は、資料展を記念して、期間限定・赤坂店限定で提供されているものです。なんと、元禄8(1695)年の、虎屋の菓子見本帳から再現されているのです。
現存する最古の見本帳からの再現! 現在の上生菓子の原形といえるものでしょう。
300年以上前の和菓子です!
元禄8年といえば、生類憐れみの令を発令した 徳川綱吉の時代。その頃の身分の高い人たちは、すでにこのように美しくおいしいお菓子を味わい、季節の移ろいを いつくしんでいたのですね。
もとにした現存最古(はじめて)の見本帳『御菓子之畫圖』は、この直前に資料展で観たばかりでしたので、なお感慨深いものがありました。
そして「色木の実」は、前回もご紹介した『和菓子を愛した人たち』の中でも、尾形光琳のエピソードとして登場しています。
光琳が、後援者である銀座の役人にお菓子を贈った記録が、虎屋さんには残っているそうなのですけれど、驚くことに、「色木の実」については 150個も注文していたのだそう。宝永7(1710)年のこと。茶会などで振る舞われたものと推測されるようです。
その「色木の実」を頂きながら、目の前の赤坂御所の色づき始めた木々を眺めながら、茶寮でくつろいだあとは、2階のショップへ。
私は虎屋文庫の機関誌 最新号と、『残月』をお土産にしました。
「残月」については、赤坂店限定のものと、他店舗でも販売される通常品とがあります。赤坂店限定品は、3階の御用場で毎朝つくられており、できたてホヤホヤなのだそう。(御用場は見とれてしまって、写真を撮りそびれ..。)
私は両方を2つずつ購入しました。
工場で製造してから数日かけて店頭に並ぶという通常の残月は、生地と餡とがなじんでいるところが、おいしさのポイントとのこと。赤坂店の 生まれたての残月は、皮と餡の対比が楽しめるということでしょう。
「薄雲をまとった明け方の月の趣」を表しているという残月。ただの半円のお饅頭にあらず。
生姜の風味もやわらかく、通常品も限定品もおいしくて、ファンになりそうです。
ちなみに、私は毎年 虎屋さんの卓上(壁掛けにもなる)カレンダーを愛用しているのですけれど、先月の暦には、「残月」の絵が添えられていました。
このカレンダーは、虎屋さんに残る菓子見本帳から、毎年 表紙を含めて13の絵図をたのしませてくれるものです。
今年のカレンダーは、大正7年の見本帳から。来年のは、ちょうど200年前の文政7年の見本帳から!
と、おしゃべりが止まらなくなりそうです…。
でもこれ以上は控えましょう。
虎屋赤坂店を後にして、外苑までおさんぽをしましたので、その記録を添えて、おしまいにいたします。
訪れてから少し日が経っています。この絵画館前の銀杏並木は、そろそろ黄金色に輝く頃ですね。
私にとって ぜいたくな1日の日記。
最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。
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