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初めての脱皮 ~カエル日記#7~

前回のエピソードはこちら...↑↑

ある昼下がり、窓際に置いているつくしのケージを何気なく見ると、まん丸としたつくしが目に入った。

いつの間にか、こんなに丸々と太ってしまって・・・

コオロギに食いつく姿がかわいくて、ついついエサをあげすぎていたのかな、と反省をしかけたが、よくよくつくしを見ると、一定のリズムで口をパクパクと開ける動作を繰り返している。

───ん??

ペコペコと喉を動かすのはカエルが呼吸している証拠だけれど、パクパクと口を開けたり閉じたりする姿は見たことがない。しばらく見ていたが、その動きが止まる気配はない。

具合が悪いの?
苦しくてパクパクしているの??
いったい、つくしに何が起こっているの???

心配になってきた私は、慌ててネットで検索をした。結果、それは───

「脱皮」だった。

カラダを膨らませて口をパクパクしているその動画は、目の前にいるつくしとまったく同じ動きで、脱皮中の行動だということが判明したのだ。

しかし、カエルが脱皮するということがピンと来ない。脱皮と言うと、セミが幼虫から成虫になるときに皮を脱ぎ捨て、抜け殻を残すというイメージしかなかったから。

ただ、よくよく調べてみると、カエルは定期的に脱皮をし、口をパクパクさせるのは脱いだ皮を食べるためらしい。皮を残すと、自分の存在を天敵に知られてしまうため、とか、皮は大事な栄養源であるため、といった推測もあるが、実際のところ、カエルが皮を食べる本当の理由はまだ明らかになっていないそうだ。

10分ほど経って、膨らませたカラダが元の状態に戻り、パクパクをやめた脱皮後のつくしは、いつもいるお気に入りの場所で何事もなかったかのように佇んでいた。

一皮むけてリニューアルしたはずだけど、いつも身にまとっている迷彩柄が水玉になるわけでも、顔つきが大人っぽくなったわけでもない。ただ──

なんとなく、すっきりとした顔をしていた。

そんな表情に、カエルの脱皮は人間がお風呂に入って垢を落とすようなものなのかな、と勝手に理解した私は、それ以降も何回かつくしの脱皮に居合わせているが、驚くことなく静かに見守っている。だって、

親しき仲にも礼儀あり。

はずかしがり屋のつくしはきっと、お風呂を覗かれたらイヤだろうから。

初めて見たカエルの脱皮。
また一つ、つくしの新たな生態を知った、穏やかな昼下がりだった。

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