ゼンマイ仕掛けを愛でる(オルゴール編)その1
さて、機械モノでゼンマイが好きという話はしましたが、オルゴールが好きな理由は音色がキレイなことはもとより、シリンダー(筒)が櫛歯を弾くさまを見ていると時間を忘れてしまうほど飽きないから。
ちなみに、ゼンマイが収納されている動力部のパーツは、時計のゼンマイ部分と同じ「香箱(こうばこ)」と言うのですが、これは私見ながらお香って昔は重要な道具だったので、重要な物(ゼンマイ)を収納する箱として名付けられたのではないかと思っています。
基本的にメロディを奏でる櫛歯は、その本数が18弁(本)・36弁・72弁、メーカーに依っては30弁や50弁などが主要な本数になり、144弁になると72弁の櫛歯を2セット並べてシリンダー1本で同時に鳴らすことになります。もちろん、櫛歯が多いほど音数が多いので音に厚みが出るのですが、曲やアレンジによっては36弁でもちょうどいいバランスの曲もあると言えるでしょう。
また50弁以上になると殆どの櫛歯は先が細くなり、72弁になるとシリンダーが1周回るごとに横にスライドして3曲分のメロディを奏でる事が出来る高級グレードになってきます。下の72弁オルゴールの写真を見れば櫛歯が多いのと先が細くなっているのが分かるはず・・・・・。
では、櫛歯の数だけで価値が決まるのかと言うとそうでもなく、メロディのアレンジや櫛歯を弾くピンの打ち方でも曲のニュアンスは変わってくる。と言うのも、安価な物は打ち抜いてピンのように突起させた鉄のシートを筒状にしてシリンダーとするのですが、高級な物になるとピンは職人の手による1本1本「打ち込み」になるので、打ち込む角度や長さによって同じ曲でもニュアンスが変わってくるのです。
そうなると、もうこれは個人個人の好みや価値観によって変わってくる。実際、同じ72弁の同じ曲でもメーカーが違えば曲の雰囲気は結構違います。更に同じオルゴールでも、長年使ううちにピンの角が取れてくるので音質もまろやかになってきますから、革ジャンのようにエイジング(経年変化)も楽しめます。オルゴールのアンティークが値下がりし難いのはこのためです。
最近ではオルゴールの音色には、金属を弾くことで発生する高周波音によるヒーリング効果が認識されつつあり、需要が高まって来たので値段も上昇中です。太鼓もそうですが、振動により音を発生する楽器は空気の伝播で五感に直接伝わるので効果が表れやすいのだと思います。
そんな私がオルゴールに興味を持ったのは、学生時代に恩師の家に遊びに行った際に、自慢げに72弁のオルゴールを見せてくれたのがきっかけでした。それから頭の隅にいつか手に入れたいなぁと思いつつ、36弁のオルゴールは北海道の小樽で旅の記念に27年前に購入し、72弁は10年前にネットで手に入れてたのですが、36弁は直接店頭で音の確認が出来たものの72弁は音質も分からず購入したので、ちょっと高音の振動が気になるカンジです。 (苦笑)
それでも晩酌ついでに今でも時々のんびりネジを巻いて、素敵な音色をBGMに美味しいお酒を飲むのでした。