銀河鉄道の11PM（X電車で行こう）　　川柳70句

皿を焼くまもなく森の涯てるころ

サピエンス全史の欠けている燭器

外界に体言止めの糸切歯

フロイトとひとつの海を視ていたが

錦糸町永遠に在れ惑星史

酢こんぶをあなたが救う朝の霧

雷鳥のＳＮＳを書き換える

時と云う野球選手の膝の皿

メーテルの砂丘に砂をこぼすのみ

蠅を追う知育玩具のもとの色

夜が明けるミトコンドリアひろいつつ

方舟にまつわり牛の死んだ村

漫画家と闘牛場に立ちつくし

烏賊あぶる野生の思考団地にて

よんどころなく未来記に胡麻かぞえ

地球での伊藤かずえを代表し

楽天がひろがるままに旧いパン

収容所猪鹿蝶がそろうなか

点滅のバッジをくれる人と遭う

時間消え工場団地ひとつ消え

闘魚して午後のはなまるマーケット

永遠に月曜とどめぬいぐるみ

胡桃割る三軒茶屋の夏祭り

みたこともない細胞の壁そびえ

肋骨の解釈をする少女隊

薬師寺をアプリケーションだと信じ

かまやつのぼやけた場所に天使消え

儀仗兵だとわからない栗を割る

虫の死とひたすら違う洗濯機

昆虫記なにがこよりを持って来る

ＣＤの廻る速度に夏が来た

遠距離の花火会社が撃ち合った

助詞をもて忍耐させる冷やうどん

模写される最終回の麒麟の図

ゆきずりの作戦名を決めるひと

町中に水素文化のわさびの記

写真機を壊したひとの純喫茶

石器なきエド・サリバンの台所

蟹座へと肢湯の券を持ってゆく

黒ずきんちゃんの煮凝り未完なり

都市砂漠たとえの砂に茹で卵

現世を蠅取草が消えるまで

人類と松本零士死に給う

地球人縛りの句集編みながら

ジャイアント・キマラの星座つくりだす

電車から電車あらわるひも理論

ポッキーが何ひとつ無い火葬場

心理学ささきいさおに夜の声

黄門がジャングルジムを出て行った

茶渋拭くこの世滅びてしまうまで

街角の心霊学によるカツオ

定型のなかで貰った鯵フライ

半ドンに蟻を潰すと別の蟻

猪苗代湖に落ちていた懺悔録

ガチャピンを北海道が裏切った

人間が嫌いなままで十六茶

西瓜割り輪ゴムの時代過ぎており

実演の悪代官に豆腐無し

宛先が不明の国のコンドーム

島々の水煙のなか武道館

芋を焼く男根すでに喪われ

皇帝に前肢五本持ってゆく

うすぐもり自虐の詩を書き直す

ぬるくなる珈琲妻のテレポート

条約の訳者が妻を描写せず

あざらしを着ている妻のときたまご

青服の妻の卵子をみつめつつ

いのししに震わす妻ののどちんこ

妻のいる黄信号まだ黄の世界

レバニラと妻の名前を記憶する

#川柳 #現代川柳 #大橋巨泉