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先生、私の子どもが見当たりません

昨日わたしの寿命が音を立てて縮んでしまった。

理由は一つ、

わたしにとって大切な大切な息子が

忽然といなくなったからである。



子どもの頃、

ふと気がつくと

一緒にいたはずの親がいなくなっていて

周りを見渡しても誰もいない、

親の名前を呼びたくても声が出ない

一気に込み上げる恐怖を味わった経験を


親になったいま、

まさかその逆の立場が

自分の身に降りかかってくるなんて!!!!



家から少しばかり離れた場所で始めた習い事、

少々の小雨は厭わず

子どもを自転車に乗せて連れていった。


息子はやる気いっぱいで

教室に着くなりすぐにプログラムに集中。

授業が終わる90分後にお迎えに行ったけれど

まだ片付け中で帰れる様子はなし。


わたしはトイレでも済ませて時間を潰そうと

その場を離れたのがいけなかった。


2分足らずで教室を覗いた時にはもう

息子の姿はなく

初めてご挨拶した担当の先生は

「もう帰りましたよ」

と一言、次の授業の準備に移っていた。


子どもの通級、送迎する親、そのほかビルを利用する人で

夕方の街角の人混みが増す中、

ただただ息子の姿を探せど



いない。


いない、どこにもいない。


エレベーターにもビルの門にも

薄暗くて何となく物騒な駐輪場にも

階段の踊り場にも


息子の姿はどこにもない!!!!!



5分、10分、15分と


時間はあっという間に過ぎていく。


通りすがる人々は移りゆき、


守衛さんはデジャブのように何度も同じ挨拶をかけてくる。


いない、

どこにも息子がいない。


藁にも縋る思いがふつふつ湧き上がる。


「先生、どこにもいないんです!!!!

 建物を出たかを知りたいので

守衛さんのビデオ見させてもらえませんか!!??」



突然の親の申し出ほど鬱陶しいものはないと知りながらも

「お迎えの子は留め置くようにすればよかったですね、

申し訳ありませんでした!」と

すぐに一緒に探してくれた教室の先生。


ところが

警備員室に訪ねたものの

館内放送はおろか、

ビルを出たか確認のためにビデオを見せてほしいという

願いは「管理責任上無理」という警備の意味あんのかと

思わず椅子を蹴りたくなるような回答。


時計を見るともう20分も過ぎている。

これはとんでもないことになってきた。


先生は建物周辺を探してくれるというので


わたしは来た道を戻りますと告げて

自転車に飛び乗った。


いない、

いない、


どこにもいない。


半袖、紺色のズボン、黄色のリュック、、、、


頭の中で子どもの姿を繰り返し映し出しながら

必死で探す。


マスクからほとんどはみ出したわたしの顔は


鬼の形相だっただろう。道ゆく人がママチャリの気配を察して

道を開けてくれる。


どうしよう

どうしよう


繰り返す声は心を通り越して耳に強く響き出す。


家まであと3分、

しょうがない、警察だ。


自宅で待つ義母に一報入れようとしたその瞬間、



いた、息子だ!!!!!!!




このあと、安堵の涙で全身が溶けるのを感じた。

息子も私を見て張り詰めていた緊張が一気に解けたように


「お母さん、ごめんなさい・・・」


と泣き続けた。



一年生、なんでもできるようになってかっこいいぞ。

でも

いなくなるのだけは勘弁して。


秋風の中、何度も

「ごめんね」「いいよ、でも・・」を

繰り返す背中とお腹は

ほかほかと温かかった。

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