見出し画像

認められない理由 未払費用として損金経理された賞与

こんにちは

セカンドオピニオン税理士の
宮崎貴美子です。

決算賞与を未払い費用として損金経理する目的は
従業員さんのモチベーションを上げるためだったり
節税だったり、
色々だと思いますが、

法人税の調査では必ず確認する事項です。
調査官から「認められません」と言われたら
節税のはずが、本税だけではなく、加算税、延滞税を追徴されることになります。

調査官は何を確認しているのか
今日は未払費用として損金経理できる賞与の要件について説明します。

根拠条文である
法人税法施行令第72条の3(使用人賞与の損金算入時期)の第2号において次のように規定されています。

次に掲げる要件の全てを満たす賞与 使用人にその支給額の通知をした日の属する事業年度
イ その支給額を各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていること。
ロ イの通知をした金額を当該通知をした全ての使用人に対し当該通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から一月以内に支払っていること。
ハ その支給額につきイの通知をした日の属する事業年度において損金経理をしていること。

これ以外の使用人賞与の損金算入時期については、同法第3号において、「前2号に掲げる賞与以外の賞与 当該賞与が支払われた日の属する事業年度」と規定されています。

つまり、使用人賞与の損金算入時期は、原則、「賞与が支払われた日の属する事業年度」であり、
「通知をした日の属する事業年度に未払費用として損金経理できる賞与」は上記イ、ロ、ハの要件の全てを満たす必要があり、1つでも欠いていた場合は、認められません。

その理由については、大阪地裁判決平成21年1月30日で次のように解釈されています。

この規定は、使用人賞与については、原則として,実際に支給をした日の属する事業年度の損金の額に算入することとしつつ、その例外として、内国法人が資金繰りが悪化している等の事情で賞与が未払状態になっている場合には、たとい未払であっても損金の額に算入することとし、また、一般に、賞与はその支給額を通知するのとほぼ同時に支給されるのが慣行となっているものの、事業年度末において各人別に支給額が通知され、たまたま支給が遅れているような場合にまで一切損金算入を認めないのは適当でないことから、一定範囲で通知をした日の属する事業年度においても損金の額に算入することを認めた上で、取扱いの統一性を確保し恣意性を排除する観点から、各人別に、かつ、同時期に支給を受けるすべての使用人に対して支給額を通知していること、1月以内の支給及び損金経理を要件として規定したものと解される。

さらに補足すると、
この解釈の根底には、債務の確定基準があり、法人税基本通達の定めは次のとおりです。

法人税法第22条第3項第2号は、当該事業年度終了の日までに債務の確定している販売費等を損金の額に算入すると定、販売費等の損金算入時期について、販売費等の債務の確定した時期の属する事業年度の損金の額に算入するとの基準を規定している。これは、債務として確定していない費用については、その発生の見込み及び金額が明確ではないことから、所得の金額の計算の明確及び課税の公平を確保するために,債務の確定を必要としたものと解される(平成 21 年 10 月 16 日大阪高裁判決(原審は、大阪地裁平成 21 年1月 30日))。

法人税基本通達2-2-12
法人税法第第22条第3項第2号《損金の額に算入される販売費等》の償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務が確定しているものとは、別に定めるものを除き、次に掲げる要件の全てに該当するものとする。
(1) 当該事業年度終了の日までに当該費用に係る債務が成立していること。
(2) 当該事業年度終了の日までに当該債務に基づいて具体的な給付をすべき原因となる事実が発生していること。
(3) 当該事業年度終了の日までにその金額を合理的に算定することができるものであること

つまり、法人税調査では、

法人が支給額の決定をしただけでは、実際に使用人賞与を支給するか否か又は支給金額の確実性が客観的に明確であるといえないので、その支給額を、各人別に、かつ、同時期に支給を受ける全ての使用人に対して通知をしていることを調査し

所得の金額の計算の明確及び課税の公平を確保するためには、近い将来に支出することが相当程度の確実性をもって見込まれていることを確認するために、通知をした日の属する事業年度終了の日の翌日から一月以内に支払っているか調査します。

調査で、要件が全て満たされていない場合には、
未払費用として損金経理が認められないことになります。

なお、
支給日までに退職した方に賞与を支給していなかった場合は、損金の額に計上した金額と支払った額が異なることから、未払費用として損金経理した賞与の額、全額が認められないことになります。
未払費用として計上する場合には、規定の書き方や、パートタイマーまたは臨時雇い等の身分で雇用している方の対応について注意が必要です(法人税基本通達9-2-43、9-2-44)。

また、調査において、どのようにして、支給額を各人別に通知したかを確認されますので
通知書を作成し、使用人に交付し、その写しに確認印を受ける等、支給額の通知をしたことを証明できるものを備えておくことも必要です。

従業員に決算賞与を支給する場合、決算期末までに支払うことができれば、
従業員のモチベーションアップに繋がるでしょうし、
節税にもなります。

調査において、要件が満たされていないことが判明した場合には
賞与を支払った分、キャッシュが減っただけではなく
追徴税額として、本税、加算税、延滞税が発生することで、キャッシュはさらに減り
節税どころか大きなペナルティを受けることになります。

「認められる場合」を知ることは大切なことです。
法律は知っている人の味方です。

現在、「しなやかな心とお金の関係性を味方につけながら チャレンジするためのベースをつくる講座」の説明会を実施しております。
ご興味のある方は、https://customform.jp/form/input/161544

または 下記のQRコードからお申し込みください。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?