Stella Jang というミュージシャンについて

K-POP にハマってから韓国の音楽シーンのレベル高さにすっかり魅せられてもうすぐ2年が経とうとしている今、素晴らしいシンガーソングライターに出会った。

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(画像 : http://grandline.kr/home/?p=454)

Stella Jang(ステラ・チャン)
本名:장성은(Jang Seong-eun  チャン・ソンウン)
1991年11月18日 韓国生まれ

2013年9月19日、Grandlineエンタテイメントよりデジタルシングル "Dumped Yesterday" でデビュー。

2004年、小学校を卒業した彼女は彼女の母親の友人から「フランスの教育制度の方が優れている」という提案をされたことをきっかけにフランスへ留学することになる。最初にナンシーに住んだが、その後パリの中学校 Lycée Henri-IV に通った。卒業後、エリート養成大学の AgroParisTech に通った後、国際的に有名な化粧品会社のロクシタンに就職するが、ミュージシャンになる夢を実現するため退職したという。

母国語の他にフランス語と英語、そしてスペイン語、中国語、ドイツ語の基礎知識もあるという正にエリート。

フランスでの学生生活の中でまわりの人々が韓国人の名前をうまく発音できなかったことから、本名にある「성」の漢字(ハンジャ)である「星」にちなんで「Stella」と呼ばれるようになったとのこと。

韓国の海外向けチャンネル arirang TV の番組に出演した際に、生い立ちなどを語る彼女の映像が見られます。

ここまでの文章はこちらを参考にまとめました。


それでは、わたしが彼女に出会ったきっかけになったアルバム ”STELLA I” について綴りたいと思います。


M1  Go Your Way
ループマシーンを駆使し自身の声を重ね作られたアカペラの小曲。
この曲を聴いた時に瞬時に思い出したのが、フランスのアーティスト Camille(カミーユ)の2005年に発売されたセカンドアルバム”Le Fil”。このアルバムは前年の2004年にリリースされた Björk の “Medúlla” の影響下にあるような作品で、伴奏を楽器の音ではなく声の多重録音で表現する曲で構成されたある意味実験的なアルバムだった。こういうアプローチに同じ匂いを感じる。

M2  Bourgeois Emotion
この曲にはとてもネオアコを感じる。アイロニカルな空気感と爽やかなコード感が醸し出すイギリス〜ヨーロッパ的な音楽の匂い。Devine & Statton のアルバムなんかを思い出した。

M3  Forever
ギターのリズムに導かれながら次第に陽の光が射すかのような展開の中に感じる木漏れ日のエバーグリーン感。
Rumer の曲から感じ取れる多幸感や、知るひとぞ知るバンド The Postmarks の Tim Yehezkely嬢のメランコリーな歌声と同じ匂いを感じる。それぞれパキスタン、イスラエル出身という両者に共通するコスモポリタン的な音楽地図の一角にステラもいるのかもしれない。

M4  우르릉 쾅쾅쾅 (My Ceiling Disappeared)
「わたしの天井が消えた」という不思議なタイトル。「ウルルン クウォン クウォン クウォン」という韓国語の音の響きが楽しい。
このコード感は真っ先に Kings Of Convenience を連想する。メランコリックなマイナーコードの響き。アコギのアンサンブル。

M5  빌런 (Villain)
「わたしたちはみんな良い面(ツラ)をしたヒーローであるふりをする。あなたが一番憎んでいる誰かは、愛される誰かの子。何が良くて何が悪い? むやみにわたしを好きにならないで」と歌われる歌詞が興味深い。
こういうタンゴやシャンソン的な響きの曲を作れる背景にはフランスでの音楽体験が正に影響していると思う。

M6  Reality Blue
旅に出ればそれなりに気分転換になって気持ちも晴れるだろうと信じて遠い場所に行ってみたが、戻ってきてみたら何も変わらない空っぽの自分がいることに気づき自らを嘲笑う歌。
とてもシンガーソングライターらしい曲。リラックスした演奏が気持ちいい。

M7  You Don’t Shine Anymore
コーラス多重録音とアコギによる弾き語り。1分44秒のインタールード。

M8  Choose You
歌い出しから鳥肌が立つ美しいバラード。ピアノトリオの伴奏に絡むストリングスがとても贅沢なサウンド。

M9  Good Job
この曲の粘っこいリズム隊のタイム感には D’Angello 的サウンドを連想する。サスティーンを抑えたウーリッツァーの響きが醸し出すレトロ感にタメを効かせながら絡むベースとドラムのアンサンブルに黒人音楽的なグルーヴ感を感じる。少しハスキーに絞り出すステラの歌も素晴らしい。このアルバムの中でいちばん好きな曲かも。

M10  품 (In Other Words)
アコギの弾き語り。子守唄のような雰囲気と懐かしさのような暖かさを感じる。ささやくような歌に聴き入ってしまう。

M11  Forgive, Forget
どこか教会音楽のような響きを持った空間を意識した繊細なアレンジに目を閉じて聴き入る。

M12  밤을 모은다 (Storing Nights)
アルバムの後半を占めるバラード曲群を締めくくる美しいピアノ伴奏によるバラード。ツボを押さえた泣きのコードを配置する作曲能力。
素晴らしい以外の言葉が見つからない。


人生においてもっとも多感な時期である思春期をフランスで過ごした彼女が作るユニークな音楽。
これは韓国の音楽を聴くようになってとても感じていることなんですが、韓国語の音は音楽にとても合うと思っていて…例えばポップな曲に乗っかった時に思わず一緒に口に出して発音しながら歌いたくなる楽しさや、バラードのような高揚感のある曲ではよりその言葉の響きが映える美しさもあります。そしてそれはフランス語の音にも似た感覚を感じていて、シャンソンが放つ独特の世界観はその言語ゆえにあるとも思います。

わたしはもともとフランスの音楽も大好きだったので、韓国の音楽シーンに夢中になっているこのタイミングで彼女のようなバックグラウンドを持ったアーティストに出会えたことが嬉しすぎて、この素晴らしいアーティストを少しでも多くの人に知ってほしいと思い久しぶりに文章を綴ってみました。

彼女の音楽がより多くの人たちに愛されることを願います。

Stella Jang
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2020.4.18

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