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母の話-ハゲタカのぬいぐるみ-

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母との思い出の話です。 癌で闘病していた母が自宅で倒れ、旅立つまでの五ヶ月間のお話です。僕の母が生きてきた証として書き残しています。
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2024年7月の記事一覧

母の話 -ハゲタカのぬいぐるみ-その⑩(終)

母の話 -ハゲタカのぬいぐるみ-その⑩(終)

【前回-その⑨-】

 母の部屋の遺品整理と、その部屋で、かつて元気だった母と話していたことを思い返しています。

[35]未服用の薬
 ひとつ、気がかりなことがありました。母の部屋を遺品整理しているとき、癌の薬の一部が、明らかに服用されていない状態で大量に出てきました。なんでこの薬だけ大量に、と思っていると、隣にいた甥っ子が「おばあちゃん、これきらいって言っててん!この細長いクスリ!」と教えてく

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母の話 -ハゲタカのぬいぐるみ-その⑨

母の話 -ハゲタカのぬいぐるみ-その⑨

[前回 -その⑧-]

 母の葬儀が終わり、忌引休暇の間に母の部屋の整理をしていた話です。部屋を片付ければ片付けるほど、母が居なくなる感覚になりました。

[32]明朝のコンビニ
 葬儀から数日が経ち、兄と一緒に母の部屋を整理しました。母が倒れた日、2023年11月5日のまま、部屋の時は止まっていました。母の部屋は整理されていましたが、それはあくまで「普段通り」整理されていて、所謂「終活を意識した

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母の話 -ハゲタカのぬいぐるみ-その⑧

母の話 -ハゲタカのぬいぐるみ-その⑧

【前回-その⑦-】

 最期を看取ることはできず、仕事を急いで切り上げた僕は、病院に併設された霊安室で穏やかに眠る母と対面したのでした。
 その後すぐに母は実家の自室に運ばれましたが、入院中何度も「帰りたいわぁ」と話していた願いは、生きている間には叶いませんでした。話は母が亡くなった日、病院から母を運んで実家に帰ってからバタバタした時間帯からになります。

[28]眠る母
 実家に帰ってから兄は、

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母の話 -ハゲタカのぬいぐるみ-その⑦

【前回-その⑥-】

[25]病院には入らなくていい
 母が亡くなりました。最後の面会から二日後、2024年4月5日のことでした。
 朝10時過ぎに兄から連絡がありました。「もはや血中の酸素濃度が測れなくなってるらしい。呼吸器が追いつかない。」僕は仕事を切り上げるために、会社の人たちに引き継ぎをお願いしていました。もう何回も急に休んだりしているのに、皆、優しく対応してくれました。
 ようやく会社を

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