羽化昇仙願望
私も、一度身も心も魂も全て溶かして、優しくまろい温度の繭の中で羽化すれば、美しい羽を持てるかしら?
あらどうして?どうして私の繭は、こんなにみすぼらしいのかしら?
他の皆は絹糸で編んだおくるみに、包まれたようなのに……。
私の繭は、いくら不器用な蜘蛛でも編まないような、隙間だらけの網目模様。霧向こうの岸辺より、中身が透けて、穢らわしいわ。
まるで、自分自身を、私の心を見透かされたようだわ。
それに、この羽の色は一体何なのかしら。
皆は、朝日の光を掠め取った素晴らしい白に、虹の釉膜を纏っているのに。
どうして、私の羽はこんなにも……。
違うの、こんなに禍々しいほど、嫉妬の緑色の炎を燃やした黒ではないの。
私の心根はこんな色ぢゃない。違うの、違うのよ。
そうして、彼女はなりたかったものに、どうしてもなりきれない自分に絶望して、嘆きの絶叫とともに自分の時を止め、雪崩のように他者を巻き込んだのだった。
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