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2021年3月の記事一覧

象牙滓

象牙滓

万魔街に、夕刻の赤い冥火が垂れ込んできて、いつもの様に、歯の量り売りがやって来た。
目が荒い上に、ところどころ破れ、襤褸同然の編み笠を被った年老いた盲の男の顔は、生きるのに絶望した鰐か、先の尖った顔の昆虫を思わせた。
天秤棒の左右に下げられた底の浅い笊には、様々な形の歯がぎっしりと積められている。
盲の男は、骨の上に申し訳程度に肉付けされ、皮がそれを何とかつなぎ止めている細い足で歩くので、よろめく

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