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スプラッターホラー・ショート『口がきけない』

残酷&ギャグのショートショートですが、残酷シーンがあって、なんとなく私の人格が疑われるような物語なので、未公開にしてきました。今回、なんだかわかりませんが、きまぐれで初公開します。残酷シーンが苦手な方は読まないでくださいね。

星谷光洋MUSIC『あたいの詩』も、とても重ーい歌が苦手な人は視聴しないでくださいね。個人的には大好きな歌です。   

口がきけない
           

(やばいな、この店は……)

男はなにやら嫌な予感がした。なじみの理容店が急に休みになったため、はじめての店にはいったのが男の運のツキだった。

「いら~しゃぁ~まへ~」

妙にまのびした、五十代くらいの女の声に、すぐにまわれ右をして帰ろうとした男だが、女から背後から抱きつかれ、そのままいやいやながら椅子にすわった。男は優柔不断で気も弱い。勧誘されると断れない性格だ。

「ずいませんね~、昨日ぉ、ちょっと飲みすぎたものでぇ~ね」

女はどんなセットにするかも尋ねずに、勝手に男の髪をカットしはじめた。鋭いハサミはチクチクと男の肌までも切る。そのたびに「ヒィー」と悲鳴をあげる男を気にすることもなく、やがて虎刈りをして満足気な女。

「ずびばせんね~」と言われるたびに、

「いえいえ大丈夫です」を連発する男。今度は女がカミソリを持ち、顔を剃ろうとすると、男はさすがに不安になった。

「あのー、すみませんが、顔は剃らなくてけっこうですから……」

「あはぁ~、あんたもあたしのことを馬鹿にしてんだぁ~、あたしの亭主みたいにさぁ~」

泣きだしそうな女に、男は押し黙った。

「シュッパ!」

男の眉毛を切り落とす。

「だ、だ、大丈夫です」

「ザクッ!」

今度は男の耳たぶを切り落とす。

「助けて~!」

みるまに男の顔は血だらけだ。そのとき、女は自分の足にじゃれつく猫に目をとられた。

「スッ!」

「あれぇ、お客さん。急に静かになったねぇ」 

女が振り向くと、男の首から大量の血が、噴水のようにわき出していた。
         

(fin)

星谷光洋MUSIC『あたいの詩』


気にとめていただいてありがとうございます。 今後ともいろいろとサポートをお願いします。