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第25話 建設現場

「TK工房さんっていうのはどっちかな?」

話しかけてきたのは30代半ばの小太りの男。

背丈は168cmくらいだろうか。

TK工房「はい、私です!」

浅田「あ、私、浅田と言います。今日はよろしくお願いします。早速出掛けるけど、大丈夫?」

TK工房「はい!よろしくお願いします!」

それじゃまた、と古瀬に目配せをし、事務所を出た

浅田「今日はいくつか現場回るんやけど、今動いてるのあんまりロクな現場じゃないんよなぁ。あ、ヘルメットと安全靴持ってきてる?」

TK工房「はい、持ってきました」

浅田「了解。ほな行こか。」

白のカローラフィールダーに乗り込む

浅田「今日は、大阪の案件と奈良の案件を見に行くねんよ。まずは難波のオーキャットのとこやねんけど、知ってる?」

TK「はい、僕あの辺り地元なんでよく知ってます!」

浅田「あ、自分、あの辺地元なん?ガラ悪いなぁ(笑)」

TK「いやいや、僕は至って真面目です(笑)」

浅田「てか、あの辺地元って、あんなとこに住むとこあんの?」

TK「ありますよ!怒られますよ!(笑)まぁ、僕は厳密には西成ですけど」

浅田「西成かよ!全然ちゃうやん!何で難波って見栄張ったん?(笑)」

TK「いや、言うてチャリで10分くらいですよ!」

浅田「知らんけど!(笑)」

浅田は非常に社交的で距離が近く、くだらない話ですんなりと仲良くなれた

浅田「で、オーキャットのとこって、ホテルモントレを今建ててるんやけど、そこが現場やねん。うちのポーションは、ほぼ完成してるんやけどな。」

TK「そうなんですねー。」

阪神高速を東に進みながら、流れる景色を眺めていると

浅田「あ、あの右に見えてるパナ○ニックの工場、もうあれは完成して動いてるけど、あれもうちの現場やってん」

TK「え、そうなんですか?」

浅田「まぁ、大物取られへんかったから、しょうもない部材入れだけやったんやけどな。しかし、あの現場も無茶苦茶やったで」

TK「無茶苦茶ってのは、どういう感じなんですか?体育会で理不尽、みたいな感じですか?」

浅田「ちゃうちゃう。それは当たり前なんやけど、現場管理がテキトー過ぎて、現場で人死んだりしてるねん」

TK「えーーー!!!?人死ぬて、マジすか!?そんなんニュースになるじゃないですか!」

浅田「ならへんならへん。そんなもん。余裕で内密に処理されるよ。もちろん社内では、再発防止とかそういう形式的なのはちゃんとするけど。」

TK「え?人死んでて、ニュースにならないとかあるんですか?業務上過失致死とかなるでしょ?」

浅田「そんな現場山程あるから」

TK「マジすか!?」

本当かどうか俄かに信じ難い話だった。このご時世に人が仕事中に死んで、いくら大企業と言えど、それを隠蔽することが出来るとは思えない。

(口も上手いし、新人相手に有る事無い事持ってるんやろな)

視界から見えなくなるまで、パ○ソニックの工場をぼーっと眺めていた

その十数分後、車は減速し、湊川出口で高速を降りた。

浅田「知ってると思うけど現場ここやねん。ちょっと車停めるわ」

現場は高速を降りてすぐ目の前だった。
道路を挟んで向かいにあるコインパーキングに車を停め、安全靴に履き替えた。

浅田「ヘルメットと、一応名刺だけ持って来といて。他は車の中に置いといたらええし」

どこにでもある建設の工事現場だが、中に入るのは初めてだ。少しドキドキしながら、入り口の警備員に会釈をし、中に入ると、大きなトラックが2台停まっていた。

トラックの横をぬけ、建物の中に入る。

浅田「まだエレベーターないから、5Fまで階段で上がらなあかんねん。ちょっとダルいけど我慢してや」

建物内の非常階段をひたすら登る。まだ工事中のため、階段の照明も現場用のものが点々と設置してあった。

浅田「そういや、手摺に問題あったとか言うてたな。後で確認しよ」

5Fに着き、鉄の扉を開けてフロアに出ると、そこはどうやら駐車場スペースだった。

がらんと広い空間に、ポツンポツンと作業員が座り込んでいて、それぞれ何かをしている。

浅田「うぃーす!」

作業員「あ、ちゃーす」

ドカタのにいちゃんが立ち上がりこちらに歩いてきた

続く

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