第24話 対ゼネコン営業研修
阪神電車に揺られながら、三ノ宮に向かう月曜の朝
先週で大衆消費財を扱う販売子会社の研修は終了し、今週からはゼネコン相手の販売施工代理店での研修が始まる
「来週から、フォースインダストリーの研修やろ?うちより遥かにやばい環境やから度肝抜かれると思うわ(笑)まぁ、勉強しておいで」
という陽川の言葉を思い出していた
フォースインダストリーは、先週まで通ったデイリーフォースダイヤモンドと同じ、バニービルに入居している。
狭いエレベーターに乗り込み、3階まで上がった。デイリーフォースのある2階と同じ間取りではあるが喫煙所はなく、その代わりに自動販売機コーナーが設置されていた。
どうやらグループ会社ということで、2階の喫煙所を共有しているようだ。
会社名のプレートが貼り付けてある鉄の扉を開いた
TK工房「おはようございます!」
受付に出てきたのは50代の女性に用件を伝えると、机と椅子が並んだ待合スペースに案内された。
女性「ここでお待ちくださいね。」
今回は同期の古瀬より早く着いたようだ。
椅子に腰掛け、事前説明時に貰った商材案内のプリントに目を通す。
フォースインダストリーは非常に特殊な会社で、出資比率100%のメーカー子会社であるにも関わらず、扱う商材の殆どが他社製品。
そして施工代理店ということで、単純に商品を納めるというだけではなく、施工までを請け負っている。
工場から、オフィスビル、野球場やサッカー場、様々場所での施工例に目を通していると、古瀬が到着した。
TK工房「おはよう」
古瀬「はい、おはよう」
TK工房「校長先生かよ(笑)」
古瀬「え、何が?(笑)」
TK工房「先週懇親会の後、すぐ帰ったん?」
古瀬「うん。え、なんかあった?」
TK工房「いや、なんか帰り際に陽川さんに声かけて貰って、二人で軽く飲んだわ」
古瀬「へー、そうなんだ」
他愛もない話をしていると社長の戸山が現れた。
明らかな黒染め七三分けに、肩パットが強めのダブルのスーツ
その鋭い眼光からは、長年ゼネコン相手に渡り合ってきただけある胆力が感じられた。
戸山「おはようございます。戸山と申します。
この後ちょっとすぐに出て行かないとあきませんので、申し訳ないですが、簡単に挨拶だけ。
」
TK工房「いえいえ、こちらこそお忙しい中ありがとうございます」
戸山「先週はデイリーフォースさんとこで、営業回ったんですよね?今週はうちで回ってもらいますけど、また全然違うと思うのでしっかり見ていってください」
TK工房「はい、よろしくお願いします」
戸山「ではまた会えるのは週末ですかね」
戸山はそういうと席を立ち、足早に事務所を出て行った。
先程案内してくれた女性が現れ、各営業担当がそれぞれ迎えに来るということを伝えてくれた。
TK工房「社長凄かったな」
古瀬「なんかゼネコン相手にやってきましたって感じだったな」
TK工房「あんな肩パットのスーツ、今時ある?」
古瀬「そこ?(笑)」
くだらない話をしていると若い小太りの男性が近づいて来た
「TK工房さんっていうのはどっちかな?」
続く
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