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自殺対策が若者を中心に実施されることは問題なのか。

問題は若者?それとも…

厚生労働省の自殺対策白書に「若い世代の自殺は深刻な状況である」と明記されているように、日本の39歳以下の自殺が問題視されている。

同白書に「深刻」と言及されている自殺は若年層に対してだけだ。

確かに、人口動態統計によると、日本における10歳から39歳までの死因は自殺が最も多い。
それに続くのは、不慮の事故か、悪性新生物である。

そして、WHOによれば、G7の中で若年層における死因の1位を自殺が占めているのは日本のみ。
他国の自殺は2位もしくは、3位であり、事故死が1位を占める。

イタリアにおいては病死(悪性新生物)が自殺を上回っているものの、その他5カ国においては事故死が自殺を上回っている。

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一方で、女性の自殺率の高さも目をひく。

国際的な自殺死亡率において日本人男性は15位だが、女性は4位を占める。

日本の自殺対策白書や自殺統計では「女性の自殺比率は男性よりも低い」と言及されている。
ただ、その傾向はWHOがデータを取得している諸外国にも共通している。
日本特有の特徴ではない。

それでも尚、世界と比べたときに問題だという観点で、女性ではなく若者にフォーカスをする理由は、女性の自殺の傾向にあるのではないか。

男女の自殺データで異なるのは、年齢層だ。
男性は60代以降の自殺率が下がるが、女性は維持もしくは上昇する。

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 警察庁「自殺統計」より

日本の女性の自殺率の高さは、高齢者自殺の問題でもあるといえる。

それでも今、日本では「若者」に対しての自殺対策に力が入っている。

高齢者への自殺対策

もちろん、高齢者自殺への対策も取られている。

自殺総合対策大綱の10項目のうちの1つ「自殺対策に係る人材の確保、養成及び資質の向上を図る取組」では、介護支援専門員育成のための予算がきちんと割り振られている。

差は、問題意識のおき方にある。

社会的に容認された自殺

自殺が社会における選択肢の一つであると黙認されたのは、初めてのことではない。

その一つは、生命保険会社における自殺免責期間の短縮だ。
自殺による死亡に対して、死亡保険金が支払われないことを自殺免責という。

その免責期間が、1972年を境に大蔵省からの提案で、あえて短縮された。
(日本保険医学会誌 1987年)

自殺の選択肢があったことは、決して必ずしも後ろ向きな決断だけではなかった。

自殺はネガティブなのか

高齢者の3人に1人は希死感をもっているという。

国立精神・神経センター精神保健研究所によれば、高齢自殺者の多くが、生前に家族へ「長く生きすぎた」と話す。

長く生き「すぎた」という感情は、ネガティブなのだろうか。
それを家族に伝えられる社会は、不幸せなのか。

もちろん、高齢者自殺の7割は健康問題を理由にしており、これは自殺総合対策大綱によるところの「自殺は防ぐことができる」にあてはまる。

ただ、日本人の7.6%しか老衰で亡くなる事が出来ない中で、自殺を必ずしも「追い込まれた末の死」(自殺総合対策大綱)として良いのだろうか。

高齢者自殺対策を厚くしすぎないということ

日本の自殺対策が若者を中心として実施されている。

長く生き続けることしか望みのない社会であれば、それは、問題なのかもしれない。

自殺免責などについて書いています。 生きることも大切にしたいから、死に向き合ってみたい。