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労働判例を読む#581

今日の労働判例
【食肉加工業A社ほか事件】(東京地判R4.4.8労判1305.68)

 この事案は、女性従業員Xが、正社員Y1に対価型セクハラを受けたとして、Y1と会社Y2に損害賠償を求めた事案です。
 裁判所は、Xの請求を否定しました。

1.事実認定
 裁判所は、XとY1の不倫関係は対価型セクハラではない、と認定しました。先行する訴訟で、Y1の妻がXに損害賠償を請求し、それが認められていることも1つの事情としていますが、元同僚たちの否定的な証言などを重視し、他方、Xの証言については、約2年間もセクハラを受けていたのに、苦情や相談などがなかった点などを根拠にその信用性を否定しています。むしろ、Xの一部の言動こそ、脅迫罪に該当しうる、と認定しているほどです。
 証拠の信用性の評価に関し、その内容まで踏み込んで検討している場面が多くあり、証拠評価の在り方について参考になります。

2.実務上のポイント
 判決を見る限り、Xの主張はかなり「無理筋」なように見えますが、Xのことを、ハラスメントの被害者ではなく浮気の当事者、と評価した別件訴訟の判決があるのに、それでもハラスメント被害を主張して訴訟を提起したのはなぜでしょうか。
 極端な事案かもしれませんが、労務管理上、従業員間の男女関係が引き起こすトラブルについて、学ぶべき点が多くあるように思われます。

※ この連載が、書籍になりました!しかも、『労働判例』の出版元から!


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