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日記22(高熱の時に見る夢編)


浜辺にクジラが打ち上げられた。
この世界は何か起きたトピックスを消化しないといけないような気が強烈にしたので見に行く事にした。





【歩くより自転車を漕いだ方が目的地に早く着くよ】とは養成所で同期だった樋口くんが初めて作ったクソつまらんフリップネタだが、海岸まで徒歩5分のはずなのにどういう訳だか自転車を漕いでも一向につく気配がない。





当時の樋口くんが放った忘れられない言葉である『僕はラーメンズに憧れているんだぁ』に対して色々と思いを巡らせている内に気付いたら浜辺に到着していた。





到着はしたが辺りを見渡してもクジラはいない。
いないけれども人だかりができていたので一先ずそこへ向かい『すいません!すいません!通してください!』と何かで観たドラマのワンシーンの様に人を掻き分け進むと人だかりの中心には確かにクジラがいた。





クジラというからには交番8個分くらいの大きさだと思っていたのだけれど、いざ対面したそれは辛子明太子くらいの大きさだったので僕はとてもがっかりした。





『おい!ぼん、こっち来い!』




何やねん辛子明太子クジラの癖に。
マジでめっちゃムカついたけどグッと堪え「はいはーい!」と桂三枝(現・6代目桂文枝)が新婚を招き入れるテンションで返事をした。





『元気だな、ぼん。いいかい?イリュージョンっていうのはだね、人間の精神と肉体の狭間に…あるんですよ。まぁ、分からなきゃ、それでいいから』





ほぼ意味不明だったけど洋子のはなしは信じるなって事は理解ったのでヨシとした。

それにしても小さなクジラだなとSNS用に動画撮影をしているとDUNLOPのキャップに靴下一丁という全裸よりも裸が際立つ格好をした男がご飯茶碗片手に現れクジラを箸で掴み永谷園のお茶漬けのCMみたいに白飯と一緒にかき込んでしまった。





なんて事をするんだ!
確かにサイズ感はHG1/144でおかず然としているけれどまさか世にも珍しい喋る辛子明太子クジラで白飯かき込むなんて…





皆が叫び声をあげながら散り散りに逃げ出す中、僕は冷静にその男を観察していた。
まずキャップに靴下しか身に付けていないと思っていたがそれは勘違いだった、ゴローズ(goro's)のフェザーネックレスを付けている。
そしてご飯茶碗だと思っていたのは香炉だ、彼は仏教徒なのだろう。





そこまで気付いた時には既に遅かった。
奴はニヤリと笑うや否や2m程後方に飛び上がると丁度そこにあった深い深い穴に落ちていった。





覗き込むも底が見えないその穴はきっとマントルまで繋がっているんだろう。





昔祖父が言っていた。




『夢を見るだろう?夢ってのは怖いんだ。夢の中で夢だと気付いた事はあるかい?その時にアクセサリーを身に付けていたり宗教に結び付くアイテムを付けていた者が現れたら、そいつを絶対に見失ってはいけないよ?例えば簪を付けたお姫様とか、虚無僧みたいな格好をした者とかね。何でかって?その者を見失うと二度と目覚める事はないのだから、気を付けなくてはならないよ。いいかい?』



そして僕は今も夢の世界から出てこれないでいる。

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