第195怪～悪の英雄

電柱の影には必ず赤マントがいて、真夜中の屋根裏には覗き常習犯の性犯罪者、新月の丑三つ時に盗んだ影を売り捌く影売り、公衆便所の厠奥底には汚物の悪魔が排泄を凝視しているのであり、僕の敬愛する作家達により『悪の英雄』として描かれてきたのを見続けて、いつか僕も『悪の英雄』を描いてみようと思った。

悪の英雄を演じる筆者

『悪の英雄』には幾つかのお約束事というかパターン、法則的な物があって、大体が何らかの恨み・妬みが憎悪の念に変化し、赤い血がドス黒く変化するのであり、根っからの『悪』はそんなにいない。

ここで云う『悪』は、突然、精神に異常をきたした連続殺人鬼や、歪んだ性癖者による快楽殺人鬼とは違う。例えるならば、昭和特撮ヒーローの雄、『人造人間キカイダー』。キカイダーであるジローを抹殺する為に改造人間として産まれてきた弟のサブローこと、『ハカイダー』みたいな悪を描きたいのだ。が、解りやすく造るのがどうしても嫌である、悪の英雄作成狂会怪長の僕は、遠回し遠回しに造っていくので、なかなか説明し難い。

ハカイダー

2009年に発売したアルバム『血の濫傷』にも複数の悪の英雄が登場する。反隷属と称し、傀儡人形としての糸を断ち切るのだ！と、人形人間革命謳歌にも聴こえるであろう『非傀儡堂言』なんかもその一つであり、何の気なしに聴いていると、うっかり傀人形の糸が絡み合い、糸地獄の輪廻をさ迷い続ける事になる。

非傀儡宣言

革命は、怒涛の旋律で繰り広げられるのだが、次の言葉で、これは革命では無く犯罪なのだという認識が産まれてくる。宣誓文は宣誓文では無く、犯行声明文なのだ。

『昭和49年3月、鏡町代表、影男』

人間に常に支配されている影。人間同士は愛せる事があっても、影は抱き合う事も出来なければ、新月の夜にはその存在もかき消されてしまうのだ。影はやがて人間を恨み、妬むのであり、影を傀儡人形と見立てる事によって、『悪の英雄』の1シーンが出来上がるのである。
だが、影は影なのであり、人間との永遠の上下関係を遠の昔から神と約束してしまったので、これはこれで、影の妄想による悪の英雄劇の1シーンなんだと認識さぜるを得ないのだ。すまんな、影男。

影男

鏡町『木偶の縫子』という犯罪歌も悪の英雄の1シーンに過ぎないのだが、どうやらこいつは某局(日本拍手協会)からラヂオ放送に至っての依頼が来たとき『歌詞が使えない』という、なんだそりゃ案件だったので、ある意味、真の悪の英雄にしてやれるかもしれない。盲目のシンデレラは、0時になると何が見えるのだろうか。アルバム『血の濫觴』を再度聴いて確認して欲しい。

只単に過去アルバムの宣伝じゃないのか？と云われたら首は横には振れない。悪の英雄として、その地位に君臨したいが為の草の根活動なのである。悪の英雄も大変割に合わない仕事なのだ。

さて、そんな悪の英雄率いるストロベリーソングオーケストラ、今年の公演は11月22日～24日に控えている演劇本公演『切り咲きジャップ最終章~臨終』がラストになっているのだが、ただいま稽古をモリモリやっている最中でして、ストロベリーソングオーケストラ演劇本公演といえば新曲発表会みたいな場でもあり、続々と全体グループラインに新曲のデモ音源やら素材やらが集まってきている。

このnoteを書く傍らでも新曲の作詞作業も同時進行しており、なんなら今夜はアニアニのカレーも仕込まないといけない…悪の英雄言うてる場合か！カレーの王子様ならぬカレーの仕込み犯やないか！！

で！
新曲群デスよ！

コレがまあ色とりどり、数多の犯罪が集約した楽曲達で、メンバー全員苦労する事間違いなし&過去最大の悪の英雄が生まれる悪寒…いや予感しかせん！という次第で、近々シンヴィジュアルも公開のフライヤーも発表しますのでご期待ください！！かっこいいデスよ！！

それではココからは毒者限定記事となっております。
今怪は８月４日に行った単毒公演『夜雨に帰ル、AmE-1:50』より、犯行時にスクリーンに投影した作品をお見せいたします。

まず、今怪は１曲目に行った『憑依奇譚』の影像デス。
こちら楽曲のホラーテイストを活かしたリリックビデオとなってますよ。

ライヴ時はやはり演者を観てしまうので、背景にはこんな影像が流れていたんだ！と目劇バキュンしてください。