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ASDの脳に関すること(まとめ)

ASDの人の脳は一般的な脳に比べ、一部の脳内ネットワークが働きすぎている、と考えられている。

2016年の金沢大学の研究によると・・・
ASDの子供が好きなアニメをみているときの脳の様子を調べた、。この結果を健常児と比較した時に、ASD児は健常児に比べ、聴覚をつかさどる両側頭葉や視覚をつかさどる後頭葉の活動が過剰になっている。

この原因とし・・・
ASDの脳は神経細胞のアポトーシスが正常に行われていないことがあげられている。

2014年のコロンビア大学の研究によると・・・
2歳~20歳の献体の大脳皮質から採取した組織を分析した結果、小児期早期はASD、健常人ともに同数のシナプスを持っていた。
青年期に近づくと、健常人のシナプスの数は幼児のそれより41%減少していたが、ASDの脳には多くのシナプスが残存していた。それは幼児に比べて16%しか減少していなかった。

幼児期から青年期まで続くアポトーシスを通じて、脳の神経回路は簡素化され洗練さたものとなる。
しかしASDの脳はこのアポトーシスが正常行われず、神経回路が簡素化されていないことが原因となり様々な障害を引き起こしている、と考えられる。
(共感覚もこれと関係があると考えられる)

様々な障害原因と考えられる脳内の異常(過剰接続、接続不足)

・聞き取りのための神経の接続は、健常者の1%だったが、視覚に関する神経の接続は、健常者の4倍ある人もいた。
・言葉を聞いて理解するウェルニッケ野と、発語をコントロールするブローカー野をつなぐ神経の束に異常がみられる人もいた。

記憶について・・・

ASDの人の記憶は、いつ・どこで・その時の感情・身体感覚・見たことや聞いたこと・・・、などが強く結びついて記憶される。そして記憶されたこれらの要素のうち、ある要素だけを組み替えて考えることがとても難しい。
このため似たような状況であっても、状況がどのように推移するかを予測することが難しいと考えられる。(同じ場所で同じ順番に出てくる食事を昼にしたとする。時間を夜にして同じ食事を再現したとしても、その食事が昼に食べた物と同じと考えることができない←ちょっと極端かもしれないですが・・・)

◎内的な時空が行ったり来たりすることがある
過去の強い記憶に似た物を見聞きすることで、それを記憶した時の脳の状態に戻ってしまう。これがフラッシュバックとよばれているもので、ASDの人が急にパニックになる原因の一つと考えられている。
この原因の一つとして、デフォルトモードネットワークの不具合があると考えられている。

デフォルトモードネットワークとは・・・
何もしてないときの、後部帯状回と前頭葉内側の協調(ワシントン大学医学部レイクル教授が名付ける)
デフォルトモードネットワークの働きは、
自己認識(自分について考える)、見当識(自分が置かれている状況の把握)、記憶(海馬がこのネットワークと連動することがあると思われる)

勝手に過去の記憶が想起されないようにするために・・・
活動の目的をはっきりさせたり、時系列を整理しやすいように予告支援を行うことが必要になってくる。

デフォルトモードネットワークで海馬という言葉が出てきたのですが、海馬って何?

海馬は、大脳皮質から情報を受け取りそれをエピソード記憶として保管する。(1週間~4週間程度)
長期記憶として大脳皮質へ転送し固定化する。
エピソード記憶には喜怒哀楽の感情も含まれるので、感情の中枢である偏桃体とも連携している。
脳に新しい情報が入ってこないときには、記憶を順序立てて整理する。

このように独特に機能する脳なので・・・(まとめ)

ASDの人は、初めに記憶した情報が残り続ける。
そのため、
以前記憶した状況に今回もなるに違いない、といった”過剰な想像”が起こる。
そして、
エピソード記憶の中の一部の要素だけを組み替えることが難しいため、要素の一部が違っているとそこに引っ掛かり先へ進めなくなる。
それに加えて、
先へ進めないために感じた不快の感情はいつまでも残り続け、しかもそのたびに足し算されていく。

デフォルトモードネットワークに不具合があるため、時間と空間と自分自身を関連付けることが難しい。
(毎日同じ状況が続くことで安心感をもつ)

脳の一部が働きすぎるので、見えすぎたり聞こえすぎたりしてしまう。(どれが必要な情報なのか分からない、他人の視線や声や存在に過剰に反応してしまう)

受けた刺激を処理する脳の部位とは違う領域も働いてしまうので、共感覚のような状態が起こる。

ウェルニッケ野とブローカー野の接続不足のような状態があると、自分の考えていることをうまく言葉にすることができない(努力では改善することはできない・・・)
(カードを使うなど、コミュニケーションを的確に行う支援が必要)

記憶にないこと(健常者にとっては同じことと思えることでも、ASDの人にとっては時間が違うなど、条件が違っていると同じことと思えない)が起こると予期不安が高まる。
(スケジュールを提示するなどの配慮が必要)
不安感は消えることなく日々蓄積されていくことが多い。
(普段からその予防のために予告支援を行う必要がある)

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