恋愛談義

寒いねぇ、今夜は
こんな夜は引き寄せるなで肩の一つぐらい
そばへいたっていいようなものだ
僕は若いんだもの

考えてもごらんよ
つやつやした黒髪が
こっちの肩へかかってくるこそばゆさったら、
たまらないよ
そりゃ
おまえさんの毛並もたいそう立派だけれども

あれをごらん
そらあの石灯籠の傍に椿が咲いているだろう
今はああやって上向いているけどもね
あの花はちょっと目を離した隙に落ちるんだ
潔くていいだろう
すこぉし惜しいくらいで丁度いいんだ
恋もああいきたいね
近頃は何でも女々しくっていけない

今指した花の横に枯れちまったのがあるだろう
時たまにあんなのもあるよ
枝を離れるに離れられずに
そのまんましなびてあの様だ
どうだい
やな眺めだろう
ああいう恋はしたくないね

おや
雪が降ってきた
花が恋だとして雪は愛だろか
しんしん静かに積もって
うっかりすると埋もれてしまうんだから
そのうえたいそうはかないもので
朝日が一撫ですればそれでみんな溶けちまうんだ
身勝手なことだよ
この雪も朝には溶けちまうさ

おまえさん
連れ合いはいるのかい
ずいぶん人恋しそうだけれど
何だ、もう行ってしまうのかい
別れのしるしに
その立派な毛並に頬摺りさせておくれ

気が向けばまたおいで
また語り明かそうじゃないか
楽しい夜だったよ
さようなら

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