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2021年明治神宮大会〜準決勝第一試合〜

花巻東 |011|001|240|=9
広陵  |051|210|01x|=10

佐々木麟太郎(花巻東)、真鍋彗(広陵)、佐倉侠史郎(九州国際大付)、前田悠伍(大阪桐蔭)という、今大会注目を集める一年生を擁する4校が勝ち残る形となった神宮大会準決勝。第一試合では花巻東(岩手県)と広陵高校(広島)が顔を合わせました。

野球観戦はシートノックから!

シートノックの動きを見ていると、広陵高校の選手たちの身体能力の高さを感じます。堅守は今年も健在といった形で、試合前のノックであっても打球を弾いたり悪送球したりという場面はほとんどありませんでした。特に印象に残ったのは外野手。低くて強い球がダイレクトで送球されるのを見ると試合開始が待ち遠しくなりますね。
対して花巻東。身体能力という面では広陵高校にやや劣るように見えましたが、そういった選手が勝つための準備をきっちりしているという印象があります。外野手からの返球は中継に入る内野手が大きな声と動作で呼び込み、捕手がカットorダイレクトの指示。内野手は挟殺プレーも交えたりと、さまざまな場面を想定・確認しながらのノックでした。

広陵打線、強打炸裂!

試合は花巻東が2回に先制点を取るものの、広陵高校がすぐさま逆転して中盤までは圧倒。5回終了時点で9−2と、コールドの可能性も出てきました。広陵高校注目の一年生スラッガー真鍋彗君は第一打席でセンター前ヒット、第二打席でライトへ弾丸ライナーのホームランと大暴れ。メカニクスがどうこうとかの理論はあまり分かりませんが、
* 懐の深さ
* 無駄な動作の少なさ
* 脱力状態からインパクト時に一気に力を開放する
というのは見ていて感じます。決して強振しているという感じもなく、コンタクトする能力がかなり高いのでは?という感じがします。凡退した打席もライナー性の強い打球を飛ばしていました。花巻東の投手陣は技巧派が多いですが、緩いボールをきちんと捉えています。140kmを超える速球への対応も楽しみです。様々な関節を大きく動かして打っている感じのする佐々木麟太郎君が”動”であるならば、真鍋君は”静”といったところでしょうか。

真鍋君の本塁打場面

佐々木麟太郎君の本塁打(一回戦の映像)

5回裏の広陵高校の攻撃はイケイケな感じもあり、このまま一気にサヨナラコールドになるのでは?という勢いでした。それだけに途中で牽制死があったのが悔やまれます。花巻東の守備陣が劣勢の中でもよく集中していたということでしょう。加えて目立つのが花巻東の外野手の守備位置の深さ。走者が2塁まで進んでも、比較的深い位置で守っています。しかし意外にも、ワンヒットで走者が帰ってくる場面はありません。深く守ることで後ろへの意識を最小限にし、前に出ることを優先することで速いチャージにつなげているということも考えられます。
昔なにかの記事で読んだ気がするのですが、花巻東の佐々木監督が「外野手は後ろに下がるよりも、前に出る方が速い」というコメントをしていたと記憶しています。もちろん浅めの打球のヒットゾーンが広がるというリスクもあるため、それなりに身体能力や打球判断が優れている必要もあるでしょう。菊池雄星世代は身体能力の高い選手が揃っていたから、深めに守らせていたという話もあった気がしてます。。。だとすれば今年の選手も、あの菊池雄星世代に匹敵するくらいの能力を持つ選手が揃っているという自信の現れでしょうか。(シートノックの時は広陵高校より身体能力が劣ると感じていました。ごめんなさい。)

粘りの花巻東、徐々に迫り来る

中盤まで苦しい試合展開となった花巻東ですが、徐々に打線が繋がり始めます。6回表、先頭の佐々木麟太郎君がヒットで出塁すると、5番小澤修君ライト線へのツーベースで一気にホームイン。今大会の佐々木君は左脛骨の疲労骨折、この試合でも臨時代走が出るレベルの痛さだった死球を受けるなど、決して万全な状態ではありませんが、必死の激走でした。裏の広陵高校の攻撃を初めて三者凡退に抑えると、流れは一気に花巻東へ。7回は佐々木麟太郎君が左中間に2点タイムリーツーベース。引っ張りだけではなく逆方向にも飛ばす技術があるということを見せれたのは、今後他校にとっても脅威となるはずです。

そして8回。この試合最大の盛り上がりポイントが訪れます。一点を返して3点差とした花巻東は二死一、二塁で佐々木麟太郎君が打席へ。ここで球場で観ている多くの人が期待していたことをやってのけてくれました。高めの見送ればボールになる球を引っ叩いた打球が高々とライト上空へ。風にも押し返されてライトフライかと思われた打球は、ぎりぎりフェンスを超えて同点スリーランホームラン!こういう場面で打席が回ってきて、きちっと期待に応えるあたり、スターですね。
こういう巡り合わせは言語化したり理屈で紐解くことは難しいですが、それはそれでそのままにしておく方が楽しく観戦できるかもしれないですね。

広陵高校決勝進出!佐々木麟太郎、初の全国大会はベスト4で涙

同点に追いつかれた広陵高校でしたが、裏の攻撃ですぐさま勝ち越し。最終回の守りも二死一、二塁からレフト前ヒットで一気にホームを突かれますが、レフトからのダイレクト送球でタッチアウト。試合終了となり決勝進出を決めました。花巻東サイドからすればタイミング的にはやや厳しいのを承知で突っ込んだという感じでしょうか。次の打者にもう一本安打が出ることと、送球が少し逸れる可能性を天秤にかけた結果の判断だと思います。この場面で低くて強い、素晴らしい送球を見せた左翼手が見事でした。
広陵高校の打撃陣は真鍋君に注目が集まりがちですが、全体的に力強い打球を飛ばす打者が揃っています。センバツに向けての課題としては投手の層を厚くすることと捕手力の強化でしょうか。
・投手力
エースの森山陽一郎君は常時130km後半の直球を投げ込んでいて、ベースの上でもかなり圧力がありそうに見えました。しかし終盤に球数が増えてきたところでやや制球が乱れてそのまま降板。2番手投手が打ち込まれてあわやというところまでいきました。ですがこちらもかなり勢いのある球を投げていたので、潜在能力はかなり高い選手なんだと思います。初戦では好リリーフをしたようなので、それほど心配することではないのかもしれません。起用方法を見ていると、エースの森山君が100球前後、その後継投に入るというのが現状の戦い方のようです。
・捕手力
この試合では序盤にうまく試合に入れなかった印象があります。ブロッキングなどの目に見えてしまう部分のミスがいくつかありました。ただイニング間の送球を見ていると、とてつもない強肩の持ち主のようです。広陵高校は捕手でもプロ野球選手を輩出していますので、この冬にどれくらい仕込まれるのかが楽しみです。

一方の花巻東ですが、こちらも力のある打者が1〜9番まで並んでいます。先発投手によってはスタメン9人中8人が左打者ということにもなるようですが、左投手を苦にする打者は少なさそうです。佐々木麟太郎君以外にも4番の田代旭君は高校通算40発とのこと。また個人的には5番小澤修君、9番熊谷陸君はかなりの好打者だと感じました。ヘッドの軌道がすごく綺麗なスイングです。特に熊谷君はこの試合4安打。追い込まれてからもファールで粘り、最後はヒットを打つという、投手からすればかなり嫌な存在でしょう。下位でもこれだけの打者が揃っているので、どの試合でもある程度の得点は期待できると思います。それだけに投手力を含め、どれだけ失点を防げるかが勝ち上がっていく上での鍵になりそうです。

試合終了後、花巻東の選手の何名かが涙を流して悔しがっていました。あまり神宮大会で目にしない光景ですが、それだけ本気で日本一を目指してやってるんだなぁと感慨深くなりました。人生の中でそこまで本気になって打ち込んだり目指したりできることってそんなに多くないと思います。大人になると特に笑。だからこそ高校生たちには今この時間を大切にしてほしいですし、筆者はいつも尊敬の念を持ちながら高校野球を観ています。

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