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2021年明治神宮大会〜準決勝第二試合〜

九国大付|011|000|0 =2
大阪桐蔭|010|007|1× =9

佐々木麟太郎(花巻東)、真鍋彗(広陵)、佐倉侠史郎(九州国際大付)、前田悠伍(大阪桐蔭)という、今大会注目を集める一年生を擁する4校が勝ち残る形となった神宮大会準決勝。

準決勝第二試合は、九州大会を圧倒的な打力で制した九州国際大附と、高校野球界の横綱的存在・大阪桐蔭。(※決して西谷監督を揶揄して横綱というワードを使った訳ではありません)

対照的な両校のシートノック

先にシートノックをしたのは後攻の大阪桐蔭。カメラを構える人の多さからも、その人気が伺えます。ノックを見ていた感想としては、とにかく元気でよく声が出ているということ。あまり大阪桐蔭の試合を生観戦したことがないのですが、いい意味でイメージと違ったという印象です。中学時代に全国トップクラスの実績を持つ選手が顔を揃える訳ですし、どちらかといえばクールな選手が多い印象を持っていました。過去のチームは分かりませんが、今年は元気で、選手間で発破を掛け合いながら競争してる感じがします。ノックを打つコーチも選手たちと溶け込みながら、一緒に野球を楽しんでいます。最後はキャッチャーフライを打つ際にノックバットが折れてしまうというハプニングもありながらも、「今年の大阪桐蔭も強いぞ」という印象を与えてくれました。
対して九州国際大附。そのシートノックはものすごくスマート。全員が事務処理をしているんじゃないかと思わせるくらい淡々とこなしていきます。全くもって対照的な両校のシートノック。果たして試合はどのように進むのでしょうか。

背番号2の快投で流れを掴んだ九国

九州国際大附の先発は背番号2の野田海人君。”野田キャノン”とも称される強肩の持ち主で、すでに来秋のドラフト候補にも名前が上がっています。全国大会の準決勝で、しかも相手は全国の高校からマークされる大阪桐蔭。本来であればエース左腕・香西一希君を先発させて、経験を積ませたかったはずです。何より本人もそう願っていたのではないでしょうか。ですが九州国際大附は土曜日からの4日間で3試合目の過密スケジュール。香西君は初戦、2回戦と一人投げ切っていますし、疲労を考えると登板回避はやむを得なかったでしょう。野田君への信頼もあるとは思いますが、この決断をした首脳陣は素晴らしいと思います。
先発を任された野田君も素晴らしいピッチングでした。いわゆる野手が投手をやっているという感はあまりなかったように思います。MAX145kmという威力抜群のストレートを持ちながらも、そのストレートを意識させながら変化球を軸にピッチングを組み立てていました。四球か三振かという荒々しさもなく、制球を大きく乱して崩れるということも少なそうです。

野田君の好投に応えるように、試合は大阪桐蔭・前田悠伍君から2本のホームランを放った九州国際大附がリードして中盤まで進みます。九州国際大附の一年生スラッガー・佐倉侠史郎君の先制ホームランは見事でした。変化球がやや高めに入ってきてところを右中間へ、打った瞬間にそれと分かる豪快な一撃。ベースを回る佐倉君はガッツポーズ。試合前はクールな感じでしたが、やはりホームランを打った時の嬉しさは格別ですよね!相手を侮辱するものでなければ、ガッツポーズをして感情を表現するというのは大切なことだと思います。

一方打たれた前田君ですが、打球を見送ることなくロジンパックを触るなど、ケロッとした表情。聞けば高校入学後の初被弾だということですが、動揺している様子は全くありません。15歳にしてこれだけ自らをコントロールできるあたり、やはり只者ではありません。それでいてその後の佐倉君との対戦の際はあきらかにギアチェンジ。クールに見えて、実は相当熱いハートを持った選手なのでしょう。
また投球を見ていて目を張るのがテンポの速さ。捕手の松尾汐恩君の返球も速いのですが、前田君も投げるテンポがとにかく速い。ワンバウンドをしてもボール交換を要求することもありません。前田君のテンポに合わせて松尾君が速く返球をしているのか、テンポよく投げさせるために速く返球しているのか、色々と想像が膨らみます。

大阪桐蔭打線本領発揮!決勝の舞台へ

中盤まではダブルプレーにバント失敗など、なかなか攻めきれない大阪桐蔭打線でしたが、6回に集中打が炸裂。ホームランも飛び出すなどして7得点。7回にも犠飛で1点を追加し、コールド勝ちで決勝進出を決めました。試合を通じて大阪桐蔭はよく声が出ていたという印象です。守備時は内野手が投手に「力抜け!」などと声掛け。攻撃時は追い込まれた打者に「三振OK!」と、当てに行くような打撃にならないような意識を全員が持っているように感じました。

最後の攻撃のイニングはブルペンで背番号1の別所孝亮君が捕手を座らせてピッチング練習、ともに甲子園で登板経験のある川原●貴君と川井泰志君がベンチ前でキャッチボールをしていました。前田君はこのイニング、出塁した打者のエルボーガードを取りに行くなどの役割をしていたので、もしコールドにならなかったら別所君がリリーフ登板していたのでしょうか。観てみたかったなぁという思いがあったのが本音です笑。
前チームからベンチ入りしていたメンバーは少ないようですが、それでもやはり力のある選手が揃っているというのが大阪桐蔭。今年のチームはポテンシャルで圧倒するというよりも、ベンチメンバーも含めた全員で相手に食らいつく”負けない強さ”のようなものを感じます。なんとなくですが、全国制覇をした2008年の浅村世代のチームに近い匂いがします。(どこが?と聞かれても何の根拠もないですが笑)。王者はやはり強いという印象を持たせるとともに、まだまだ伸びしろを残しているようにも見えるのが末恐ろしい。選抜でも当然優勝候補として注目を集めるでしょうし、粘り強く勝ち上がっていくのではないでしょうか。一冬超えた姿が今から楽しみですし、万全の状態で大会を迎えてくれることを祈ります。

敗れた九州国際大附も、選抜の優勝候補でしょう。この試合ではエース香西君を温存する形になりましたし、佐倉君以外にも強打者が揃っています。初戦のクラーク国際戦も観戦しましたが、140kmを超える直球にも振り負けることなく強い打球を飛ばす力があります。直球をきちんと弾き返すというのはバッティングの基本であると思いますし、選抜ではその強打を全面に押し出して躍動してほしいなと思います。


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