見出し画像

勇気をもらいたい人に見てほしい『英国王のスピーチ』

映像作品紹介、2作目は『英国王のスピーチ』。
歴史が苦手だという人もとりあえずこの記事を読んでみてほしいです。
(※ネタバレは出来るだけ避けています)

まずは、簡単な作品紹介から。

1.『英国王のスピーチ』

2011年2月公開、英・豪共同製作の伝記映画です。

この作品では、現在のイギリス女王・エリザベス2世の父であるイギリス国王・ジョージ6世の半生が描かれています。
ジョージ6世は、幼い頃から吃音症を抱えた人物でした。
(この記事では呼び方をジョージ6世に統一しています)

吃音症とは…
「言葉が円滑に話せない障がいで、
話を始めるときに最初の一音が詰まったり、
同じ音を繰り返したりする言語障がいのひとつ」

そんな彼が王となったのは、第二次世界大戦が勃発する少し前。
まさに激動の時代に国王となった彼は、国民を勇気づける存在とならねばなりませんでした。
そんな彼が、妻エリザベス妃と言語療法士ライオネルと共に吃音を克服し、国民に愛される国王として生きたその実話が映像化されています。

「英国史上、最も内気な王」と呼ばれたジョージ6世は、どのような人生を過ごしたのか、その道を辿る映画です。


2.ジョージ6世という人物

今回も、早速感想に入っても良かったのですが、せっかくなので今回の主役となるジョージ6世という人物についてつらつらと綴らせてください。

第一次世界大戦時、王座についていたのはジョージ5世という人物でした。
彼には2人の息子がおり、兄がエドワード8世、弟がジョージ6世。
ジョージ5世の後を継いで王座につくのは兄のエドワード8世でしたが、恋愛問題によって国王に即位した後、1年足らずで退位しています。
そして、その後すぐに王座についたのが弟のジョージ6世、この映画の主人公となる人物でした。
人物関係が難しいので以下に家系図を載せておきます。


ジョージ6世は、王座についてから第二次世界大戦を経験することになりますが、前述の通り、彼には言語障害がありました。
そのため、この激動の時代の王として職務を全う出来るか、政府にも国民にも不安があったようです。
この時代の国民にとって、大陸から迫る戦火を乗り切るためには、国王の激励の言葉が支えとなっていたからでしょう。

しかし、そんな不安を彼は努力によって打ち砕きます。
彼は即位すると、訓練によって言語障害をほとんど克服し、戦争の卑劣さに揺れ動く国民に寄り添おうとしていました。
戦局が展開し、敵であるドイツのロンドン空爆が頻繁に行われる時であっても、彼は周囲の疎開の勧めを断って、国民と共にロンドンに留まる決意をしたのです。
実際、彼の住む宮殿に爆弾が落ちてきて、九死に一生を得た出来事もあったようですが、それでもロンドンを離れなかったことは、「国民に寄り添う」ことを行動で示した彼の決意だったのではないでしょうか。

戦後についてですが、彼は元々病弱であったこともあり体調が思わしくない日々が続き、1952年2月に動脈血栓により死去。
56歳でした。
ジョージ6世は、第二次世界大戦をイギリス国民が乗り切るために必要な存在だったのではないかと思います。
だからこそ、彼の生涯が映画化されたのです。

彼の生涯についてのお話は、以前たまたま読んでいた以下の書籍から引用しています。

『イギリスの歴史が2時間でわかる本』、歴史の謎を探る会・著。

220ページほどでさらっと読めるものなので、イギリスの歴史に興味があるという方は読んでみてください。

3.感想

この映画は、ジョージ6世の置かれている状況を考えると本当にもどかしさを感じてしまいます。

なぜなら、国王にとって演説とは切っても切り離せないものの1つだからです。
時代や場所にもよりますが、まず彼が生きていた時代は国王が先頭に立って争いに身を置き民を導くのではなく、言葉で国民に寄り添い、国民を勇気づけることが求められていたはずです。
特に、大戦期以前から最中にかけて多くの国で王室が廃絶に追い込まれました。
その中でイギリスは王室を存続させる道を選びました。
そんなイギリス国民にとって王の存在はそれだけ大きく心の拠り所となるものだったのではないでしょうか。
もちろん私はイギリス人でもその時代に生きていた人間でもないので、あくまで想像ですけど。

そういうわけで、国王は言葉で民に寄り添わねばならない。
戦争なんてやってる時は尚更でしょう。
その国王が、自分の思う通りに言葉を紡ぐことが難しい。
作中では、ジョージ6世の感じていたもどかしさ、閉塞感が映像を通してよく伝わってくるのです。

ただ、彼は彼の人生をそのままにはしませんでした。
妻であるエリザベスや言語療法士ライオネルといった国王を支える存在のおかげもあり、彼はその努力で言語障害を乗り越えます。
その過程が丁寧で、明快で、つい口元が弛んでしまうように描かれていました。
この過程を見てほしい。
葛藤とトラウマに向き合う姿を見てほしい。

練習をしたからといって簡単に乗り越えられるものではないからこそ、彼の努力と周囲との友情を見ていると、心臓がぎゅっと温かくなって、じわりじわりと感情が染み出してきます。
すごく素敵な映画です。
おもしろい!たのしい!といったエンタメ的な感想ではありませんが、「あぁ、見てよかったなあ」と率直に思いました。
きっと何度見返しても、これらの気持ちは寸分違わずに思い出せるでしょう。

「おすすめの映画はなんですか?」と聞かれたとき、いくつかが思い浮かんできてすぐには答えられないことが多々あります。
そのいくつかのうちのひとつが、この『英国王のスピーチ』です。

4.勇気がほしい人へ

最後に、この映画は一歩踏み出してみたいけど怖くてできない、勇気がほしい、そんな人に見てほしいです。

大人になると新しいことに挑戦するって難しいですよね。
少なくとも私は、新しいことに挑戦することを大人になってから避けてきたように思います。
子どものときは、夢や目標のために頑張らなきゃいけなかったり、楽しそうだと思ったことに踏み込んだり、新しい環境に身を置いてみたり…、と日々が目まぐるしく変わっていました。
けれど、大人になってからは、なんとなく生きていてもぬるっと生きていけてしまっているんです。
安定しているのだから、なんて言い訳をして新しいことに挑戦しようとすら思えなくなりました。
勇気がないんだと思います。
失敗したらとか、今の生活が崩れてしまったらとか、そういうことばかりを考えてしまうんです。

でも、『英国王のスピーチ』を見た後、そんな自分が滑稽に見えてきました。
主人公は自分の不安やトラウマと向き合い、困難を乗り越えました。
方法は突飛でヘンテコに感じるものであっても、彼は挑戦をしました。
しかも、彼は実在した人物で、物語に多少の脚色はあれど事実を描いています。
「それならば自分も…」なんて思わせてくれるのです。

今の環境に慣れてしまって退屈な人は、なにか新しいことに挑戦してみませんか?
挑戦したいことがある人は、思い切って一歩踏み出してみませんか?
そんな人たちに勇気を与えてくれるのがこの映画です。

それから最後のスピーチシーン。
あの緊迫感とほろっとしてしまうあの感覚を味わってほしいので、全人類におすすめしちゃいます。

DVD/Blu-rayのレンタルは各所から。
サブスク配信はprime video、U-NEXT、dTVで見られます。
是非、この機会にイギリスの歴史、そして実在した「英国史上最も内気な王」の人生を覗いてみませんか。

ちなみに、私は前々からやってみたかったゲーム配信に挑戦できました。ヤッタネ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?