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はじまりのパーカー

パーカーが苦手だ。パーカーというよりはフードが。
便利だとは思う。急な雨降りや耳が冷たいときにはさっとかぶることができ、止んだら脱ぐだけでいいのだから。濡れずにすんで暖かい上に、鞄にしまったり、手に持って歩くなどの手間もいらない。素晴らしい仕事ぶりだ。 
しかし実用としての出番がなく、たらっと肩に重くたれている時のフードってなんなのか。
パーカーが好きな友達は言っていた。
「フードはあるというだけでいい。フードの存在そのものがかわいい。重みなど気にしたことはない」
その境地に辿り着けないまま月日は流れ、お下がりに贈り物にとフードつきの服をもらうこともあった。その度に挑戦してみたものの、どうしてもしっくりこなかった。

その私が、去年の秋に生まれてはじめてパーカーを買った。
生地はしっかりとした綿100%。裏起毛で寒い日も暖かい。白い色が気持ち良く、胸元にはステンレス調でプリントされたロゴが渋めに光っている。フラットな思考を造語で表現し、それをブランド名としたらしい。
甥と仲間たちとでアイデアを出し合い、デザインする。出来上がった服の広告も自分たちで行っていた。やりたいことをやってみようと手抜きなしで世の中に送り出したもの。
若い作り手たちのセンスをカッコよく着こなすことは難しいだろう。それでも買いたかった。彼らのはじまりのパーカーを私も着てみたかった。

手元に届いた白いパーカーは、だいぶ大きかった。はじめてのパーカーではじめてのビッグサイズ。着てみたらそれもなかなか良かった。フード部分は二枚重ねでしっかりと形を保っている。たらっとする気配もない。気のせいか重さも気にならず、さらに首まわりも暖かかった。
はじめてのパーカーとの毎日がはじまった。















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