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本屋を<考えるため/問うため>に本屋をつくる。

本屋を始めようと思う。

昨年の9月末、僕の勤めていた本屋・心斎橋アセンスが閉店した。
その頃はまだ自分で本屋をやるなんて考えてもいなかった。
理由はどうあれ、思いもよらず出来た暇に色々な物を見聞きし、それから自分が行く先を改めて考えようなんて悠長なことを思っていた。
その間には有難いことに、今まで話す機会のなかった本屋の方や出版界隈の方の話を聞いたり、本についてのイベントに登壇したりと、新たな経験を積むことが出来た。
そうこうしている内に年を越し、そろそろ次の進路を考え始めようと思った矢先、天牛堺書店が破産した。
南大阪出身の僕にとって、馴染みのある本屋といえば天牛堺書店だったから、想像以上の衝撃が走り、あれほど地元に愛されていても存続することが出来ないのだと暗澹たる気持ちになった。
天牛堺も、アセンスやスタンダードブックストア心斎橋も、今まで在ることが当たり前だと思っていた本屋が立て続けにこの一年で大阪から無くなってしまった。そしてそんな風に本屋がどんどん少なくなっていくことが、とても悲しく無念に思えた。

じゃあ何か自分に出来ることはあるのか?と改めて考えた時に、本について、本屋について問い、考えつづける為に、自分で本屋をやってみたいという気持ちが芽生えた。

自分で一から始める小さな本屋なのだから、チェーン店や大型店とは視点の違った、ここにしかない棚を作らなければ意味がない。本だけが持つ魅力を伝えられるようにするにはどうすればいいのか。元々力を入れていた文芸を中心にしながらも、いわゆるジャンルに捉われすぎることなく、”問い”を見つけることのできる本を一冊一冊、出来る限り丁寧に売ってゆきたい。本を手に取る度に、<見方/味方>が増えるような本屋をつくりたい。その為にもイベントや展示も積極的にしたい…営業形態も含め、人ひとりが暮らしていきながら面白いことを出来るように、色々と試したい。

とにかく最小単位で始めたいと考えて、5坪と小さな部屋を借りることにした。

ここまで来たらもう後戻りはできない。正直不安でいっぱいだ。
でもおこがましさを承知で言うなら、新しく本屋を開くことで少しでも本のまわりが面白くなるかもしれない。その可能性を信じて、一度自分が出来ることを試す意味はあるのではないかと思っている。

こんな先走ったような思い、拙い文章に、一人でも賛同や応援してくれる人がいてくれるのならとても嬉しい。

まずは小さな決意表明をここに残しておこうと思う。

toi books 磯上竜也


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