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愛しの読み聞かせ


 読み聞かせが好きだ。


 子どもたちが小学生のころ、小学校で読み聞かせのボランティアをしていた。朝の読書タイムに10分間だけ、クラスに入って本を読む。

 読む本は自由。毎回、本選びも楽しい。子どもたちがどんな反応をするか、想像しながら選書して、なんどかひとりで試し読みをする。それから、うちの子どもたちにも読み聞かせ、感想や意見をもらっていた。


 ある日、小学校1年生のクラスに読み聞かせにいったときのこと。

 クラス脇の廊下で時間が来るのを待っていると、わたしの周りにわらわらと子どもたちが集まってきた。どの子も目がキラキラさせて、わたしの手元の本を覗きこむ。

 「今日はなんの本を読むの?」

 「だれのお母さん?」

 「お名前、なんていうの?」

 返事を順に返していたら、先生がみえた。子どもたちは、ちりぢりに席に戻っていく。


 読み聞かせの時間が始まった。

 今日の絵本は、「11ぴきのねことあほうどり」
 はじまりはじまり……。

 ふと、1番前の席の子が興味なさげに、机にうつ伏せているのがみえた。

 本が嫌いなのかな?

 気になるが、どんどん読み進めていく……。


 話の終盤、ねこたちがあほうどりを数える場面。たくさんの子どもたちが一緒に数をかぞえてくれる。

 「ななひき、はっぴき、きゅうひき、……。」

 あっ、1番前の子の顔が上がった!

 「じゅういっぴき!」

 最後のあほうどりは特大サイズ!
あほうどりをたべちゃおうと思っていたねこたちは、びっくり仰天!

 あはははっ!
 あははっ!
 あっはっはっ!

 みんなの笑いがクラス中に渦を巻く。

 1番前の子も大笑いしている。

 うふふと、うれしくなりながらも、わたしは素知らぬ顔で読み聞かせを続ける。1番前の子もそれからは顔を上げたまま、最後まではなしを聞いてくれた。


 本は楽しいものであってほしい。
 押しつけは、いけないけれど。


 一冊をみんなで一緒に味わうのが、読み聞かせ。


 あぁ、楽しかったね!


※冒頭の写真はmitomokさん🌸からお借りいたしました!素敵な手作り11ぴきねこちゃんズです✨
20年間子どもたちに可愛がられているそうです🥰
mitomokさん🌸ありがとうございました!




「11ぴきのねことあほうどり」
 馬場のぼる作 こぐま社


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