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そういう日もあるよね


 クリスマス前の日曜日の午後。

 夫が、老眼のため、メガネを作るというので、一緒にショッピングモールに来ている。メガネを作るのは、生まれて初めての夫。

 「どのメガネが似合う?」ときかれるけれど、メガネ姿を見慣れていないからか、違和感しかない。そのうちに見慣れるだろうか。ふたりして悩みつつ、なんとか決まった。わたしの出番は終わり、近くのベンチで待っていることにする。

 隣に、3歳くらいの女の子を抱っこしたお父さんらしき人が座った。ゆっくりと、前後に揺れている。女の子はおねむなのかもしれないな。そう思って、ちらっと女の子の顔を見たら、しっかりと目が合ってしまった。まだまだ、眠らないだろうなぁ。

 お母さんらしき人が、「視力を測るのに1時間待ちだって、大丈夫かな」と言いに来た。「待ってるから、大丈夫」と、お父さんらしき人が言う。

 日曜のショッピングセンター内は、とても混んでいる。人、人、人…わたしは、ベンチに座って、ぼんやりとしている。駐車場に車を止めるだけでも、あちらこちら探し、ようやく空きを見つけたのだった。この混雑を予想した息子は、もちろん家で留守番している。

 夫の様子を見にいったら、ようやく視力検査の番がまわってきたようだった。まだ、終わらないだろうな。ベンチに戻らず、お店を見てまわることにした。今日は、イベントが多いみたいだ。お子さん対象のパン教室や、小物入れにタイルを貼るクラフト教室が行われている。

 クリスマス用のディスプレイが華やか。セールの看板が目を引く。

 雑貨屋さんをのぞいてみる。美濃焼のお皿、ハンドクリーム、紅茶に、入浴剤なんかが並んでいる。ハンドクリーム、香りがいいものがあったら、ほしいなと思って、サンプルをひとつずつ、嗅いでいった。ブラックティーの香りがちょっと気に入ったけれど、迷って買うのはやめた。紅茶の香りって、珍しい。

 洋服も見たが、ピンとくるものには出会えなかった。服だと、購入を決めるのに時間がかかる。時々は、突発的に決めちゃうことがあるが、ごくごく稀のこと。また、自分のものは、なかなか決められないのに、子どもたちのものはすぐ買えたりする。特に、娘に似合う服は、直感でわかってしまう。息子の場合は、似合ない服がわかる。不思議だ。

 周りは、賑やかで楽しげな雰囲気であふれている。でも、今のわたしには、眩し過ぎる。疲れた。また、ベンチに座る。

 今日は、ちょっとだけ娘が恋しい。成人式の前撮りのため、11月末に会ったばかりだし、年末には帰ってくるというのに。しかも、昼に電話したばかりなのに。そう思っていたら、夫から「終わったよ」と、連絡が来た。

 夫と合流して、夫の上着を買い、本棚を見るだけ見に行った。そうしたら、ふと、娘の大好物の抹茶ソフトクリームが食べたくなった。いつも娘と半分こする。今日は、夫と半分こ。隣に座る夫、娘によく似ている。いや、娘が夫に似てるんだっけ。

 ソフトクリームを食べたら、さみしい気持ちがやわらいだ。そういう日もあるよねと、自分で自分の肩を持つ。娘が帰ってきたら、また一緒に食べにこよう。



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