見出し画像

かたつむり


 1月のある日。
 冷たい雨が降ったあと。
 玄関を出て、ふと足元をみると、かたつむり。

 あぶない、あぶない。踏んでしまうところだった。


 はて、かたつむりは冬眠するんじゃなかったっけ? どうして、きみはそこにいるの?

 もう少し暖かだったら、春と間違えて起きてきたのかなと思うけれど、吐く息は白い。

 お腹がすいたの? 体は動く?

 つのはぴーん、じりじり、じりじりと前進中。顔色はわからないが、今にも倒れそうという感じはしない。わりと元気なのかも。何かを食べている様子もない。

 どこかに行って何かをやりたいのかな?


 きみ、変わりものっていわれない?実は、わたしもそうなんだ。「こんなときにわざわざそうしなくても」って、いわれるタイプだよね。

 みんなと違うからって、気にしなくてもいいよ。きみはきみ。こんな寒い日に出かけようだなんて、すごい勇気だね。

 ベストをつくせますように。道中、気をつけて。無理はしないでね。疲れちゃったら、いまさら、なんて思わず冬眠したっていいのだし。


 かたつむりにさよならをいって、立ち上がったとき、

「やりたいこと、やってやろうぜ!」

 そんな言葉が口からこぼれた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?