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リチャード・サクワ「米国の兵器と欧州の隷属者がウクライナの平和を阻む」

翻訳元 https://thegrayzone.com/2022/04/25/us-weapons-european-supplicants-block-peace-in-ukraine/

AARON MATÉ   2022年4月25日

Guest :  RICHARD SAKWA

ゲスト:リチャード・サクワ
 ケント大学教授(ロシア・ヨーロッパ政治学)
 著書に『最前線ウクライナ : 国境地帯の危機』など。最新作『欺瞞: ロシアゲートと新たな冷戦』


(音声書き起こし)

AARON MATÉ: プッシュバックへようこそ。 私はアーロン・マテです。 リチャード・サクワ氏にお越しいただいています。 ケント大学のロシア・ヨーロッパ政治学の教授です。 著書に『最前線のウクライナ:国境地帯の危機』など、最新作に『欺瞞:ロシアゲートと新たな冷戦』があります。 リチャード、お越しいただきありがとうございます。

RICHARD SAKWA: どういたしまして

AARON MATÉ: ロシアがウクライナに侵攻して2カ月が経とうとしています。 あなたの目から見て、現在の状況はどうですか?

RICHARD SAKWA: 現時点では、膠着状態の一種です。 戦場には動きがあります。 ドンバスをめぐる大きな戦いが本格化しようとしているのは明らかです。 しかし、誰も本格的な和平交渉に向かおうとはしていないようです。 紛争当事者はみな、敵対行為を続けることが長期的に自分たちの交渉力を高めると信じているのです。 ロシアはより多くの領土を占拠し、おそらくオデッサまで行きますが、ドンバスからクリミアまで、そしてルハンスクとドネツク両州の全域を従来通り維持するとみて間違いないでしょう。ウクライナは、西側諸国の兵器があればロシアを押し返すことができると、おそらく戦場で何らかの勝利を収めることができると考えているのです。

最も興味深いのは、通常、パレスチナ紛争や中東紛争と同様に、米国が常に非常に積極的に関与していることです。 平和のためのヘンリー・キッシンジャーのシャトル外交を思い出します。 この段階では、それがないことで注目に値します。 その意味するところは、米国もこの紛争が続くと、何らかの形で自国に有利に働く、と考えているということです。 制裁がますます厳しくなるにつれ、ロシアは衰弱し、最終的には深刻な長期的競争相手として弱体化するだろう、という仮定です。米国は、 ロシアは本格的な同業者ではなかったし、米国と中国との対決に軸足を移す前に、ロシアに決定的な打撃を与えることができると感じているのです。

そして、EUに関しては、それが自国の国民に多大な不利益をもたらすにもかかわらず、制裁の観点から常に負担金を引き上げられて恥をかかされていることを除いて、最終的にはこれらすべてにおいて戦略的ビジョンを持っていません。

そしてもちろん、これはエネルギーの面でも英国に当てはまります。 みんな知っています。 私のエネルギー代は3倍になりました。月100ポンドから300ポンドになり、年間では3,000ポンドを下らないという、驚異的な数字になっています。つまり、大規模な経済的ダメージについて話しているのです。 OECD(経済協力開発機構)は、英国で確かに、景気後退に近いと話しています。 しかし、これはまだ続きます。 実質的な和平という意味では、何が提示され得るのか、何もない。最終的にある種の膠着状態が達成されるまで、これをスローアウトし続ける以外に、これがどのように終了するかについては、誰も本当に考えていないのです。

AARON MATÉ: それで、それは、これらのさまざまな当事者の目標にとって何を意味すると思いますか。 米国の目標は、あなたが言うように、ロシアを弱体化させることでした。 ロシアは、それは起こっていないと言います。 例えば、米国の多くが予想していたように、ルーブルは瓦礫の中に取り残されるということはなく、安定した状態を保っています。 すると、これまでの状況に基づいて、ここで彼らの中心的な目的を達成する可能性が最も高いのは、誰だと思いますか? 

RICHARD SAKWA: ええ、ロシアの話に振ってくれてよかったです。 なにもかも特別なことです。 一つは、いわば戦争が起こるということですが、絶対的な重要な問題は、ロシア国内に起こることです。 クーデターや政権交代がすぐに起こるとは思いません。

もちろん、起こっているのは、ロシア経済を制裁の対象から守ることを目的としたロシア要塞戦略の強化であり、メモリアル・インターナショナルおよびメモリアル・ヒストリカル・アソシエーションのメンバーの裁判が、国内の抑圧を続けています。

しかし、経済レベルでは、ロシアのある種の中央銀行が比較的共同で行動し、前進しています。 つまり、基本的に私が今述べたいことは、ロシアは実際に、ある種の資本主義に移行しているということです。つまりボルシェビキ革命の後に起こった戦争共産主義ではなく、戦争資本主義とでも呼びましょうか、つまり、社会の動員や異論への弾圧を含めた本格的な動員経済、そして、もちろん、多くの人が国内で家で求めている動員モデルへ向かっているのです。欧米企業が撤退することで、小売業をはじめとする市場のニッチは明らかにロシアの競合他社が埋めることになり、新たなビジネスチャンスも生まれるでしょう。 しかし、私が言うように、これはすべて、開発モデルではなく、動員経済の比較的低いレベルにあります。

AARON MATÉ: メモリアルについて説明すると、ソ連時代の犯罪を記録するロシアの団体で、私の記憶が正しければ、ウクライナ侵攻の同じ頃、ロシア政府によって閉鎖されました。

RICHARD SAKWA: はい。 2つありました。 メモリアルには2つの翼があり、ひとつはまさにスターリン主義とソビエト時代全体の犯罪を調査していました。もうひとつは、人権問題に積極的だったのですが、どちらも閉鎖されました。 ペレストロイカの絶頂期、高い期待の中で設立されたのです。どんなに厳しい状況でもメモリアルが働き続ける限り、80年代後半から90年代前半に生まれた制度や民主主義の原動力は、まだ生き残っているのだと個人的には私はいつも感じていました。 しかし、今、その残り火が消えつつあるのは明らかです。

AARON MATÉ: それから、ウクライナの国内弾圧に関してですが、最近ゼレンスキーが多くの野党を禁止しました。 いずれも左派に傾くか、ロシアとの交渉に賛成する政党ばかりだと思います。 極右政党やアゾフ大隊などの民兵は禁止しませんでした。

ウクライナ国内で今行われている、政府の反対者、特にロシアとの交渉に賛成する人々に対する、弾圧の度合いについて教えてください。 最近、私の同僚がThe Grayzoneに寄稿した記事で、人道的物資の提供に関してロシア軍と協力した、または協力をサポートしたウクライナの市長が何人もいて、彼らが死体で発見されたり、他の人々が検挙されて拘束されたりしているという話があります。そのことについて、何かお聞かせ願えますか?

RICHARD SAKWA: はい。 数週間前、11の野党が禁止されました。 そして当然、このすべての主人公はヴィクトル・メドヴェチュクです。興味深いことに、他のイベントが行われたまさにその日、彼は突然現れました。 彼は殴られていたようです。 非常に状態が悪かった。ヴィクトル・メドヴェチュクはもちろん主要野党(生活のための野党プラットフォーム)、野党ブロックのリーダーで、2021年末に自宅軟禁状態に置かれていました。前大統領のポロシェンコは、事実上の裏切り者、古い言葉で言えば反革命分子だと宣言されました。

で、あなた方は正しいです。その《Grayzone》の記事は、2014年以来続いていることの継続と激化を正確に示しており、魅力的な記事です。つまり、ウクライナの政治の中心全体、あるいはスペクトラムが、これらの大隊によって右に引っ張られているということです。しかし絶えず人々は「いいか、奴らは前回の選挙ではたった2%しか取れなかったんだ」と主張します。 2019年4月の大統領選挙と同年末の国会議員選挙です。でもある意味それがまさに悪い兆候です。彼らの急進的なナショナリズムの考え方が、社会全体に蔓延しているからです。私が主張し続けるように、戦争までは、ウクライナの人々の圧倒的な感情は平和を求めていたのです。そのため、2019年4月に73%が、ゼレンスキーに投票しました。残念ながら彼は前任者と同様に、これらの過激な大隊に耐えることができず、立ち向かうことができませんでした。 つまり、数の上では、ナチスに染まっている人の比率は比較的少ないかもしれませんが、そのエートスが重要な問題であるということです。そして国家警備隊に吸収されるということは、絶対にそういう意味を持つことになります。

それと、ウクライナ軍によって奪還された後、ブチャで何が起こったのかはわかりません。ロシア軍は3月30日に去り、2日後にこのような虐殺の発表があったと思います。さて、これらの大隊のいくつかが入ってきて、町を占領している間にロシア人と一緒に働いていた人を清掃し、浄化を始める、と宣言したことを私たちは知っています。今、私には一方にも他方にも証拠がありません。しかし、これがロシア軍による殺害であるという標準的な見解に疑問を投げかけるかなりの証拠はあります。わたしが言っているのは、もちろん、ロシアの占領が完全に暴力なしだったということではありません。しかし、これらの衛星写真もやはり疑問視されるのです。自動車などに対する体の位置やもろもろです。誰が知っていると?  戦争犯罪は、戦争犯罪ですから、独立した調査が必要です。 民間人を殺すことは誰であれどんな状況であれ許されません。

これはもちろん問題のうちの一つです。 そうです、報復はあったのです。 マリウポルの全住民は戦い、ロシアが何度か人道的回廊のドアを開けていたものの、それは、これらの民兵によってブロックされたと主張することができるでしょう。 というのも、基本的に国家警備隊とアゾフ大隊がそこで最悪の戦闘を行っていて、アゾフスタル(巨大な冶金工場で8階まである)に足止めを招き、彼らは降伏を拒否していますから。

そしてもちろん、多くの目撃者がすべての女性は避難したと言っているので、産科病院の爆撃でさえ疑わしいものです。女性だけでなく、すべての人々、職員が避難しました—―それは小さな丘の上にあり、大隊にとって理想的な位置でしたが、食べ物も含めてでした。彼らはそこにいる人々から食べ物を盗んだのです 。 繰り返しますが、独立した調査が必要です。 私には独立した情報源はなく、異なるバージョンだけがあるのですが、もちろん、それがこの戦争の特徴の1つです。

AARON MATÉ: 今の報道を見ていると、アゾフ大隊の記述のされ方すら興味深いです。 《ニューヨーク・タイムズ》紙はかつて、アゾフ大隊をネオナチの準軍事組織と表現していました。 今では「ネオナチ」は消え、タイムズ紙の紙面から消え、極右組織あるいは右翼組織と表現されるようになりました。 それについてどう思われますか?

RICHARD SAKWA: ええ、それは大きな文脈の一部です。『敵の敵は味方』、どんなに悪趣味で不愉快な相手でもです。そしてもちろん、それは2014年以降のウクライナのエピソード全体の災害を特徴づけており、言ってみればウクライナは明らかに双方の代理戦争の一部でした。冷戦終結後の未解決の問題を解決するための戦場となったのです。ソヴィエト国際主義の「われわれは中国的である」バージョンがある一方で、リベラルな覇権主義バージョンがあり、これはNATOが推進しており、NATOの人権アジェンダはもちろんそれを遵守していれば卓越しているのですが、それにおいてアジェンダは普遍的なものであり、それに逆らう者は、単なる勘違いではなく、根本的な悪となります。

そして、これらすべての根底にあるのは、私が「第二次冷戦」と呼んでいる文化なのです。 今、実際に全面的な戦い、あるいは代理戦争となり、ウクライナは、代理戦争の古いモデルにぴったり当てはまります。ベトナムやさらに以前の朝鮮半島のように、主役たちは直接的な衝突を避けようとしますが、しかし、武器を積んでそれぞれの側を支えます、私が言うように、同盟国がいかに悪質であったとしてもです。 もちろん、あなたはそれを見て見ぬふりをするのです。もちろん、イエメンや他の場所での中東の潜在的な戦闘戦争の多くもそれを乗り越えていると言えます。これは、現時点でウクライナの紛争よりも多くの点で野蛮で壊滅的です。恐ろしいことです。

AARON MATÉ: シリアでの戦争の歴史を振り返る記事を発表したばかりですが、シリアとウクライナの代理戦争との類似点をいくつか挙げています。 その1つは、米国は基本的に、紛争地域に武器が溢れてその武器の行き先を追跡できないという懸念を看過しているということです。 シリアの場合、アメリカから来た武器は結局アルカイダやISISの手に渡った。そして今、CNNでは『ウクライナに送られた武器はどうなるのか』という見出しが立っています。 『アメリカは本当に知らない』という見出しです。

RICHARD SAKWA: そうですね、インターネットをスクロールしていると、西側から鹵獲した兵器の写真がたくさんあります。スティンガー、ジャベリン、イギリス製の対戦車兵器NLAWは、もちろん鹵獲したものですが、戦場で特に良い働きをしなかったことが、興味深いところです。

また、リビアに例えることもできます。リビアでは政権の崩壊と武器の大洪水を経験し、今ではサヘル地域全体で戦争に火をつけることになったのです。紛争がウクライナ内に封じ込められれば幸運です。 ベルゴロド近郊やロシア国内の石油施設への攻撃はすでに見られます。

そして、あり得ることで、NATO領域内の補給線は正当な標的になりうると警告されています。このためにリヴィウも攻撃したのです。そこは積み替え地点だから。私達は運がいい。ここには空間的なエスカレーションだけでなく もちろん 核の梯子の下段へのエスカレーションもあるわけです。もしどちらかが全滅して、ロシアがそうなるかはわかりませんが、核ドクトリンは、国が存在的に脅かされている場合、核兵器を…... 。したがって、空間的および水平的の両方の観点から危険性は非常に大きいです。

AARON MATÉ: ゼレンスキーについてお聞きします。 彼が英雄的人物、現代のチャーチルとして描かれていることについてあなたのお考えを知りたいです。 また、彼が和平実現という選挙公約を果たすことにどれほど真剣だったと評価できるでしょうか。

人々はこれを忘れていますが、2019年に彼は投票の70%以上という圧倒的な任務で選出され、彼の約束はドンバスでの戦争を終わらせるために平和を作ることであり、彼はそれに対して政治的費用を支払うことさえ誓いました。しかし、その後何が起こったのか、彼は入るなり、すぐに極右からの脅威に直面しました。 極右は彼に、「あなたが、ロシアの支援を受けた反政府勢力と和解すれば、私たちはあなたの政府を転覆させる」と言ったのです。中には、「お前の人生を終わらせてやる」と言う者さえいました。そして、彼が当選した直後、私はニューヨーク大学とプリンストン大学の故スティーブン・F・コーエン博士にインタビューしましたが、彼は、米国がゼレンスキーの平和委任を支持しない限り、極右が彼を圧倒するだけで、彼がドンバスでの戦争を終わらせることはできないと言ってました。

(スティーブン・F・コーエン博士のインタビュー録画)
[ 今、あまり理解されていないようですが、ウクライナの新大統領のゼレンスキーは和平派として立候補しました。

これは少し難しいですし、あなたの世代にとってはそれほど意味がないかもしれませんが、彼は一種のジョージ・マクガバン・キャンペーンを実行しました。違いは、マクガバンが全滅し、ゼレンスキーが勝ったことです。たしか71〜72パーセントでしたか。彼は平和を作るという大きな使命を勝ち取りました。ということは、プーチン大統領と交渉しなければならないわけですが、いろいろなフォーマットがありますね? いわゆるミンスク合意というのがあって、これはドイツとフランスが絡んでいます。プーチンと直接的な二国間関係がある。 しかし、彼の意欲――これが重要なのですが、ここではあまり報道されていません――は、前任者のポロシェンコが何らかの理由でしなかったあるいはできなかった、プーチンと直接取引する意欲であり、実はかなりの大胆さが要求されましたし、ウクライナにはこれに対する反対者がいて、彼らは武装しているのです。ファシストだと言う人もいますが、超国家主義者であることは確かで、ゼレンスキーがプーチンと交渉するこの路線を続けるなら、排除して殺すと言っているのです。

で、今度はトランプが登場するわけですね。 で、トランプはバイデンや情報に関してゼレンスキーに間違った電話をかけるんです。それは間違ったことで、別の見方をする余地はありません。が、もっと重要なことで、完全なトランスクリプトを私が見たい理由でもありますが、私の知る限り私たちは部分的なものしか与えられていないわけですが、トランプが、ゼレンスキーにプーチンとの交渉を続けるように勧めたかどうかを知りたいのです。その理由は次のとおりです。 私が説明したように、ゼレンスキーは前進できません。 つまり、彼の人生は、ウクライナでの狂ったファシスト運動によって文字通り脅かされています。 米国が後押ししない限り、ロシア、プーチンとの完全な和平交渉を進めることもできません。 それだけでは不十分だとしても、ホワイトハウスがこの外交を後押ししない限り、ゼレンスキーに終戦交渉のチャンスはありません。そういうわけで賭け金が異常に高い。]

AARON MATÉ: もちろん、米国の政策選択はよく知られています。彼らはウクライナに武器を流し続けました。 彼らはドンバスでの戦争の終結を望んでいなかったと言えるのではないでしょうか。しかし、アゾフ大隊にも資金を提供しているオリガルヒに支えられていたことを考えると、ゼレンスキー自身について、あなたの考えに興味があります。アゾフ大隊はドンバス戦争の主要な参加者の1人であり、ロシアとの平和に非常に反対しています。 ゼレンスキーは平和を作ること、実際に選挙の任務を遂行することについて真剣に取り組んだと言えますか、それとも、彼は本物のステップを踏んだけれど、あまりにも無力で、それを完全に見通すことができなかったと考えますか?

RICHARD SAKWA:  彼は本物だったと思います。 平和への願いは、彼を支持した有権者の人々も、彼自身も、その時点では、彼の経歴やロシア語圏の出身であることなどを考えると、お互いに抱いていたのだと思います。その証拠に、2019年12月にパリでノルマンディーフォーマットの会談をプーチンとしています。そしてもちろん、それを行ったと同時に、ミンスク合意を実現するためのシュタインマイヤー・フォーミュラがあり、ゼレンスキーはそれを考えていて参謀本部が会議を招集したのですから、要素はありました。あなたが言うように、彼は米国の支援も受けていませんでした。事実上、彼はEUの支援さえ受けていませんでした。これは非常に驚くべきことです。アンゲラ・メルケルとエマニュエル・マクロンは、話はしましたが、実際には何もしませんでした。彼らは、あのフランスのノルマンディーの会合に参加していたのですが、驚くほど何一つしませんでした。

ゼレンスキーについての結論はこうです。 私は個人的には、明らかに、彼が『サーバント オブ ザ ピープル』でコミカルな俳優を演じていたとき、とても楽しめました。良いショーでした。本当に愉快でした。 したがって、私たちは皆、人生は芸術よりも奇なりと、もしかしたらこの男なら理解してくれるかもしれないと思うような、この男に対するある種の共感を持っていたのです。2012年、2013年、2014年に彼のインタビューを見ると、彼はロシア語を流暢に操り、感動的に話しています。そう、彼は理解してくれた。 おやおや、彼はあなたのことを理解し、そして皮肉な知性を持っている、となった。

しかし、ゼレンスキーの悲劇は、彼が最終的に、独立した政治家になれなかったことです。彼はただ、そうなれなかっただけなんです。 彼は失敗したのです。 彼は平和を達成しようとしても失敗しました。 その点で私は、彼の最初の年に彼を全面的に評価しますが、彼は失敗したのです。そして、今、ゼレンスキーに向けられる称賛は、根本的に方向性を誤っていると私は思います。 ゼレンスキーはまともな政治家ではない。 彼はそうではない。 彼は最も壮大なスケールの失敗作です。もし、彼にまじめな政治家としての資質やリーダーシップのかけらでもあれば、この戦争を簡単に回避したでしょう。 彼は米国から際限なく警告されていたと米国は言っています。私たちは公共の情報を知っていますが、伝えられているところによると米国とおそらく英国も、諜報部の情報を持っていました。 今や私たちは皆、そのインテリジェンス情報が価値のあるものになることを知っているわけです。 彼らはロシアの侵攻を警告し続けました。 彼らが何か情報を持っていれば、おそらくそれをゼレンスキーに与えたでしょうが、もちろん彼らがそうすることはなかったのです。ゼレンスキーは侵攻の前日まで侵攻はないと言っていたのですから。15万人あまりのロシア軍では、さほど手間取らなかったでしょう。

ウクライナの代理人を考慮に入れていないといって、皆さんは私を批判するかもしれません。イエス。あの時、私たちは、和平交渉の強制執行という点で、もっと代理人を見られたらよかったのです。NATOとロシア、米国とロシアの平和条約――欧州の平和条約が、2021年12月からテーブルの上に置かれていました。 この議論の中で、ウクライナはどこにいたのでしょうか? あの時、ゼレンスキーは「いいか、解決しよう」と――私は期待し続けましたが、なぜ言わなかったのでしょうか。そうしないなら、彼がしなければならなかったのは5つの言葉だけでした。それはいずれにせよすぐには実現しないと彼はわかっていたことです。「ウクライナは NATOに 加盟 し ない」。それが彼が言わなければならなかったすべてです。プーチンがハッタリをかましたのなら、ハッタリをかませばいいのですが、そうでないからこの破滅的な戦争が起こったのです。 つまり、私たちは、政治家ではない人物を抱えているということです。

そして、今日の演説、賞賛とスタンディング・オベーションが与えられる彼の終わりのない演説を読むと、それらは最悪のデマゴギーとポピュリズムであると言わざるを得ません。実際私はそれらを不愉快に思っています。 読むに堪えません。 私は彼の演説をたくさん読みました。戦争が始まる数日前のミュンヘン安全保障会議での演説もそうです。原始的な憎しみに満ち、暴力的な分断の言葉で埋め尽くされているという意味で、ひどいものです。あの男の体には政治家らしい骨がない。だからこそ彼はこの戦争を見ることを望んでいるのです。彼が責任者である限りこの戦争は続くでしょう。彼が平和の議題について話し始めたときも、たちまちそれはトリックでしたから。「よし、ウクライナの中立的地位を確保しよう。ただし、国民投票にかけなければならない」と言ったのですから。それの結果は、それがどうなるかは誰が知っているんですか? だからそれすらも誠意がない。 だから私は称賛の意見に共感できません。 もちろん、国は攻撃を受けていて、彼はとても勇敢に行動しています。しかし、あなたも言うとおり、単に武器を増やせというのではなく、彼は今、国民の苦しみを救うために、米国に和平を仲介するよう求めるべきです。ある意味、彼が賞賛されることに私はとても腹が立っています。それでも、この屍には.....明らかにロシアが第一の責任を負っています。侵略側、攻撃側です。しかし、一方で、これが人々が常に求めていることであるならば、このすべてにウクライナの代理人を少し入れるといいのです。

AARON MATÉ: 複数のレベルで、戦争を防ぐことができたかもしれない政策のあらゆる点で、彼はそれをすることに興味がなかったようです。ミンスク合意の履行に関する最終ラウンドの協議がありましたが、ウクライナ政府はロシアが後ろ盾する反政府勢力の代表とさえ話すことを拒否しました。ウォールストリート・ジャーナル紙は最近これを報じました。2月19日、ドイツのショルツ首相はゼレンスキーに、ウクライナが「より広いヨーロッパの安全保障協定の一部として、NATOの野望を放棄し中立を宣言する」ことを提案しましたが、プーチンとバイデンの両者がショルツの提案に従って署名したものの、ゼレンスキーはノーと言ったと。

RICHARD SAKWA: そう、そのとおりです。だから、彼はこの戦争に大きな責任を負っているのです。 これは私の例えですが、前にも言ったかもしれませんが、チェーホフの戯曲のようなものです。第1幕で壁にピストルが掛っていれば、第5幕までには必ず発射されているはずです。 この場合、引き金を引いたのはプーチンですが、壁にピストルを掛けたのは誰でしょう?  そのピストルが使われる状況をつくったのは誰なのか。その責任は、ゼレンスキーに大きく負っていると思います。 それはほとんど...…一国の運命、とりわけ彼自身の民族の運命に対して軽薄な態度でした。

AARON MATÉ: あなたは、ドンバスの反乱軍支配地域に対してウクライナの攻撃があり、それを阻止するために先制介入しなければならなかったというロシアの主張を裏付ける証拠を見たことがありますか?

RICHARD SAKWA: さて、この問題は、欧米のメディアがそのような介入の可能性を否定することに独特の激しさが感じがられる問題の一つであると言わざるを得ないでしょう。 ゼレンスキーは「ノー」と言い、その考えを否定します。 しかし、そう簡単に否定されるものではありません。

ロシアが侵攻する前の1週間、ドネツク――ウクライナの自治区ですが、そこでは激しい砲撃が行われたことが分かっています。ドネツク市もですし、それだけではありません。さらにそれ以上に、ウクライナは...... 数字にばらつきがあるのですが、一時は10万人以上と言われましたが、私は6万人に近い精鋭部隊だったと思います。そして、これらはロシアが付いているドンバスの戦闘を戦っている連中で、彼らは、掘って掘って、斜線陣の、深い深い塹壕で、厳しいポジションをとります。軍隊としてそういう種類のものです。 あなたが言うように、ゼレンスキーは自国民と話すことを拒否したため、それが選択肢であることは非常に明白でした。ミンスクの全体的なポイントというのは、この人たちは同じ国民だというキエフにおける信であり、まさに、ミンスクの全体的な考え方は、この人たちは分離を目指したわけではないというものです。それゆえ、語弊があるわけです。 彼らはウクライナ国内での自治権を望んでいたのです。それはもちろん、事態が進むにつれて浮上した問題で、良い論文が論じていましたが、私は彼らを自治派(オートノミスト)と呼ぶべきだと思います。そして、ゼレンスキーは、このような人々と話をするための自律性を欠いていたということが、またもや事実です。 というのも、明らかに彼は、あなたがおっしゃるように、オリガルヒや、特に彼の後ろ盾であるイホル・コロモイスキーから、また、これらの軍事組織や半国家主義組織から非難を浴びることになったはずです。だから彼はやる気がないのです。つまり、彼はドンバスに行き、するとその時、権力たちがこう言いました。「NO。これらの人々と話をしないでください。あなたは裏切りの罪で告発されるでしょう、そして私たちはあなたに対して別のマイダンを持っていますよ」。まあ、つまり、私たちが知っているように、その時点で彼は後退しました。

で、もうひとつだけ言わせてください。明らかに、この戦争の文脈は、アゼルバイジャンがこの攻撃を受けた2020年のナゴルノカラバフ戦争です。トルコから供給されたドローンがドンバスの自治派に対して使用されたことを私たちは知っています。つまり、明らかに、攻撃をかける差し迫った即時の計画はないと、おそらくゼレンスキーは正しかった。それは常に可能性でした。6万人もの軍隊が重砲を持ち、深い堀の中に入って、いったい何をしていたのでしょうか? しかも、彼らは最終的には休日にはそこにいませんでした。

AARON MATÉ: とすると、欧州内でこの状況を打破できる勢力はあるのでしょうか? 明らかに、米国は自分の政策に固執しており、外交に関心がないようです。 そのことは非常に明白です。 今、ヨーロッパ内に、ロシアと対話し、ロシアの懸念を真摯に受け止め、現実的な交渉を行うことができるような勢力はあるのでしょうか?

RICHARD SAKWA:  NO。まったくだめです。従来の対話者は全員失格したのです。 もちろんドイツ、特にショルツは常に対モスクワにおける「オステオポリティック」とエンゲージメントの代表者だったのですが、それがなくなったのは、とりわけ今日のベルリンの連立政権の性格が影響しています。そして、フランス、マクロンは今週の日曜日に選挙に出馬します。 もちろん、その後の第2ラウンド。 おそらくマクロンはもっとイニシアチブを行使できるでしょうが、結局彼もEUに制約されていると思います。そして、覚えているでしょうか、アンゲラ・メルケルとマクロンは2021年6月に、EUが正直なブローカーとして行使し行動することができるかもしれない会議をうまく運ぼうとしました。しかし、ポーランドやラトビア、バルト三国の反対で却下されました。つまり、EUの中にこうした有権者がいるわけです。そして、欧州委員会やウルスラ・フォン・デア・ライエン、ジョセップ・ボレル(フォンテルス)外務委員は実際に、後者は、「これは戦場で決まる」と言ったのです。言い換えると、ジ・エンドまで戦闘だと。

欧州はこの戦争で自滅しました。 生き残りはするでしょう。 その統一性もろもろといった際限のない話とか。 欧州平和プロジェクトの勝利とでも言ってほしいでしょうか、炎の中、廃墟の中で。 だから、ノーだ。 そしてもちろん、英国は武器を積み重ねているだけ、英国の政策は基本的に、結果に関係なく、重要であるように見せることです。いいえ、唯一の可能性は外部からの力です。 トルコ、エルドアンはプーチンと良好な関係にあり、NATO加盟国なので、一定の信頼性があります。 また、明らかに、中国です。欧州がこの混乱から抜け出すには、あるいはユーロ・アトランティックゾーンがこの混乱から抜け出すには、最終的には中国を通すしかないのです。そしておそらく、最近最も興味深いのは、中国とインドが外相を交換し、互いに訪問し、近年、ヒマラヤ山脈の高地にある境界線での戦いにもかかわらず、アジアで起こっている並外れた和解の行方です。言ってみれば、欧州は、欧州以外の力によって自分自身から救われなければなりません。 これは、冷戦後だけでなく1945年以降の戦後全体の破局で、最も壮大な性質の平和秩序の失敗であり、ヨーロッパの主体性の欠如であると言わざるを得ません。

さて、あなたは私が何年にもわたって汎大陸のビジョンについて議論してきたことを知っているかもしれません。 これは…ゴルバチョフ的な「欧州共同体」構想と呼ぶことができますが、それよりも深いです。 これは、ある種の汎ヨーロッパの理想である、欧州のドゴール主義の考えです。もちろんアメリカでは通用しません。もちろん、シャルル・ド・ゴールだけでなく、フランソワ・ミッテランもそうでした。 そして、私はいつもこう言ってきました。これが進むべき道だと。EUを排除するものではありませんが、それが可能にするもの、そして私が長年にわたって主張してきたことは、ポーランドや東方の革命的勢力を吸収した事実によってあらゆる点で機能不全に陥っているEUの制度的拡大だけではなく、私たちに必要だったのはデイヴィッド・ミトラニーの機能(国際関係における機能主義理論の創始者)に基づく真の平和秩序だということなのです。つまり、あるレベル、例えば真のエネルギーパートナーシップを構築し、新機能主義で信頼を築き、徐々にラインを構築していくのです。 しかし、決して実現しませんでした。この真の機能主義者の平和秩序というアジェンダは。冷戦後の1989年以降、ブリュッセルとワシントンが主導する純粋に制度的な意味での平和構築の試みは、失敗したのです。この戦争の後、機能主義の原則に基づいた真に新しい平和秩序を確立する必要があるかもしれません...それはEUの外でなければならないでしょう。ウルスラ・フォン・デア・ライエンが彼女自ら示したものは、この戦争に関しては、惨憺たる悲惨なリーダーシップだったわけです。EUが紛争状況において米国の下位に位置することを証明するために、まさに煽り立て、行動してきただけです。このことは、3月21日にEUが採択した(安全保障と防衛に関する)戦略的羅針盤に反映されているといえます。

AARON MATÉ: また、欧州の世論と欧州の指導者の政策の関係について、コメントをいただけますか? ウクライナの代理戦争のためにエネルギーコストや食費を極端に犠牲にし、基本的にロシアを制裁することに大きな支持が得られている国を探してみましたが、私はまだ見たことがありません。私が間違っているかもしれませんが。

RICHARD SAKWA: いいえ。でも世論は、もちろん英国ではメディアはひたすら......いや、情報を提供するものではなかったが、メディアの影響を大きく受けていると思います。感情的で、もちろん悲劇的、 明らかにそれらの範囲のことではあります。ヨーロッパにおける人間の悲劇は1945年以来見たことのない規模になっています。 90年代のバルカン半島では、程度の差こそあれ、もちろんそのような事態を経験しましたから、それは理解できます。

最も気がかりなのは、私がずっと考えていることなのですが、平和運動はどこに行ってしまったのでしょうか? 私は反戦運動に関わってきましたが、面白いことに、私たち、ジェレミー・コービン(英国の国会議員)やダイアン・アボットなどもですが、定期的に非難されるのです。さらに悪いのは、イギリスの労働党のリーダーであるキア・スターマーが驚くべきことを発表したのです。それは、反NATO感情と労働党のメンバーシップが両立しないというものです。今、そして戦後のアトリー政権で労働党が1949年にNATOに加盟したときでさえも、決してそんなことはありません。反対する声はたくさんあり、その後も、マイケル・フット派、トニー・ベン派、そしてジェレミー・コービン派と、さまざまな声がありました。労働党は今やネオ・ドグマチックな党派になりつつあります。そのことは今後数年間、投票所に反映されるでしょう。

AARON MATÉ: さて、リチャード・サクワさん、最後になりますが、この戦争が3ヶ月目に入るにあたり、人々が考えるべきことは何でしょうか?

RICHARD SAKWA: つまり、これは単に緩和されていない大惨事ですが、人々はすべてをなすべきだと思います......…どうしてこうなったのか、人のせいにするだけではダメだということを理解しなければならないのはもちろんです。プーチンは引き金を引いた、そして彼はその責任を負っている。 しかし、ロシアも苦しんでいるのです。この全面的な、ロシアに対する、国民に対する、経済戦争。 非常に不愉快です。 ロシア人の集団的罪悪という考え方は。

これは、ご存知のように、国際法がこの件に関して多く言及しており、カトリックの社会哲学もそうですし、そして基本的に、ジュネーブ条約では、戦時中に住民の身代金を要求してはならないことになっています。でもこれが今起こっていることなのです。単純なことです。 私の友人はモスクワに戻れない。 飛行機がないんだ。 信じられん話だ。レベルが…...これまでに10種類の制裁措置がありましたが、それぞれが一つずつあって、彼らがボタンをどこまで押したかという、ある種のコントロールパネルがあるとします。すると、米国は10個のボタンすべてを極限まで押すように要求しているんです。 米国と英国と言うべきです、さらには、EUと言うべきですが、10個のボタン全てを押しているのです。金融の話、貿易の話、飛行機の話、これらすべての話、個人の移動、教育交流、すべてがほぼ最大限に押し進められました。 こんなことは見たことがありません。

また、ロシアの意見は分かれています。 明らかに激しい弾圧があると言う人もいるかもしれません。 さて、もしあなたが職を失うことになれば、そこで大規模な反戦運動を期待することはできません。 しかし、これは光の瞬間なのです。私たちは耐えることができるはずの社会的な力だからです。それが私の最初のポイントです。

二つ目のポイントは、この異常な軍国主義の発露です。そう、これが反戦運動です。 侵略を非難する。 戦争を非難する。条件を理解する。しかし、私たちがしなければならないのは、明らかに出口を見つけることです。出口を見つける唯一の方法は、言うなれば、入り口を調べることです。というのも、そうすれば文脈を説明できるのに、それができていないのです。

社会運動もあります。あなたはこう言いたいかもしれません。「この中で左翼はどこにいるんだ?」すると、ほとんど、ええ、無視できるほどです。しかし、私たちのさまざまな会議では、まだ残留しています。私の住む小さな町カンタベリーでは、200人がウエストゲート・ガーデンズからデーン・ジョン・ガーデンズまで行進しましたが、興味深いほどまったく、地元の新聞『Kentish Gazette』には記事が掲載されませんでした。ただ驚くばかりです。でもウクライナの皇帝のことはいちいちカバーされていましたし、それはまあいいです。というか、彼らがそれらをするのを見るのは、私は気に入っていますしよかったのです。しかし、それは、選択的な性格というものです。これが三つ目のポイントだと思います。

ロシアゲートの時もそうでしたが、情報機関の役割、飼いならされたジャーナリストに選択的に情報を流し、それをパブリックドメインに落とし込むやり方、それから果てしないエコーチェンバーなど、メディアの報道はひどいものです。悪いです。残念なことを言わなければなりませんが、最終的に、おそらく私たちのような人々の声が聞かれるようになるまで、もっともっと悪くなるのではないかと恐れています。 本当に、私たちは平和への道筋を見つけなければなりません。

AARON MATÉ:  まったくです。 ロシアゲートといえば、ジョン・ダーラムの調査から、ロシアゲートの詐欺が何であったのか、さらに暴露する展開が続いています。しかし、これらの動きは、もちろん、ウクライナでの戦争によって影が薄くなっています。戦争が終われば、できればすぐに、これらの動きについて話すことができるのですが。ロシアゲートは、今日ウクライナでこの混乱に陥っている理由を説明するのに非常に役立ちます。

リチャード・サクワさん、お時間とご見識に本当に感謝しています。リチャード・サクワ氏はケント大学の教授であり、ご専門はロシアとヨーロッパの政治学です。著書に『最前線ウクライナ : 国境地帯の危機』など、最新作は『欺瞞: ロシアゲートと新たな冷戦』です。リチャード、ありがとうございました。

RICHARD SAKWA: どういたしまして、ありがとうございました。

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