「マイム・マイム」考
日本の学校では、体育やレクリエーションなどの時間にフォークダンスを踊ることがある。その代表的なものといえば「マイム・マイム」だろう。
「マイム・マイム」はイスラエルが発祥の踊りで、「マイム」はヘブライ語の「水」を意味する。
サビの部分の
「マイム・マイム・マイム・マイム
ミィ・マイム・ベサソン!」
は、
「水・水・水・水
水が出て うれしいな!」
という意味になるのだそうだ。
イスラエルの開拓農民たちが、砂漠地帯で水源を発見したときの喜びを歌と踊りで表現したのが、この「マイム・マイム」なのである。
・・・ということを私が知ったのは、教員生活の後半になってからだった。
私が初任者として勤務した小学校では、毎年、5年生が夏季休業中に1泊2日の林間学校を行っていた。
例年、その1日目の夜には屋外でキャンプファイヤーを行うのだが、そのプログラムのなかで恒例となっていたのが、終盤に全員で「マイム・マイム」を踊ることだった。
炎を囲んで手をつなぎ、全員で歌い踊れば雰囲気は大いに盛り上がる。キャンプファイヤーのクライマックスともいえる場面になっていたのだ。
当時はそのことに何の違和感も覚えず、私自身が5年生の担任をしたときも、
「キャンプファイヤーといえば『マイム・マイム』でしょう!」
という調子だったように思う。
そればかりか転勤後の次の学校でも、キャンプファイヤーのプログラムに「マイム・マイム」を取り入れていたのだ。
・・・しかしながら、この踊りの由来を知ってしまうと「汗顔の至り」である。
なにしろ、「水を囲む」のと「火を囲む」のとでは世界観が真逆なのである。まるで『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウが、最初から最後まで陸上で冒険し、一度も船に乗らないようなものだ。
知らなかったとはいえ、当時の子どもたちには謝るしかない。「水に流して」というのは虫がよすぎるだろう。
・・・そして、こういう「知らなかったとはいえ」ということが、実は他にもあるのではないかと想像すると背筋が寒くなるのである。
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