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17日間の「推し活」

「きのう、Iさんに会いました!」

 女子学生のAさんが興奮気味に報告をしてくれた。Iさんとは、今回の東京都知事選挙の候補者の一人である。

 30代の若さで中国地方にある都市の市長に当選したということや、市長時代に年配議員や新聞記者を論破する様子がYouTubeで話題になっていたということは私も知っている。

「降りた駅のすぐ近くで、たまたま街頭演説をやってたんです。友達に写真も撮ってもらいました」
 と言って、選挙カーの上で演説をするI氏をバックに、満面の笑みを浮かべている彼女の写真を見せてくれた。

「Iさんは教育にも力を入れているんですよね。聞いていて感動しました!」

 たしかに、I氏は教育への「投資」を公約に掲げているようだ。

「本当はもっと近くで演説を聞きたかったんですけど、前のほうは中年の女性たちが場所を占めていて・・・」

 どうやら選挙カーに近い最前列は、「純烈」のコンサートのような様相を呈していたらしい。こうした熱狂的な支持者のなかには、おそらくタクシーでI氏の「追っかけ」をしている方もいるに違いない。こうなると、選挙の応援というよりも「推し活」である。

 しかし、アイドルのコンサートを観るためには高額のチケットが必要だが、選挙演説ならば無料である。握手だって、CDに封入された応募券がなくても、運がよければできるかもしれない。

「もう一度、Iさんの演説を聞きたいです!」

 どうやら、Aさんは本気らしい。だが、これはいいことだと思う。この17日間の選挙期間は、身をもって選挙制度や民主主義というものを学ぶよい機会になることだろう。

 選挙ポスター掲示板の権利を売り買いするような行為とは比べものにならない、ずっと健全な行動だと思う。

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