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「演繹的なアプローチ」と「帰納的なアプローチ」

 埼玉県議会に提出された児童虐待禁止の条例改正案が波紋を呼んでいる。

 この改正案は、子どもの放置による悲惨な事件が相次いでいることなどから、自民党県議団が10月4日に県議会へ提出したものだ。具体的には、保護者などに対して子どもを自宅などに残したまま外出したり放置したりすることを児童虐待と位置づけて禁止するとしている。

 しかし、
「これでは子どもたちだけで公園で遊ばせることも虐待になってしまう」
「ゴミを収集場所に捨てにいくときにも子どもを同伴しなければならないのか」
「一人親の場合は失業を覚悟しなければならない」
 等々と、子育て世代を中心に猛反発が起きているのだ。


 目的に向って実践をするときには、大きく分けて2つのアプローチの仕方がある。
 1つ目は「演繹的なアプローチ」だ。
 早期に実現しなければならない明確な目的がある場合には、こうしたアプローチが取られることが多い。

演繹的なアプローチ

 2つ目は「帰納的なアプローチ」である。
 漠然とした目的はあるものの、個別に実践が行われているケースである。

帰納的なアプローチ

 今回の埼玉県の場合は、前者の「演繹的なアプローチ」だといえるだろう。たしかに、児童虐待を禁止するという目的そのものに反対する人は誰もいないだろうし、早期に解決を図らなければならない切実な問題でもある。
 けれども、それを実践に移す際の事前調査や想像力が、あまりにも欠けていたのではないかと言わざるを得ない。

 だが、もう一方の「帰納的なアプローチ」にも欠点はある。最終的なゴール(目的)が共有されていなかったり、実践同士に関連性や連携が乏しかったりして、頓挫してしまうことも少なくないと思われる。


 要は、この2つのアプローチをバランスよく融合させていくことだろう。児童虐待防止のように複雑な社会問題であればなおさらのことだ。

 埼玉県の条例改正案は10月13日の県議会本会議で採決されることになっているという。今後の動向を注視したい。

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