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「会議は踊る。されど進まず」(後編)

 前々回と前回の記事では、給特法の維持に一貫して反対してきた立教大学・中原淳教授による X(Twitter)の投稿を紹介し、その指摘について補足をしてきた。

 もちろん、この投稿は給特法の在り方などについて審議する中教審の特別部会(第12回)の内容を踏まえたものである。

X(Twitter)より

 かつて私が勤めていた教育委員会の事務局には、文部科学省との人事交流制度があった。同省からの出向者は、それぞれが高い能力と意欲をもつ方々ばかりで、一緒に仕事をしていて学ぶことが多かったものだ。

 また、中教審の特別部会の委員の中には、私が尊敬してきた研究者や実践家の方たちが多く含まれている。

 それにもかかわらず、財務省との力関係を前にして勝負を諦めてしまったのか、政権与党の意向に忖度をしたのか、「出来レース」や「消化試合」としか形容のしようがない審議内容だった。

 オンラインで傍聴をしていて、多くの人々の命、人生、未来がかかっていたはずの審議に、熱意が感じられなかったのは残念だとしか言いようがない。


 3回連続で書いてきたこのテーマのタイトル「会議は踊る。されど進まず」は、前々回にも書いたように次のようなエピソードに由来する。

 1814年~15年にかけて、オーストリアの首都で「ウィーン会議」が開催された。その目的は、フランス革命とナポレオンの対外進出によって混乱したヨーロッパ社会の秩序を再建することにあった。

 だが、参加国の元首や大使たちは舞踏会への出席と水面下での駆け引きに明け暮れ、会議は一向に進まない。

「会議は踊る。されど進まず」
 という言葉は、その様子に業を煮やしたフランスの代表タレーランが、皮肉を込めて放った言葉だといわれている。

 今回の中教審・特別部会の関係者たちは、自分たちの意思に反して踊らされ、審議を「結論ありき」で進めざるを得なかったようにも見受けられる。厳しい言い方かもしれないが、茶番という点では「ウイーン会議」と五十歩百歩だろう。

 中原教授によるこの X(Twitter)の投稿は次の一文で締めくくられている。
 教育改革を「改革」することが必要。

 長時間労働に苦しむ現職の教員たちのために
 これから教員になろうとする若者たちのために
 現在、学校で学んでいる子どもたちのため、そして、これから学ぶであろう子どもたちのために

 今こそ、真剣に教育改革を進めることが必要なのではないだろうか。

 無論、
「教育改革について真剣に検討をするため、中教審にその特別部会を設けます」
 というのであれば、それはブラックジョークでしかない。

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