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「VR・メタバース」体験会

 東京学芸大学では、学校教育での「VR・メタバース」の活用に向けた研究に取り組んでいる。

 今年6月には横浜市教育委員会の花咲研修室を訪問し、教育委員会の関係者に、
・メタバース上で行われているポスターセッションへの参加
・VRを使った「とび箱」「水泳」「ハードル走」などの体験
 をしてもらった。

 昨日(12月21日)は、この研究プロジェクトの中心メンバーである鈴木直樹准教授をはじめ、関連企業の関係者も含めた6名で再び花咲研修室を訪問した。

 今回の訪問の目的は、ある市立中学校の校長先生や教員の皆さんに、メタバース上での「授業研究会」や「研究協議」を体験してもらうことである。

 ちなみに、今回参加した先生方(6名)は、いずれも「VR・メタバース」に関しては初体験だったそうだ。

 鈴木准教授から体験会のねらいなどについて説明を受けた後、早速、専用のゴーグル(Meta Quest 2)を一人一人に着用してもらった。

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 まずは、「360度動画再生VR」の技術を使って、体育科の授業を「参観」してもらうことになった。

 まだ中学校用のコンテンツがないため、この日は小学校の体育科の授業を観てもらったのだが、参加者の中に保健体育科の教員がいたこともあって、
・児童の運動技能
・場の設定
・学習資料
・子ども同士の関わり
・教師の支援
 など、中学校の授業との違いを踏まえながら、様々な視点から意見が交わされていた。

 通常、体育科の公開授業の場合、参観者は教師や児童生徒の邪魔にならないように、少し離れた場所から学習の様子を見ることになる。しかし、「VR・メタバース」の技術を用いれば、「すぐ近くから」「真上から」「子どもの目線で」「教師の目線で」等々、多面的・多角的に授業を見つめ、分析をすることが可能になるのだ。

 また、一般的な公開授業の場合だと、参観者同士の会話は「授業の妨げにならないように」と小声になってしまいがちだが、そうした遠慮をする必要もなくなるので、授業を見ながらの対話も活発になる。

 こうしたテクノロジーは、今後の授業研究の在り方に大きな変化をもたらすことになるだろう。さらに、遠隔地で公開授業が行われる場合にも、自校の勤務との兼ね合いや旅費・宿泊費のことなどを気にせずに「参加」をすることが可能になるのだ。

 授業が終わった後は、グループごとにいくつかの部屋に分かれて、授業を「参観」して気づいたことや感想などを話し合った。

 こうしたメタバース上での協議の場合、なかなか会話が弾まないこともある。しかし、今回は同じ中学校の同僚同士ということもあって、活発な研究協議が行われていた。

 また、普段の姿とは違う「アバター」同士による対話だったことも、参加した先生方にとっては新鮮だったようである。

 最後は全員で「集合」して、質疑応答をしたり、今後の活用方法などについて意見交換を行ったりした。


 現在のところ、東京学芸大学における「VR・メタバース」の活用に関する研究では、「小学校・体育科」での取組が先行している。しかし、すでに英語科のコンテンツ開発が進行中であるなど、様々な教科・校種での展開が期待されているところだ。

 今回の体験会では、成果とともにいくつかの課題も浮き彫りになった。特に、セキュリティの厳しい「教育系」のネットワークの場合、こうした民間ベースのテクノロジーを使用するためには様々な障壁があることがはっきりした。また、複数の人間が同時に「360度動画再生VR」などを使う場合には、大容量の通信に耐えうるだけの回線を確保する必要も生じる。

 こうした課題をクリアしながら、「学習での活用」「教員研修での活用」の両面から、さらに実践と研究を進めていきたい。

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