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「学校に行かない」という自由

 先日、文部科学省による「児童生徒の問題行動・不登校調査」の2022年度の結果が公表された。それによると、不登校の小中学生は過去最多の約29万9千人で、前年度に比べて22.1%の増加となっている。

 ・・・ところで、こうした「不登校」とは違う意味での「学校に行かない」という選択が、実は広がりつつある。

 たとえば、愛知県が今年9月から導入した「ラーケーション」という制度がそうだ。

「ラーケーション」とは、学習の「learning(ラーニング)」と休暇の「vacation(バケーション)」を組み合わせた造語で、平日、学校に登校しなくても欠席扱いにならない日のことだそうだ。

 たとえば、平日に家族で旅行することなどを「ラーケーションの日」として事前に学校に届け出れば、今年度は1年間に2日まで、2024年度以降は年間3日まで取得できるのだという。

 そこに何らかの「学び」があれば、旅行に行っても欠席にはならない。

 ・・・この制度が導入された最大の理由は、保護者が土日に働いていて、親子が一緒に休めない家庭への配慮だということである。


 愛知県のように制度化されたのは日本で初めてのことだと思う。しかし、保護者や子どもが自主的に「学校に行かない」という選択をすること自体は、今に始まったことではない。

 実際のところ、首都圏の公立小学校で働く教師に話を聞けば、

「クラスの子が、『家族でディズニーランドに行くから』という理由で学校を休んだ」

「今度の土曜日に運動会を実施する予定だが、『クラブチームの試合があるから、そちらを優先する』という子どもが何人かいる」

「発熱などはないのに、『子どもが疲れているから』という理由で学校を休ませる保護者が増えた」

「毎年1月になると、私立中学校を受験する予定の6年生は学校に来なくなる」

 ・・・といったエピソードが次々に出てくることだろう。

「学校に行かない」ことに対する抵抗感が小さくなってきた背景には、前述したように「不登校」が増加し、病気以外の理由で学校を休むことが珍しくなくなってきたこともあるだろう。

 また、コロナ禍で繰り返された「臨時休校」の影響も小さくないに違いない。


 学校関係者にとっては由々しき傾向かもしれない。けれども前向きに考えれば、学校の存在意義を問い直す機会であるとも言えるだろう。

 ・・・子どもたちは、何のために学校に通っているのか?

 それは「学びたいから」「学校が楽しいから」というポジティブな理由ばかりではなく、「それが習慣だから」「惰性で」なのかもしれない。

 そして、「もっと大事なこと」「もっと楽しいこと」があれば、そちらを優先するということなのだ。

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