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マスコミ対応

 今年の5月、川崎市内の小学校でプール管理の担当教諭が注水スイッチを止め忘れたために水が5日間流れ続け、プール6杯分が流出をしてしまった。それによって約190万円の損害が生じたため、市は損害額の5割に相当する95万円を校長と担当教諭に請求したという。

 プールに注水する際の流出は、これまでにも各地で起きている。同じ神奈川県の横須賀市では、令和3年(2021年)6月下旬から同年9月上旬までの期間、プール管理の担当教諭3名が管理職等に無断でプールへの給水を続け、水道料金及び下水道使用料として約350万円の損失が発生した。

 この横須賀市の事案では、担当教諭3名に対して損害額の5割が請求されている。今回の川崎市のケースも、こうした「前例」を踏襲しているのだろう。

 しかし、2か月以上にわたって管理職も知らないなかで水が流れ続けていた横須賀市の事案と違い、今回の川崎市の場合、流出は5日間だけである。また、担当職員が「水を止めるために注水スイッチを切ったが、ブレーカーが落ちたままでスイッチが機能しなかった」ことなど、責任を問うには気の毒なところもあった。

 ネット上でも、
「ミスではあるが、損害賠償はすべきでない」
「これではプールの管理をする体育主任の希望者がいなくなる」
 と、市教委の対応を批判する意見が多く見られる。


 今回、処分内容とは別に私が気になったのは、マスコミからの取材に対する市教委担当者の発言である。
 損害賠償請求に踏み切った理由として、
「全額を税金で賄うなら住民訴訟もあり得る」
 と述べているが、これは言うべきではなかった。

 たしかに、住民訴訟の案件を抱えると、役所の担当者は時間や労力の面で大きな負担を抱えることになる。だが、今回は過去の事例に比べると当該の教諭に同情の余地がある。ひとまずは損賠賠償請求を見送り、仮に住民が訴訟を起こしたとしても、法廷の場で司法の判断を仰ぐという選択肢もあっただろう。
 しかし、今回のような対応では、
「住民訴訟への対応が大変だから、教育委員会に対して文句を言いづらい校長や教諭に詰め腹を切らせた」
 と受け止められても仕方がない。

 百歩譲って、本音ではこう考えていたとしても、行政マンとして「切り取られて記事になるような」発言をしてはいけなかった。


 とにもかくにも、これによって川崎市教育委員会のイメージはかなり悪くなってしまったと思う。今後の教員採用への影響が懸念されるなど、ダメージは小さくないだろう。

 もしも私が教育長だったら、この発言をした担当者に損害賠償を請求したいところである。

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