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経験・堪 ✖ データ

 先日、第4期横浜市教育振興基本計画が公表された。

 横浜市教育委員会は、今回の計画を策定する上での「3つの視点」を示しているが、そのうちの1つである「経験・堪 ✖ データ」というフレーズは、実に秀逸だと思う(ちなみに、残りの2つは「一人ひとりを大切に」と「みんなの計画・みんなで実現」である)。

 おそらく、当初はEBPM(Evidence Based Policy Making:エビデンスに基づく政策形成)を前面に出したかったのではないかと想像する。しかし、教育には数値化しづらいものがたくさんある。加えて、データにはある種の「冷たさ」が付きまとい、これを強調し過ぎると反発を招きやすい。
「経験・堪 ✖ データ」という表現にすることで、教師を中心とした学校関係者が積み重ねてきたものへのリスペクトを示し、今後もそれを活かしていこうとしている点が上手いと思うのだ。


 以前、【1本でしじみ70個分のちから】という缶入りの味噌汁に関する記事を書いたことがあった。

 この【1本でしじみ70個分のちから】という商品名は、実によく考えられていると思う。
 まず、50や100といったキリのいい数ではなく、70という半端な数字には説得力がある。まさに、データだ。
(製造元の永谷園によると、この缶1本の中には、実際にしじみ70個分のオルニチンという物質が含まれているそうだ。ちなみに、このオルニチンには睡眠の質や目覚めを改善する働きがあるという。)
 その一方で、「しじみは体にいいらしい」という印象に加えて、「寒さが厳しい夜や、二日酔いの朝に飲んだしじみの味噌汁は美味かった」という経験は、おそらく多くの日本人がもっていることだろう。

「経験・堪」「データ」を兼ね備えた見事なネーミングだと言うしかない。


 第4期横浜市教育振興基本計画が示したように、これからの教育施策を考えていく際には、「経験・堪」か、それとも「データ」かという二項対立ではなく、両者を融合させていくことが必要だろう。【1本でしじみ70個分のちから】は、その具体的な姿だと思うのである。
※個人の経験・堪に基づく意見です。データはありません。

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