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古い写真

 前回の記事で紹介した東京都内の小学校は、創立が明治12年(1879年)なのだそうだ。

 今年で創立144年という長い歴史があるだけに、校舎内には大正時代や昭和初期などの古い写真や資料が飾られている。

 額に入れられた新聞記事によると、昭和12年(1937年)にこの学校の児童が「健康優良児・日本一」に選ばれたのだという。

 昭和5年(1930年)に始まった「健康優良児」の事業は、日本全国の小学6年生を対象にして「日本一の健康な児童」を審査・表彰していたものである。一時的な中断をはさみながら、昭和53年(1978年)まで続いていた。

 各学校から「身長と体重が平均以上で、学業成績と運動能力が共に優れ、性格明朗な少年」を選び、さらに地区代表や日本一まで決めていたそうだ。

 この事業は戦後30年が経っても続いていたというから、軍国主義の産物だと決めつけることはできない。しかし、今の時代からすると違和感を覚えざるを得ない。 

 この肋木(ろくぼく)を使った体操の授業の様子からは、どうしても軍事教練を連想してしまう。実際に軍隊の訓練でも肋木は用いられていたという。

 やがて戦争が激しくなると、子どもたちは集団疎開をするために親元を離れることになった。昭和19年(1944年)の写真である。


 今の日本社会には課題が山積している。最近のニュースを見聞きして怒りや脱力感を覚えることも少なくない。

 だが、これらの写真が伝えている内容とその背景に比べれば、まだ恵まれていると言えるのかもしれない。

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