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ピンチはチャンスと言うけど・・

 講演のお仕事をいただく時は、ご依頼された内容をもとに、どんなお話しをしようかな、聞いてくださる方々に何をお伝えしようかなと、現役時代の写真などを見ながらカフェでボーッと考える。(この時間は意外と好き笑)当時のことを何度も何度も振り返って、言葉にしようと試みるが、自分のことなのに今でも新しい発見があるのが、不思議であり面白い。現役選手が、レースに出場しながら、陸上教室などの活動をすることが、肌感覚で私が現役選手だった頃より増えてきたと感じるが、現役選手にしか伝えられないことがあるとしたら、引退して当時のことを客観視できる立場からしかお伝えできないこともあるのではないかと思っている。

 当時の気づきは、自分の中に留めておくので、あまり表に言葉として出さないことが多かったが、その気づきが嬉しかったり、忘れたくないと思い、その様な特に感情が動いた事は日記に残していた。当時の気持ちのままに書いたものが残っている。(過去のノートより、日記について)

 その気づきをわかりやすく人に伝える、それがよく言われている「オリンピック選手が自分の経験を伝えるってこと」なんだろうなと思う。どこに行った、どんな大会に出た、それも楽しい話かも知れないけど、「そこから何を学び、気づいてきたのか」が大切だなと振り返りながら改めて思う。

 ある時、2009年世界陸上の代表を決める予選会となっている日本選手権(大ピンチな試合)を振り返っていた時、『ピンチがチャンス』になるのは、その後結果が出たから言えることで、結果的に言えることだなと思った。ピンチをチャンスにしよう!ってよく言われていて、みんなそう思いたいんだけど、でも、いざピンチの時ってそんな余裕がないからピンチであり、本当にチャンスにするってことは、どうゆうことなのかと、ふと思った。

 そこで、あるピンチ(上記の試合)を思い浮かべ、その時のことを例にしてピンチをチャンスにするとはどう言う事かを考えてみた。

①ピンチと思っている理由、(実はピンチじゃなかった。不安を自分で作ってただけで、そんなに悪い状況ではないこともある。逆に明らかに、悪い状況もあるので、なぜピンチなのかを整理する。)
→ここで私のピンチとは、この予選会での結果が悪すぎて世界選手権への出場が危うくなっていた。明後日の2日後の予選会最終日に別の種目で優勝するしかない。有利な種目で負けて、強豪選手が集まる不利な種目で優勝をするしかないという状況が、ピンチにしか思えなかった。心の中の90%がもう無理だと言う状況だった。

②そのピンチで、明日、明後日それをチャンスに変える第一歩ってなに?(そのピンチにより、具体的になぜ落ち込んでいるのか、なぜ悲しいのか、悔しいのか?焦っているのか?ピンチの時の感情からなぜ?と掘っていく。それをどうしたら変えられそうか?整理する)
→どうしても予選を突破して世界選手権に出たいと思っていたからこそ、この結果にとても落ち込んでいた。でも、まだ不可能ではないなら、明日に向けてどうしたらいいか考えた。90%もう無理・負けると思って最終日の試合に出るのも嫌だった。まだできる事があるのに、諦めるのは嫌だと思っていることに気づき、できることはあるか考えた。自分が最終日の試合にどうしたら、強豪選手たちに勝てるのか、レースプラン(具体的にペース配分やレースの流れ)を考えることにした。

③あとは行動。
(整理したら、小さな一歩だとしても行動してみる。ピンチの時に、諦めたらそれは、多分あとから振り返って後悔・挫折とかそういうことになるんだろうけど、そこから何とかもがいたらチャンスになる可能性もある。例え諦めて次に向かう策を選択したとしても、本当の意味での諦めではないと思うし、それは、チャンスに向かう策の一つだとも言える。)
→90%もう負けると思ってた時より、具体的なレースプランを考え始めて気持ちが少し前に向かったけど、今度は不安にかられた。試合に負けたばっかりの状況で、このレースプラン(強豪選手の中で最初から最後まで先頭を走って優勝するというプラン笑)を自分に実行できるか、失敗したらどうしよう・・・。また負けたら・・。

 あとは、行動したらピンチがチャンスになるはずだったけど、今度は不安にかられてしまった。その不安真っ盛りの時にある考えが舞い降りてきた笑(これを、人によっては神のお告げというんだろうか・・笑)
『明日の試合は絶対優勝するよ』って未来からドラえもんがきて教えてくれたら、私はやる気になって走れるのかな??逆に『明日の試合は残念だけど負けるから諦めて』って言われたら、明日の試合は辞めるのか?どっちも違うし、前者の勝てるって決まってたとしてもそんな試合面白くないな・・と、気づいた。そしたら、もうとにかくやってみよう!気持ちが前を向いた。(それを覚悟を決めるとも言うかも知れない・・)

 私にとっては、この思考になれた事が大きくて、もしこの試合で負けていたとしても、ベストは尽くしたと言えたのではないかと思う。結果的には、あり得ないくらいにプラン通りのレースができて、陸上人生の中でそんなレースができて勝てたのは、このレースだけだった。このことから、表向きはこの日本選手権という大きな試合で勝ったからこそ、ピンチはチャンスなんだろうけど、私にとっての宝物は「最初から物事の結果がわかってたら面白くない」と気づけた事が、ピンチからもらったチャンス。これは、今でも不安になった時に思い出して、目の前のことをしっかりやろうと思わせてくれる。ピンチはチャンスとは、結局後から言える事だけど、その時にもんもんと部屋にこもって諦めずに考え込んだおかげで、舞い降りてきたと思うので、この体験は私にとってかけがえのない経験となった。********************************************************************

ピンチはチャンスって、ポジティブシンキング!とかそう言う事じゃなくて、ピンチの時って、そのくらい普通では考えられないことが舞い降りてくる可能性もあるみたいです。諦めそうになったけど、諦めなくてよかったです。色んな意味で、ドラえもんに感謝・・笑
皆さんにも、きっとこんな経験あると思います。
自分の中で整理する意味も込めて書いていたら、長くなりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございます!!




最後まで読んでいただき、ありがとうございます。共感していただいだり、楽しんでいただけましたら、とても嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたしますm(__)m