見出し画像

【流れ弾】櫻坂46の"楽曲的戦略"を大学生が考察

1.はじめに

初めまして。都内の大学に通いながらA&Rを目指している大学3年生です。好きな音楽ジャンルはアイドル・オルタナティブロック・ポップなど様々。大学3年間でアーティストのライブに100回以上行きました。

ここでは主に、テレビ番組や音楽記事といった音楽メディアを通じて、ヒットチャートなどの最新の音楽市場に対しての分析を行なったり、そこに対して自分の想いを綴っていけたらという風に考えています。

2.目的

記事を書いていく目的意識として、
『流動的な音楽市場を紐解く』
人々が潜在的に求めている音楽を考える
『将来A&Rを目指すにあたって、分析の先にあるヒットを生み出す』
の3つを考えています。

これは私が将来A&Rを目指すにあたっての一つの通過点であると考えています。

3.『流れ弾/櫻坂46』から読み取る方向性

前置きが長くなりましたが、今回は初回ということもあるので、私の好きなジャンルであるアイドルについて考えていけたらと思います。

アイドルの形態が多様化する中で、新たな時代を切り拓いたアイドルグループである「坂道グループ」。(主に乃木坂46、日向坂46、櫻坂46(旧欅坂46)の3グループ)

そんな中でも2021年10月13日に櫻坂46の3rd Singleとして発売された『流れ弾』(表題曲)は、SNS社会を生き抜く強さと覚悟を表現した1曲となっています。

欅坂46時代から若者が抱える社会に対しての蟠りを歌詞に込めて、力強いメロとともに歌い上げる楽曲が非常に多いです。欅坂46はアイドル業界のホワイトスペースであった「カッコ良さ」や「楽曲のクオリティ」にポジショニングしたグループであると考えられます。

しかし、欅坂46時代の表題曲には『世界には愛しかない』という王道アイドルらしさや、『二人セゾン』といった乃木坂46っぽさのある楽曲を出したりと、かなり幅広く楽曲をリリースしていました。

それが一転して櫻坂46では、シングル3作連続で表題曲は欅坂46時代の『サイレントマジョリティー』や『不協和音』のような、若者が社会に対して抱える蟠りを全面的に押し出した楽曲となっており、かなり方向性を固めてきたという印象でした。

やはりこの表題曲の方向性を定めてきたところで、ターゲットも十分に絞り込んでいるというのが言えます。

4.欅坂46から櫻坂46への変化に潜む戦略

前章では、『流れ弾』含め3シングルの表題曲が櫻坂46としての本質的な形を固めてきた作品であったというのを伝えましたが、その裏に潜む戦略を考えていきたいと思います。

そもそも欅坂46から櫻坂46への改名は多くの不祥事から来るリブランドという形でした。更にその期間も非常に短く、まさに激動と言わざるを得ない変化でした。

現在の櫻坂46の表題曲は、欅坂46時代に一番多く、インパクトの強かった若者の心の叫びのような楽曲であり、まさに地固めをしている時期であると感じます。しかし、カップリング楽曲は幅広い楽曲となっており、尚且つセンター3人制となったからこそ披露される頻度も増えています。

既存ファンに対して欅坂46時代の楽曲の強みを保ちつつ、新たな顔を見せていくことで飽きさせない仕組みを生み出していると考えます。並行して、幅広い顔をメディアを通じて披露していくことで、新たなファンの獲得にも一役買っていると言えます。

1stから3rdまでで曲調の変化はありますが、本質的なメッセージ性は一貫しているので、楽曲の変化に注目です。現時点でカップリング曲にダンサンブルかつ明るい楽曲が増えているのも変化の一つといえます。

5.1stから3rdへの変化の裏側にあるモノ

欅坂46時代からそうですが、実はこのグループはエンゲージメントに大きな特徴が見られます。欅坂46時代の一例として挙げると、

売上げは
「サイレントマジョリティー」(約37万7000枚)
「世界には愛しかない」(約39万3000枚)
「二人セゾン」(約46万8000枚)
という結果でしたが、
一例として、YouTube再生数(2021.10.18時点)はどうだったかと言えば
「サイレントマジョリティー」(1億6,000万回)
「世界には愛しかない」(3,400万回)
「二人セゾン」(6,400万回)
と全く違う結果となっています。

それを踏まえて櫻坂46のYouTubeの再生回数を確認してみると、

【YouTube再生回数】(2021.10.18時点)
1st『Nobody's fault』(表題曲)(欅坂46らしい若者の社会に対する叫びを力強くローテンポで)
⇒594万回再生

『なぜ恋をして来なかったんだろう?』(若者の恋に対する想いをアップテンポで) 
892万回再生

『Buddies』(仲間について明るく歌い上げた曲)
⇒366万回再生

2nd『BAN』(表題曲)(1stに続き若者の社会に対する叫びを表現しつつ、アップテンポでダンサンブルに)                
711万回再生

『偶然の答え』(若者の恋をミドルテンポで)
⇒254万回再生       

『思ったよりも寂しくない』(仲間がいるというメッセージをダンサンブルに)          
⇒246万回再生   

3rd『流れ弾』(表題曲)(若者の叫びをアップテンポかつダンサンブルに、新たにファンキーさも)
⇒345万回再生

『Dead end』(若者の想いを疾走感あるメロに乗せてアップテンポに)
⇒166万回再生

『無言の宇宙』(仲間に対する想いをクールにミドルテンポで)   
⇒113万回再生

1stではカップリング曲が多くのエンゲージメントを集めたのに対して、2ndや3rdでは表題曲が最も多くのエンゲージメントを集めています。

楽曲の軸となるメッセージとして若者の叫びにフォーカスしつつも、曲調やBPMの変化によって新たな側面を常に見せ続けていることがわかります。特に1stのカップリング曲である『なぜ恋をして来なかったんだろう』のアップテンポかつダンサンブルな部分をブラッシュアップして、2ndや3rdに活かしていると考えました。

6.まとめ

今回はアイドル界の代表格とも言える櫻坂46の楽曲戦略について分析してみました。既存の軸を大切にしつつも、変化を垣間見せることによって飽きさせない仕組みを生み出し、前進し続けている姿が現在の櫻坂46から伺えます。

ブランディングしていくにあたって、リスクをしっかりと抑えつつも新たな変化を加えていくことで前進することを止めない攻めの姿勢を見せ続けるのは流石であると感じたのと同時に、今後の動きについても更に注目していきたいと感じました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?