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『2番目のキス』:趣味のある生活

 しばらく放置していたのでリハビリを兼ねて書こうと思う。過去投稿が映像作品の投稿だったので、引き続き、スポーツ関連の作品紹介を書こうと思う。ということで、今回取り上げるのは映画『2番目のキス』だ。

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 本作は、イングランドのサッカークラブ(アーセナル)を題材にした映画『Fever Pitch』(原作小説『ぼくのプレミアライフ』)のリメイク作品。ちなみに、邦題『2番目のキス』はヒロインを演じるドリュー・バリモアの主演作『50回目のファーストキス』(昨年、何故か日本でリメイク)の影響を受けたものであろう。

 監督は、今年のアカデミー賞において作品賞を含む3部門を受賞した『グリーンブック』のピーター・ファレリーと、弟のボビー・ファレリーのファレリー兄弟が務めている。『グリーンブック』が意外過ぎるくらいで、コメディ映画を名手として知られる。

  物語の舞台は、2004年のボストン。数学教師を務めるベン・ライトマン(ジミー・ファロン)は、7歳の頃に叔父と一緒に足を運んだフェンウェイ・パークでボストン・レッドソックスと野球場の魅力にハマって以来、熱狂的なファンとして日々を過ごす。

 そんな彼が生徒の職業見学で訪れた会社で女性コンサルタント・リンジ―(ドリュー・バリモア)と出会い、交際を始める。バリバリのキャリアウーマンとして活躍するリンジ―も、年齢に伴う婚期を意識していたこと、ベンの人柄にも触れて好感を抱き、良い関係性を築く。

 春になると関係性に変化が訪れる。亡くなった叔父から譲り受けたフェンウェイ・パークの年間シート(2席分)を持つベンは、リンジ―をレッドソックスの開幕戦に誘い、彼女も快諾する。

 野球に全く関係のなかったリンジ―であったが、戸惑いながらもベンの情熱に圧倒されながらも一時期は観戦を楽しむようになるが、仕事が多忙になるリンジ―、シーズン終盤にかけて応援に熱の入るベンとの間ですれ違いが生まれてくる。

「一緒に応援していれば自分に振りむいてくれる」と思ったリンジ―は彼の元を離れる。ベンもまた、自分の元を離れていくリンジ―のことを思い、レッドソックス中心の生活を見直そうとする。プレイオフ敗退危機の崖っぷちに立ったレッドソックスとともに、2人はそれぞれの決断を下す。

- 「趣味のある日常」と選択を描く

 熱狂的な野球ファンを主人公にした本作は「趣味のある日常」を描く。同級生や、会社の同期が育児や、持ち家のローンなどを語る中、週末の観戦計画に精を出すようなダメ人間である筆者にとって、ベンは紛れもなく自分たち側の人間=「俺たち」である。

 ココまで書いてわかるように、ラブコメというより、ヲタクを描いた作品として評価すべきだと思う。そして刺さる人間は皆、筆者同様、ベンの仲間なのだと思うw

 そんなベンは、「趣味」と「恋人」のどちらかを選択しなければならないと考え、大いに悩むことになる。本作の大きなポイントでもある。

 しかし、結論はどちらでもなかった。具体的には、どちらも大切にしなければならないのである。筆者も、趣味人にとって、趣味に殉じた生活が最適解ではないとも感じていただけに、その着地は大いに共感した。

 ワークライフバランスではないが、日常と趣味が両輪となって日々の生活を回さねばならないと考えている。愛する趣味があるのならば、その共存を目指すことが大事だということを教えてくれたような気がする。ドラマチックであるが、やはり笑えてしまうクライマックスを見てほしいともう。

 ちなみに、ボストン・レッドソックスの本拠地であるフェンウェイ・パークで実際に撮影されたシーンも多く、当時の選手たちも登場する等、野球映画としてのディティールも確かなモノなので、野球ファンにもおススメしたい作品である。

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