【1時間で分かる】P&G流マーケティングの教科書

2020年5月末でP&Gのブランドマネージャーを退職しました。僕はこのNOTEで、P&Gで非言語的に受け継がれているマーケティングの思考法を、分かりやすい教科書のようにまとめようと思います。本気で読めば1時間かからず読めると思います。が、ちゃんと理解すれば知識レベルとしては本何冊分にもなることをお約束します。さらには、そのマーケティング思考の先に、僕がどんなマーケティングの進化を考えていて、そのために次のチャレンジとしてどんなアクションを取ろうと思っているかも最終章にまとめようと思っています。

総合商社から中途採用でP&Gのマーケティング本部に採用され、シンガポールのアジア本社への異動も伴いながら、世界最高峰のブランドマネジメントの"いろは"に触れらたことは、本当に幸運なことです。直近では、ファブリーズのブランドマネージャーとして、ブランドレコードとなる売り上げを達成することが出来たのは、素晴らしい経験でした。

本NOTEは、P&Gに転職したてで何もかも分からず、「マーケティングの世界には教科書みたいなものがないのかなー」と悩み苦しんでいた自分を思い描いて書いています。

まだジュニアなマーケターにはもちろんですが、営業の方や、主に技術畑で新しい製品やサービスの開発に向き合っている方にも読んで欲しいと思っています。ブランドが勝ち続けるためには、運に頼らず売り上げを長期的に伸ばして行くことが必要です。マーケティングの思考法は、体系的に売り上げを伸ばす最短経路だと信じて疑いません

機能のコモディティ化が進み、製品便益の差別化が一層難しくなっている現代において、純粋な技術力だけで勝ち切るのは至難の業です。パーソナルジムなんて道を歩けばどこにでもあるのに、ライザップが選ばれるのは偶然ではありません。あなたが毎朝ドトールではなくスターバックスを買ってしまうのも、スタバが作り出した必然です。そしてこれらは全て、企業のマーケティングの結果といって過言ではありません。

このNOTEを読めば、世界最高峰のマーケター達が持っている思考法の"基本型"を、フレームワークに沿って体系的に理解することが出来ます。極力専門用語や難解な言葉は使わず、誰が読んでも理解可能に書いていますが、中身は極めて濃いものになっていると確信しています。僕自身が僕の言葉で体系化した内容なので、P&G内部で教わることとは全く一致しないですし、P&Gの内部秘密を晒すような内容ではないことをご承知下さい。

P&Gから卒業した大先輩方(巷ではP&Gマフィアとか呼ばれているらしい)が、P&Gの得意とする日用品ビジネスだけでなく、テーマパーク、化粧品、飲食店、広告代理店など多方面で尋常ならざる結果を出していることは、マーケティングというものが体系的なもので、普遍的に実行可能なことを鮮やかに証明しています。この体系が少しでも分かりやすく伝わり、読んだ方のブランド業績に少しでも変化が生まれることを願っています。

それでは始めましょう!

1. 優れたブランドに共通するたった一つの秘密とは?

優れたブランドはなぜ優れているのか?

私たちは、当然のように毎日多くの商品・サービスを購入しています。コンビニで水を買い、牛丼屋でランチを食べ、時にはタクシーに乗って帰宅し、Netflixを見る。そして対価として、もれなくお金を支払って購入しています。

ここでふと考えて欲しいことがあります。果たして、優れたブランドを、優れているもの、たらしめているものは何なのでしょうか?何をもって我々はそのブランドを優れていると感じ、見合った対価として惜しむことなくお金を投じているのでしょうか?カップラーメンから戦闘機まで、この"優れたブランド"が持つ秘密を理解することなく、狙って優れた商品を作ることは出来ません。もし答えを持ち合わせていないならば、一度ここでストップして考えてみて下さい。

では、答えを述べましょう。優れたブランドは、もれなく顧客の"Job (片付けるべき仕事)"を解決している、のです。もしくは主語を変えると、顧客は、優れたブランドを雇うことで、自身の"Job"を解決している、とも言えるでしょう。

Jobとは、イノベーションのジレンマの著者として有名なクリステンセンが、ジョブ理論という著書の中で提言したコンセプトです。顧客がホームセンターで求めているのはドリルではなく、実際には家の壁に空いた8mmの丸い穴でしかありません。サラリーマンが昼に吉野家の牛丼を食べるのは、短い休み時間で、かつ限られたお小遣いでも、がっつり空腹を満たしたいからです。このJobを満たしうる選択肢としては、例えば立ち食いソバや、コンビニ弁当、はたまたビッグサイズのカップラーメンなども入ってくるでしょう。

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ここで一度止まって、世の中で優れていると思うブランドと、それが解決しているJobを考えてみて下さい。実は、そう簡単には思いつかないということが分かると思います。そう、Jobは簡単には見つからないのです。だからこそ、ブランドを成長させたり、ヒット商品を生み出すことは容易ではないのです。毎年、何十万という新商品が出されては、何の記憶にも残らず消えていくのは、明確なJobの理解がないままに製品開発をしてしまっているから、というケースが殆どです。

僕は、このJobの発見と解決に至る一連のプロセス、をマーケティングと定義付けたいと思います。これは、企業活動=経営そのものです。だからこそ、P&Gではマーケティング本部の人間が、ブランドマネージャーとしてブランド経営全体を見る、という組織構造を取っていました。

マーケティング=Jobの発見と解決に至る一連のプロセス=経営

マーケティングとは本来、広告を作ることでも、販促活動を行うことでもありません。それらは、あまりにマーケティングの本質を矮小化して捉えてしまっているように思います。Jobの発見から解決に至るHolistic(包括的)なプロセスそのものがマーケティング活動なのです。もちろんその中には、消費者調査、製品開発、コンセプト開発、広告作り、PR活動なども当然に含まれてきます。

巷に溢れている"ウェブマーケティング"や"SNSマーケティング"という言葉は、プロセスの中の実行(HOW)の一部だけを切り取ったものであり、マーケティング全体からするとほんの一部分でしかありません。各論である実行(HOW)を理解する以前に、Holistic(包括的)なマーケティングの全体像を理解していない人が多いように思います。

もちろん、ウェブやSNSでのマーケティング施策に詳しいことは紛れもなく素晴らしい価値です。しかし、これら施策の話しはあくまでHOW(どのように)の話しであり、そもそも何を(WHAT)作るのか、誰に(WHO)売るのか、戦略は何なのか、といったより上位の概念を作ることには同等か、より大きな価値があります。特に、MAツール(マーケティングオートメーションツール)が進化し、施策の最適化に人の力が必要なくなる近い未来において、人間にしか出来ない0→1の部分にこそ価値の源泉があると信じています。

それでは、次章からは具体的なマーケティングの思考法に入っていきます。はじめに断っておきますが、奇抜な近道、みたいなものがあるわけでは決してありません。王道でシンプル、ゆえに普遍的であり、地道で大変なものなのです。

地味なうえに実行に移すのに多大な労力がかかることは分かっていても、すでにP&Gや、P&G卒業生が様々な業界で活躍していることによって実証されている、勝つ確率を上げるマーケティングの思考法を手に入れましょう。

2. 戦略の重要性を理解せよ!

戦略とはなんだろう?

経営者でなくても、「経営には戦略が必要だ!」ということは、おおよそ会社に所属したことがある方ならば、なんとなく思っているところだと思います。「当社の経営戦略は・・・」という話しはどこの会社でも行われています。

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先に述べた通り、マーケティング=経営、ですから、必然的にマーケティングの思考法を理解するには、その前段の戦略思考も理解しておく必要が生じます。数学で例えると、具体的なマーケティングフレームワークを微分積分(応用数学)とすれば、戦略の理解は九九みたいなものだと考えて下さい。

そこで、戦略は何か、という問いに答えることが出来るでしょうか?もしくは、なぜ戦略が必要なのか、という問いに明確な回答を持ち合わせているでしょうか?当たり前のように多くの人が戦略という言葉を口にしていますが、実は戦略の意味と意義を正しく理解している人は少ないように思います。P&Gでは毎日のように、「戦略は何か?」、とまるで呪文のように社員が問い合っていましたが、そんなP&Gの社員でさえ、戦略を明確に人に説明出来るのは半分くらいなのではないか、という印象です。

せん‐りゃく【戦略】
1 戦争に勝つための総合的・長期的な計略。→戦術
2 組織などを運営していくについて、将来を見通しての方策。「経営戦略の欠陥」「戦略的人生論」「販売戦略を立てる」
[補説]具体的・実際的な「戦術」に対して、より大局的・長期的なものをいう。
goo辞書より引用

上記が辞書で引いてみた戦略の意味なのですが、はっきりいってピンときません。なんとなく作戦みたいな意味だろう、という程度の理解を超えない印象です。そこで、本稿では戦略を以下の様に定義したいと思います。

戦略=目的達成の為にリソースを何に使うのか、という選択

つまり、戦略がなぜ必要かと問われれば、1)達成したい目的があって、2)活用できるリソースが限られているので、3)選択が必要だから、と答えることが出来ます。

例えば、After5で恋人とディズニーランドに行くとしましょう。目的は、思いっきり楽しむことかもしれませんし、ロマンティックな雰囲気を味わって仲を深めるためかもしれません。

前者であれば、それを達成する為に、片っ端から絶叫系を中心に回ろうという戦略が立つでしょう。混雑具合から考えれば、閉演までに2-3個アトラクションに乗れれば御の字といったところでしょう。

後者の目的であれば、シンデレラ城の前を真っ先に陣取って、良い席でパレードを観賞しようという戦略になるかもしれません。それと引き換えに、ビックサンダーマウンテンに乗る時間は残されていないでしょうが、仕方がありません。

どちらにしても、"5時から閉演まで"という限られた時間(リソース)しか持っていなかった為に、絶叫系とパレードを両立させることは叶わず、明確な戦略=選択が必要になってくるわけです。

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戦略がいらない場合を考えてみる

さらに戦略の必要性を理解する為に、”戦略がいらないのはどんな時か?”という問いを考えてみたいと思います。

一つ目は、目的が無い場合です。先ほどの例で考えてみると、恋人とディズニーランドには来たけれど、ぶらぶらしてるだけで二人ともOKで、特定の何かを達成したいわけではない場合です。この場合、選択が要らないことは明確です。園内を気ままに歩き回り、気に入ったアトラクションがあったら乗ったり、パレードが始まったら見てみたり、疲れたら座ってチュロスを食べたりしたらいい。選択なんてものは全く持って不要なことは明白です。

二つ目は、リソースが限られていない場合です。例えば、朝から晩までディズニーランドを恋人と二人で貸し切っているとしたら、わざわざアトラクションを回る順番なんて考える必要はありません。乗りたいものに乗りたいだけ片っ端から乗ればいいのです。夜になったら絶好の位置でパレードを眺めることだってできます。この例から分かる通り、リソース上の強みは、戦略そのものを不要にしたり、戦略に自由度を与えることになります。

実際のビジネス文脈では、企業活動に目的が無かったり、リソースが無限にある、というケースはまず考えられません。会社として株主にコミットしている経営目標があり、社員の数や投資できる資金には必ず限りがあります。その結果として、目的達成のためのリソースの活用指針である戦略が必要になってくる、という構図になります。

優れた目的とは?

ここで、戦略の重要項目である目的に関して、もう少し理解を深めておきたいと思います。

目的は、だれが見ても解釈の余地がなく、分かりやすいものでなくてはならりません。例えば、"売り上げを飛躍させる"、といった類の目的をよく目にしますが、人により飛躍が持つ定義が10%だったり50%だったりと幅があるうえに、いつまでに達成すればよいかなども曖昧なので、多数から出来ているチームに掲げる指針としては不適切です。P&Gでは、SMACというチェックポイントで、優れた目的を定義していました。

SMAC
・Specific (具体的な)
・Measurable (測定可能な)
・Achievable (達成可能な)
・Consistent (より上位の目的と一貫している)

例:サービスの新規ユーザー数を、3か月以内に、1.5倍にする。

Achievable、に関しては注意が必要になります。途方もなく高すぎて達成が到底不可能だと指針として人々が付いてきません。むしろ、それを強権的にトップダウンで押し付けると、チームのモチベーションの低下に繋がる可能性すらあります。

その一方で、ビジネスリーダーとして、明らかに達成可能な低いターゲットを掲げるのは適切ではありません。過去をベンチマークし、将来を予測し、達成可能な範囲内で限界までストレッチすることが必要です。さらに言えば、そのストレッチなターゲットを、戦略の秀逸さと熱意で達成可能であると心からみんなに思わせるリーダーシップこそが、ビジネスリーダーに求められている大きな役割であることは間違いありません。

上位組織にとっての戦略は、あなたにとっての目的となる

目的と戦略は従属関係にあると言うことに触れておきましょう。つまり、上位組織(例えば本部)にとっての戦略は、下位組織(例えば事業部)にとっての目的になるということです。例えば、以下はDeNAの2020年3月期3Qの決算資料から抜粋した今後の戦略のスライドです。


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全社レベルでの最も大きな目的は、"来期IFRS・Non-GAAPともに営業損益を反転"となっています。これはつまり、会計基準に依らずに、営業損益をプラスに転じることが前者の目的、ということになります。(補足すると、この期にDeNAは北米ゲーム事業で買収した会社の減損処理を行なっており、IFRS上での営業損益が巨額のマイナスとなっています。)

この目的を達成するための戦略が三つ示されています。1)ゲーム事業の収益基盤の再強化、2)新規事業領域における成長投資方針の最適化、3)全事業・機能の見直しによる固定費の削減、の三つです。これは、全社レベルでは、間違いなくリソースを投入する選択、つまり戦略だといえるでしょう。

では、1)ゲーム事業の収益基盤の再強化という全社戦略は、ゲーム事業部にとっては何になるでしょうか?もちろんお気づきの通り、これはゲーム事業部にとっては目的に変わります。そして、ゲーム事業部長は、この"収益基盤の再強化"を目的として、これを達成するためのゲーム事業部としての戦略を考えることになるのです。

"収益基盤の再強化"、はかなり曖昧なので実際に中の人間でないと具体的に何を意味しているのかは分かりかねます。例えば、売り上げを伸ばすことを言っているのであれば、新規ユーザーを伸ばすために人気コンテンツ(ポケモンとか、マリオとか)とのタイアップを倍に増やすというのが戦略になり得るでしょう。もしくは、利益を優先するという意味ならば、新規ゲーム開発を抑えて、既存のヒット作のユーザーに徹底的に課金させていく、というのが戦略たり得るわけです。

そして、仮にタイアップを倍に増やす、というのがゲーム事業部の戦略となったら、それはその下のアクションゲーム課にとっては目的となり、さらにそこで所属する人間に具体的な戦略・プランが生じていく、という構造になっています。

大企業では、全社レベルの目的と戦略は、かなり曖昧なものが多いです。ざっと有名企業のIRを10社ぐらい見回してみましたが、残念ながらSMACな目的を掲げているところは皆無でした。事業が多角化し、株主総会で言える内容も最大公約数的なものにならざるを得ないという背景がそうさせているのでしょう。

だからこそ、これを読んでいる現場のビジネスリーダーには多くが求められるのです。全社レベルの戦略を咀嚼し、チームの目的をチーム構成員が自分毎として捉えられるものに再解釈する必要があります。さらに、その目的を達成する為の戦略を、アクション可能なレベルまで粒度を細かくして示す力が求められます。そのためには、数字を使ってビジネスを分析・理解する能力が当然のように必須になります。

大いなる全社の目的を達成するためには、自分たちの事業部はどういう目的を達成しなければならないのか。新規ユーザー数なのか、リテンションレートなのか、客単価なのか、購入頻度なのか。全社戦略を自分のチームの目的に翻訳する力に、リーダーとして、マーケターとしてのビジネスセンスが問われているといっても過言ではありません。

3.戦略の基本型を把握せよ!

"勘"では売り上げは伸びない

会社にとって最重要経営課題の一つは、いかにして売り上げを伸ばすかです。短期的には経費を抑えることで売り上げを犠牲にして利益を優先することは出来ますが、カットできる経費には限界があり、すぐにジリ貧となります。一般的に新規顧客を獲得するためのコストは既存客を維持する5倍程度かかると言われているので、失った売り上げは予算を戻したからといって簡単には取り戻せません。中長期的に勝ち続けるためには、売り上げを伸ばしていきながら利益拡大していく必要があるのは自明でしょう。

売り上げは、複雑なファクターが重なり合った結果として生じるので、何をしたら売り上げが伸びるか分からない場面も多いかと思います。例えばエステサロンを運営していたら、エステティシャンの腕が悪いのかもしれない。お店の内装のセンスが悪いのかもしれない。値段が高すぎるのかもしれない。場所が悪いのかもしれない。ランダムに挙げていればキリがありません。

結果として、なんとなく経営者や担当者が課題だと思っている部分に勘でメスを入れて、結果としてなにも売り上げが変わらない、なんてことはざらにある話しだと思います。この"手探り戦略"を避けるためにも、戦略の典型的な型を覚えておくだけで格段に検討する戦略的選択肢が狭くなり、どこにリソースを配分すればいいかわかるようになります。

戦略足りうる経営資源の配分先は、意外と限られている

"分かる"の語源は、"分ける"から来ているそうです。あまりに大きくて全体像が見えないものでも、細かく"分けて"いけば、いつか"分かる"ようになる、ということでしょう。分け方には掛け算に分ける方法と、足し算で分ける方法がります。パッと思いつく限り、売り上げを"分けた"ものを以下に書き出してみましょう。

売り上げ=
①人口*認知率*購入率*購入個数*購入頻度*購入単価
②来店者数*来店者購入率*購入個数*購入単価*購入頻度
③A店舗売り上げ+B店舗売り上げ+C店舗売り上げ+D店舗売り上げ
④男性売り上げ+女性売り上げ
⑤X商品売り上げ+Y商品売り上げ+Z商品売り上げ

分け方に正解はありません。ビジネスモデルにもよって変わるし、ブランドの置かれている状況にもよって異なってきます。重要なのは、それぞれ(ある程度)独立している要因となっていて、かつ、ブランドの抱えているチャレンジや、機会を浮き彫りにするような分け方をすることが大事になります。

しかし実際のところ、P&Gでの経験と、外部のマーケターと話している中で分かったことがあります。それは、ほとんどのケースが①で考えていれば、大局的に考えた時に、リソースを配分するべき戦略的エリアを発見するのに困ることはないということでした。

① 売り上げ=人口*認知率購入率*購入個数*購入頻度*購入単価

太文字にした要素と、太文字にしていない要素の違いが分かるでしょうか?それは、ブランドが努力することによって意図的にコントロール出来る要素か否か、です。太文字でない要素はコントロールすることが出来ない(難しい)要素なので、リソースを割くべきではなく、戦略的エリアには基本的になり得ません。

人口をいちマーケターの力で増やすことは出来ません。購入個数も、購入頻度も、基本的には所属しているカテゴリーによって決まっています。例えば4人家族の場合、年間に使用する衣料用洗剤の量は6−7kgと決まっているので、最終的にはそこ向けて収束していくことになります。もちろん、ビジネスモデルの変換を図ることで購入頻度や購入個数を変えることは出来ますが、かなりのチャレンジを要するでしょう。

とするならば、認知率・購入率・購入単価の3つしか、究極的には戦略として会社のリソースをつぎ込むテリトリーは存在しないということになります。さらに突き詰めると、実は購入率を高めることがマーケターの至上命題だということが分かります。これに関しては後ほど説明します。

あまりにシンプルに感じるかもしれませんが、これは紛れもない真実の姿だと考えています。途方もなく複雑に思えた宇宙の真実も、アインシュタインによってE = mc^2というあっけないほどシンプルな美しい数式で支配されていることが分かりました。自然科学もビジネスも、突き詰めるとシンプルに出来ているように思います。あとは、この3つの要素がそれぞれどのような活動によって上下するかを理解し、適切な打ち手を考えるだけです。(実際には、それが難しいのですが) では、それぞれの項目別に見ていきましょう。

認知を伸ばす

売り上げを構成している式を見れば分かる通り、認知率の増加に対して、売り上げは理論上線形に伸びていきます。実際には認知率が低い段階でも知ってくれている消費者は、既にブランドに対して強い興味を示している可能性が高く、後になって知る人よりもそもそもの購入率が高いことが多いので、厳密には線形よりも下振れしますが、ここでは無視します。

極端な話し、消費者は知らないブランドを購入することがありません。100円ショップで売っているような超コモディティ商品は例外として、それなりにコストを支払って購入したり、家族も使用するようなものは、リスクを取りたくないものです。

なので、もしあなたの今のブランドの認知率に大幅な伸びしろがある場合には、そこを埋めることを短期的な戦略にしていいと思います。伸び代の判断に関しては、カテゴリーの競合をベンチマークとした時に、明らかなギャップがあるかないかで判断すると良いでしょう。例えば、競合の認知率が60%あるのに、自社ブランドが30%しかないとしたら、単純に競合と同様の認知率にするだけで2倍近い売り上げが見込めるはずです。

認知率の上下を司るドライバーは、なんといってもメディア接触になります。特にマス向けのビジネスを展開している場合には、なんだかんだでテレビCMはいまだに最も効率よく大多数にリーチできるメディアとして君臨しています。

長い視点(5-10年)では間違いなくテレビCMの影響力は右肩下がりだと思いますが、2020年現在では、テレビCM以上に国民に広くリーチできるメディアは存在しません。国民の80%がDAU(Daily Active User、毎日サービスを利用するユーザー)のメディアが現状ないのです。IT企業の権化たるGAFAが、日本ではテレビCMにガンガン出稿しているのがなによりの証拠になります。

(ちなみに、テレビに関しては色々と言いたいことがあるのですが、大きく脱線するので割愛します。大いに語りたい方、個人的に話しましょう。)

レストランやヘアサロンなど、ある程度地域が限定的だったり、見込み顧客数が数百~数千程度と少なくても良いと判断されるような業種では、マスメディアではなく、より効率的に見込み客にリーチできるメディア選定が必要になるでしょう。もはやターゲットを絞ってリーチしたい場合には、自社や自社スタッフのSNSを活用し、Paid(お金を払って広告出稿する)ではなくOwned / Earned / Shared(自社保有・他社起点)でコストを下げて、クオリティの高いリーチを獲得することが定石となっています。

もし、特に意識せずホットペッパーや食べログの広告に資金を投下しているならば、一度やり方に関して考え直した方が良いかもしれません。Paidで戦うのは資金力バトルになり弱者には向きません。クオリティで勝負する戦い方が求められていますし、現代では格段に仕掛けやすくなっています。こちらに関しては、後ほどの実行(HOW)の章で詳しく話します。

認知率は、投下した費用に対して逓減していくような伸びになります。つまり、だんだん1円あたりの追加認知率が落ちてくるのです。80%の認知率を90%にするのは容易ではないしお金もかかります。そのうえ、どこまで頑張っても100%にはなりません。たしか、アンパンマンですら認知率は98%程度だったはずです。なので、主に認知率は、まだまだマイナーなブランドや、発売直後のブランドにおいて主眼となる戦略要素だということを理解しておきましょう。

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Top of mind認知率が大事

認知に関する捕捉として、認知の質に関しても考える必要があることに注意して下さい。P&Gで主に調査している時には、以下の3つの種類の認知を測っていました。

1 Top of mind認知率 消費者が真っ先に思い浮かべるブランド認知
2 Unaided認知率 消費者がヒントなしで覚えているブランド認知
3 Aided認知率 こちらからブランド名を言うと思い出せるブランド認知

布用の消臭スプレーのブランドを思い浮かべて下さい。50%ぐらいの方が、"ファブリーズ"と真っ先に頭に浮かんだと思います。つまり、ファブリーズのTop of mind認知率は50%となります。真っ先に浮かんだのはリセッシュだったけど、ファブリーズも当然知っている、という人が20%ぐらいいるかもしれません。この場合、50%+20%=70%がUnaided認知率となります。ヒントなしでは思い浮かばなかったけど、今この文章を読んでファブリーズってあったなー、と思い出した人がさらに20%いるとします。そうすると、70%+20%=90%がAided認知率です。100%ー90%=10%が、ファブリーズを全く知らない人たちとなります。

マーケターでもない限り、認知率のことをAided認知率で測りがちですが、特に購入のリスクが低い小ー低価格帯のブランドに関しては、実際に売り上げとの相関が最も高いのはTop of mind認知率になります。

例えば、お昼になにを食べるかと考えた時、ほとんどの人は真っ先に出てきた選択肢で決めて、特に検証せずに終了になるからです。「今日のランチは牛丼がいいなー、吉野家にしよう!」で、おしまいです。「いやちょっとまてよ、すき家と松屋となか卯もあるからどれにするか考えるか。。。松屋は味噌汁が付くけどすき家は牛丼のバラエティがあるし。。。」とならないことは、想像に難くないでしょう。

ある意味では、マーケターはこのTop of mind認知率のイス取りゲームをあの手この手でやっているとも言えるのです。真っ先に頭に浮かぶブランドになるにはどうしたらいいか、以下さらに詳しく見ていきましょう。

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購入率≒ブランド選好はマーケターの命

いよいよ本稿の核心となる話題に突入していきます。まずは、1分ほど時間を取って頂いて、以下に当てはまるブランドをなるだけ多く考えてみて下さい。

名前やロゴを知っているけど、未だに購入したことがないブランド

例えば僕の場合であれば、ZARA、トヨタ、ロクシタン、すきやばし次郎(有名お寿司屋さん)、ロマネコンティetc...といったブランドが、1分考えただけでも次々に頭に浮かん出来ます。これを100個ぐらい出し続ければ、購入しない理由の系統を複数にグルーピングすることが出来るでしょう。経験上、購入率を支配する因果律は概ね以下に収束されると考えています。

・他社製品を好んで使っている(ZARA、僕はユニクロしか着ない。)
・そもそもカテゴリーに全く興味がない (トヨタ、ロクシタン)
・購入不可能 (すきやばし次郎、関西在住&全く予約が取れない)
・価格が高い (ロマネコンティ、安いワインで十分満足できる)

特にP&Gを含めた世界中の一流マーケターが血眼になって追いかけているのが1番目の要素、つまり競合に対する消費者の間のブランド選好を高めるということです。なぜこのブランド選好が最も重要視される戦略エリアになるかの説明の前に、まずは他の3要素を見てみましょうう。

カテゴリーへの無関心、は基本的にはコントロール不可能な要因と考えます。僕のような、そもそも運転免許を持っていない人間を、いちブランドの努力で免許まで取らせて購入に至らしめるのは通常不可能だからです。

但し、カテゴリーそのものの世帯浸透率が低いようなブランドでは、カテゴリーへの興味の裾野を広げるのがマーケターに求められる仕事となります。例えば、男性用の脱毛サロンなどは、いまだに全男性の1%程度しかやっていないはずです。であれば、この1%の中でシェアゲームをするよりも、残りの99%の中で、潜在的に現状のムダ毛処理に不満を持っている層を顧客として広げるのが正しい、という判断になります。

"購入不可能"に関して、P&GではPhysical Availablity(実際に手に取れるか)の有無、と呼んでいて、特に新製品発売の店頭施策観点で重要視していました。仮にブランドを知っていたとしても、実際にお店に行った時に売っていなければ物理的に消費者は購入出来ません。これは、そのまま機会損失に繋がります。

小売ビジネスの場合には、配架率によってPhysical Availabilityを測ることが出来ます。すきやばし次郎などの飲食店では、新規店舗の出店や、店の席数を増やすことで、より広い予約を受け入れられるようにすることがPhysical Availabilityの拡大に繋がると考えられます。(ただし、次郎さんは一人しかおらず、かつ高齢なので、むやみやたらの拡大は出来ません。あくまで理論上の話しとして、です)。

このPhysical Availabilityは、先ほど説明した認知率と、売り上げへの因果が似ています。ある程度までは、この二つの要素が伸びるに従って線形に売り上げが拡大するからです。

ただし、どちらも一定レベルを超えてからさらに伸ばす為に必要なリソースは指数関数的に伸びていく為、既にある程度の認知やPhysical Availabilityを持っている会社がこの二つを戦略エリアとして投資することは得策とはなりえません。認知率とPhysical Availabilityの二つの要素は、むしろブランドの成長を阻害している"足枷"となっていないか、という観点でのチェックを行う方が本質的に正しいでしょう。

認知率とPhysical Availabilityを高めるという戦略が、ブランド成長の足枷を取り外していくようなものだとしたら、ブランド選好を高めるという戦略は、ブランドの潜在的な成長限界を引き延ばすということになります。なぜかと言えば、認知率はどんなに上がってもマックスで100%までしかないのに対し、ブランド選好は(競合や現在の自社ブランドに対し)200%でも300%にでもなることができるからです。

中長期的にブランドを成長させる為にマーケターがブランド選好を必死に高めようと考えるのは、この無限の成長ポテンシャルを伸ばしたい、というのが最も大きな理由です。ブランド選好には限界がありません。さらにいえば、一度築かれたブランド選好は、熱烈なファンの他者への推薦によってさらに他者のブランド選好へと伝播していく為、ブランド選好は上がれば上がるほどさらに上げやすくなっていくのです。

最後に、価格が高すぎる、に関して捕捉します。実は価格とブランド選好はコインの表と裏の関係になります。エルメスやロレックスなどの高級品を除けば、価格が下がればブランド選好が上がるし、ブランド選好が高ければ多少価格が高くても消費者は購入します。つまり、ブランド選好を高めながら許される範囲内で価格を上げていく、という理想的な状態を作ることが究極的には出来るのです。

逆に、ブランド選好が低い場合には、短期での売り上げを作る為に価格を下げるという戦略に走りがちですが、これは死へのスパイラル一直線となります。本質的にブランド選好が下がっている理由を解決していないので、顧客はすぐに価格に慣れてしまうでしょう。さらに値下げしないと売れない状況に追い込まれれば、ブランドはジリ貧です。なにより、もっと体力のある強者に、価格勝負に付いてこられては勝ち目がありません。とすれば結局、ブランド選好を高める以外に、長期的には道はないのです。

ブランド選好を高めるには?

ブランドにとって、ブランド選好を高めることが如何に重要かが分かったことと思います。ここで、1章で一番最初に僕が問いかけた質問に改めて戻ってみたいと思います。

優れたブランドはなぜ優れているのか?

答えを覚えているでしょうか?これに対して提示した答えはこうなります。

優れたブランドは、顧客の"Job (片付けるべき仕事)"を解決している、から

優れたブランドは、顧客のJobを解決するので、顧客から選ばれる。(ブランド選好される) そして、顧客にとってのJobの発見から解決までの一連のプロセスをマーケティングと呼ぶ。これがマーケティングの本質であり、マーケターの仕事の全てです。ということは、Job発見方法と、解決方法に至る思考法さえ手に入れば、立派としたマーケターとなることが出来るわけです。

いよいよ次章では、体系的に理解できるフレームワークに沿いつつ、Jobの発見方法から深く見ていきましょう。

4. WHO(フー)ではなく、”不(フ)”が大事!

よくあるWHOの間違い

P&Gで使われているフレームワークで、最も有名なものはWWHでしょう。WWHとは、WHO(誰に)-WHAT(何を)-HOW(どのように)の略です。WHO、から思考をスタートすることで、WHATとHOWが整理されていくという考え方です。ターゲット、ユーザー、カスタマーなど、言葉こそ異なれど、およそマーケティングという考え方がある会社であれば、WHOを考えろ!というのは基本中の基本ではないかと思います。

ここで、典型的なWHOの設定を以下に紹介します。このWHO設定が優れているかどうかを考えてみて下さい。

衣料用洗剤ブランドAの、社内で想定しているWHO
38歳の女性。東京都杉並区のマンションに在住。夫と小学生の子供2人と暮らしている。平日はパートタイマーとして週3日4時間ほど、近くのスーパーでレジ打ちしている。ほぼ毎日洗濯は欠かさない、午前中にやって干してから仕事に出かけるというルーティーン。家族の為にちょっと高いけれど抗菌効果の高いものを使っている。夫は公務員で、世帯収入は800万円。

典型的なデモグラフィックに基づくWHO設定ですが、残念ながらこれではダメです。理由は単純明快で、このWHO設定は、Who is her?にしか答えておらず、肝心要のWhat is her job?に対して答えていないからです。もちろん、デモグラフィックの偏りを理解することで抱えているJobに近づくので、WHO設定のスタートポイントとしては悪いことではありません。しかし、不完全なのです。

僕は冗談っぽく、大事なことはWHO(フー)を理解することではなく、"不(フ)”を理解することだと言っています。不とは、不経済・不便・不都合・不満・不安、など人が解消したいと感じる課題のことです。(ちなみに、"不"とはリクルートに関する本を読んで知ったコンセプトで、気に入って使わせてもらっています)  "不"の解消こそが事業の本質であり、そのために顧客は喜んでお金を払います。英語と日本語のニュアンスの違いは多少あるかもしれませんが、"不"="Job"と考えて構いません。

お客さんに子供が何人いるかどうかは究極的にはどうでもいいことです。そうではなく、子供がたくさんいるお母さんが必然的に抱えてしまう"不"="Job"こそが、マーケターが理解しなければならないことなのです。以後、本稿では混乱を防ぐ為にJobという言葉を使うことにしますが、ぜひWHO(フー)ではなく不(フ)という言葉を覚えておいて頂けると嬉しいです。

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顧客はJobを上手に説明できないので、行動の理解をするのが大事

製品やテクノロジー、自社の内部事情を分かっていて、プロジェクトに並々ならぬ情熱を持っているが故に、往々にしてマーケターは最も顧客感覚から遠いところにいる存在となってしまいます。結果として、自身が持っている"顧客はこうであるはずだ"といった思い込みや、"顧客にこうであって欲しい"という願望でプロジェクトを進めてしまい、結果として顧客のJobの解決から遠く離れた製品やコミュニケーションになってしまうことがしばしばあります。

研究開発や、エンジニアの強い組織も、この罠に陥ってしまうことが多いように思います。新たなテクノロジーを開発することは紛れもなく素晴らしいことです。しかし、テクノロジーからスタートして都合よく顧客のJobを捏造したり解釈すると、市場に出た後に大きなしっぺ返しを食らうことになるのです。

だからこそ、Jobは顧客との徹底的な会話の中で発見されなければなりません。会議室でブレインストーミングして出すものではないのです。ここで、顧客との会話に関して理解しておかなければならないことがあります。顧客が自らの抱えている真のJobを正しく語ることはまずない、ということです。

例えば有名なのが、サラダマックの失敗の話しです。10年以上前のこと、マクドナルドの店頭アンケートで最も寄せられるコメントは、ヘルシーなサラダメニューが欲しい、というものだったそうです。その声に答えるべくマクドナルドはサラダマックというメニューを開発し発売しましたが、全く売れることがなく、結果としてすぐにサラダマックは廃盤となりました。

ちなみに、その後にメガマックやクォーターパウンダーマックといった顧客と真逆のメニューを投下して、ヒット商品となったことは、皆様ご存じの通りでしょう。

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もしも顧客の言うことをそのまま解決していけばいいのであれば、サラダマックは売れて、メガマックは売れなかったはずなのですが、現実にはそうはならなかった。ここには、顧客と会話するときに気を付けるべき2つの罠が関係しています。

1つ目は、消費者はロジカルに意思決定を行っているわけではない、ということです。人間は毎日途方もない数の意思決定を行っています。その全てを論理的に行っていては脳のキャパシティがとても間に合いません。そこで、95%の意思決定は、考えずとも自動で判断されるように出来ています。これを脳のオートパイロット機能と呼びます。

例えば、家から駅までどのような経路を辿るか。何号車の電車に乗るか。どの音楽を聴くのか。実際にはそれだけでも何億通りもの可能性があるわけですが、誰もが当然のことのようにこれらを毎日こなしています。これらは、自動で行われているので、覚えてすらいないはずです。実際、例えば今日の朝、信号で何回止まったかなど覚えていないでしょう。

実はこれは、ごく自然な生理的防衛です。脳は、5%の意思決定にしか本気を出していないのに全消費カロリーの20%ほどを占めていると言われています。もし、脳が30%も40%も意図的に意思決定していたら、人類ははるか昔に餓死していたものと思われます。

アンケートやリサーチをするときは、消費者はロジカルモードになっています。普段はマクドナルドでヘルシーなものが欲しいなどとは思っていない(思っていたらそもそもマクドナルドに来ていない)にも関わらず、いぜアンケートで聞かれるとうーーんと考えた結果論理的に正しかろうな答えを出してしまう、ということです。

二つ目は、およそ2020年現在において、消費者が自力で思いつけそうな顕在化しているJobは、ほとんどこの世の中に残されていない、ということです。

例えば100年前には、安全な飲み水を確保すること、というのは多くの一般庶民にとって途方もなく重要なJobだったはずです。しかし現在では、安全な飲み水を確保するという"Job"は既に完全にクリアされ、その領域に参戦するのは限りなく難しくなっています。

消費者が自ら語れるJob=誰でも簡単にわかることは、もはや残されていないと思った方が賢明です。もし消費者が簡単に口にすることが出来たならば、それはその場で作られた、ロジカルな"Jobもどき"であることを疑った方が良いでしょう。

では消費者との会話はどのようにすればいいのでしょう?何を聞いて、いかにしてJobを発見すればいいのでしょう?答えは、消費者にダイレクトにJobを聞くのではなく、実際に取った行動に関して質問をし、Jobの仮説を立てる、です。

意識的にせよ無意識にせよ、消費者が特定の行動をとっているのには、その裏に何らかしかの理由が存在します。その理由を、機能面だけでなく、文脈も踏まえた情緒面まで含めて根ほり葉ほり聞きまくることが会話の秘訣となってくる。

例えば、私が実際に担当していた台所用洗剤ジョイの消費者調査。家に訪問させて頂き、色々見ているなかで気になった風景がありました。それは、台所シンクの中で、排水口が外されて、外に出されていたのです。(下記写真参照) 今まで100人以上の消費者にインタビューし、様々な台所シンクを拝見させてもらいましたが、このケースは初めてでした。何気ない風景ですが、直感的に通常と異なることに違和感を覚えたので、なぜこれをやっているのかを聞いてみました。すると、

「夏は特に排水口が濡れていると菌が増殖するので臭くなる。だから毎日洗った後に外に出して乾燥させるようにしている」

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と教えてくれました。菌対策で他に行っていることはないか?とさらに深堀って聞いてみると、1か月に一度は漂白剤でちゃんとキレイにしている、とのこと。逆になぜ毎日漂白剤を使わないのか?と尋ねると、なんとなく手間もあるし、毎日はなんとなく気が引けるので敬遠している、という回答でした。そこで、オンラインで漂白剤の非使用理由の量的調査を行ったところ、「漂白剤は強すぎるので頻繁に使うのは肌・健康に悪いイメージがある」という懸念が強いことが分かりました。

この、排水口をシンクの中に出している、という何気ない行動への深堀りから、最終的には「本当は毎日漂白剤使って排水口を徹底除菌したいけど、漂白剤は毎日使うには強すぎて(健康に悪いので)抵抗がある。」という消費者の本音(インサイト)を掘り出すことが出来ました。消費者のJobは、「ちゃんと排水口を除菌が出来て、それでいて安心して毎日使える。」だったのです。

このJobが発見された後は早かったです。解決策として既存の除菌用ジョイを使用すれば排水口の除菌に効果があることを研究開発と共に検証し、それを世の中に広める為にコマーシャルプランの実行フェーズへと進んでいきました。結果として最も除菌のニーズが高まる夏にこのプランを間に合わせることができ、新たな消費者の獲得へとつながりました。

データはあくまでJobを検証する為に活用するもの

データドリブンマーケティングや、ビッグデータ分析、というキーワードが流行ってから随分と経ちました。人類が取得することが出来るデータの量は年々飛躍的に増えているので、それを利用して消費者の行動を明らかにしようという試みのことです。データ分析が重要なことに異論はありませんが、それでもマーケターとして最も重要なのは、定性調査(Qualitative Research、1on1インタビュー調査など)を重ねることで顧客の真のJobの仮説を立てることだと思っています。

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見れるデータの量が甚大だということは、裏を返すと仮説が無いと何をどうみればいいかすら分からないということを意味します。闇雲にデータを追いかけても、因果なのか、相関なのか、独立変数なのか、従属変数なのかが見えてこず、誤った意思決定に繋がってしまうでしょう。

また、「顕在化していない」からこそ発見したJobには価値があるのです。競合他社でもアクセス可能なデータを眺めていて、違う視点を見つけ出すことが出来るのだろうか、と疑問になります。

では、データをどのように活用すればいいか。それは、発見したJobの大きさの検証です。定性調査ではどうしても話す相手が限定されるため、もしかしたらそのJobが普遍的ではない、一個人だけが持っているものかもしれません。そこで、このJobの総量を図るためにデータを活用すればよいのです。

Jobの総量=Jobを抱えている人の人数×Jobの深刻度

で図ることが出来ます。厳密に数値化して出すのは難しいと思いますが、複数のJobの中からどのJobに対して取り組むかを考える際には、データを用いてJobの総量が高いものに優先的に的を絞った方が、成功確率が上がるはずです。

もちろん、最終的な意思決定には、実際に解決案としてブランドが何を(WHAT)提供できるのか、が密接に関わってくることは言うまでもありません。発見したJobが素晴らしくても、解決策が中途半端だったり、消費者に伝わるものでなければ意味がありません。次章では、発見したJobを解決するフェーズ、つまりWHATの思考法へと入っていきたいと思います。

5. ブランドは何を(WHAT)売っているのか?POD編

このペンをおれに売ってみろ

ウルフオブウォールストリートを見たことがある人は多いのではないでしょうか。ジャンク証券販売専門の新会社を設立した敏腕セールスマンの主人公ジョーダンが、セールスの極意を教えるために社員にした質問が「このペンをおれ売ってみろ」でした。

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ペン自体は何の変哲もない、その時ジョーダンが偶然持っていたものです。突然聞かれた社員は戸惑いながらも、「このペンは書き味が優れていて・・・」「このペンは見た目がカッコよくて・・・」と、ペンの特徴を必死に説明して売ろうとします。でも全部ダメ。そこで、ジョーダンが一人の麻薬売人にお手本を見せるためにペンを渡します。すると、「このナプキンに名前を書いてくれ」と麻薬売人。「でも書くものが無い」とジョーダンが返したところですかさずペンを渡す、そして「交渉成立だな」とニヤリ笑う。

もちろんこのやりとりは映画なのでかなりデフォルメされていると思いますが、それでも尚、キレイにWHATの本質を表しています。何かを売りたいと思ったときに、製品自体をダイレクトに売り込むのは下策なのです。売りものはペンそのものではなく、文字を書くというJobを解決・進捗・改善させることに他ならないのです。そして、この麻薬売人は見事にナプキンに文字を書くという必要性・文脈を作り出す(見つけ出す)ことで、強烈なJobを生みだし、ペンをその解決策として提案しました。

世の中に溢れている商品広告を見ると、下策であるはずのダイレクトな商品説明に溢れていることが分かります。「他社製品比較20%増しの○○配合」「史上初、××万画素の超画質!」などがそれにあたります。もちろん全部が全部ダメだとは言いませんが、よほど衝撃的なものでない限り、効果的な広告となっている例は非常に限定的です。消費者にとってみれば、究極的には20%増しの配合なんてものはどうでも良いわけで、それを使った結果として自分にどんな変化が訪れるのか、どんな悩みが解決されるかが全てなのです。

前章までの内容を理解していれば、格段に高い確率でJobを見つけることが出来るでしょう。あとは、そのJobの解決案の提案、つまりブランドの売り物=WHATを考えることが出来ればよいのです。WHATは1)Point Of Difference(自社の売りポイント、以下POD)、2)コミュニケーションの2つから構成されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。

Point Of Difference (POD)

特に製品を開発する際に最も重要となるのが、このPODです。直訳は、"異なる点"ですが、意味合いとしては、顧客が求めており、かつ競合に対して自社だけが持つ優位な点、となります。以下のベン図のCustomerとCompanyだけがクロスしている点がそれにあたります。ほとんど同じ意味合いで良く使われる言葉として、Value Proposition(バリュープロポジション)や、Unique Selling Proposition(ユニークセリングプロポジション、USP)などが挙げられますが、ここではP&Gで最も使われていたPODに倣いたいと思います。

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なぜPODが重要かといえば、消費者があまた存在する競合製品ではなく、自社の製品をわざわざ選んでまでJobの解決を図ろうとする直接的な理由となるからです。そもそも各社の間でPODが存在しない業界はコモディティ化が進行し、永遠の価格競争が始まります。PODは競合からシェアを奪ってくるだけでなく、強固なものに出来ればカテゴリーそのものへの参入障壁を高く築き上げる役割も果たすことになります。

PODを作る方法は、1)カテゴリーの典型的便益をとことん極めて他社の追随を不可能にして独自性を出す、2)既存の製品特徴・テクノロジーを再解釈して独自性を加える、3)新たな製品便益と組み合わせて独自性を作り出す、の3つが代表的です。

1)カテゴリーの典型的便益をとことん極めて他社の追随を不可能にして独自性を出す、は一番分かりやすいPOD追及の形でしょう。これは例えるならば、職人の道だともいえます。ラーメン屋で考えると、王道の醤油ラーメンで素材や製法に徹底的にこだわり、唯一無二の至極の一杯を作り出すことによって、他ラーメン屋との間に"おいしさ"で差別化を生み出す、といった方向性になります。

ある意味では王道ですが、それゆえにとにかく競合が多く、レッドオーシャンの戦いになることがしばしばです。また、ある程度まで極めてからは消費者に知覚可能な差異化を出すことが難しくなっていくため、だんだん製品改良に対する消費者の満足度の伸びが逓減していきます。早期参入して消費者の間のTop of Mind認知を獲得している強者ブランド以外がこの王道を歩むことは、非常に危険だと考えた方が良いでしょう。

2)既存の製品特徴・テクノロジーを再解釈して独自性を加える、は既に自社が持っているものの中から解釈可能な余地を見つけ出す、という方向性になります。例えば、著書「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか」で有名な日本を代表するマーケターの森岡さんは、「ジェットコースターを後ろ向きに走らせる」という大技を、既存技術の中から発見しました。(ちなみに、森岡さんはP&Gの大先輩)

年々来場者数が減少して倒産寸前のUSJに着任した際、ほとんど投資に回すことの出来る予算がなく、リードタイムも限られていた状況下で、「非日常のスリルをとことん味わう」というUSJのPODを強化するアイデアを既存技術の再解釈で発見したのです。結果として、アトラクション待ち時間で世界記録になるほどのヒットとなりました。

この方向性の最大のメリットは、製品改良の投資を伴わない(もしくは最小限)ことと、リードタイムを短く実行に移せることです。そういう意味では、この方向性が最もマーケターとしての腕の見せ所と言えるかもしれません。

3)他の"Job"を満たす便益と組み合わせて独自性を作り出す、は最も有望なPODを生み出します。名著"アイデアのつくり方"でも書かれている通り、実は新しいアイデアの殆どは既存の二つ以上のものの組み合わせで出来ています。

わかりやすい例で言うと、「脂肪燃焼を助けるという便益を足した緑茶のヘルシア」、「目に見える油汚れだけでなく、見えない部分まで徹底的に除菌したいという主婦の声に答えた除菌ジョイ」など、些細なものから大きいものまで挙げればキリがありません。この手法は強力なPODを生み出す可能性を秘めている一方で、諸刃の剣ともなりかねないので二つのことに注意しておきましょう。

一点目は、大きめの製品開発投資が必要となる(ことが多い)ことです。新しい便益を足すためには、研究開発、製造に多大なリソースの投下を強いることになります。また、必然的にリードタイムも長くなる傾向にあることに注意した方がよいでしょう。仮に市場に出ても売れなかったとき、強烈なダメージを受ける可能性が高くなります。

二点目は、組み合わせる便益の選び方によっては、むしろ既に築き上げていたブランドイメージを壊すことにもなり兼ねないということです。"どんな事故からも家族を守れる安全な車"という強いPODを持っていた自動車メーカーのボルボは、スタイリッシュ・スポーツ性能という新たな便益を足そうとした結果、安全というPODとそのPODに惹かれていた既存顧客を失ってしまった苦い経験をしています。

重要なことは、既存の便益を強めるような組み合わせを選ぶことです。1+1=1.5(カニバリゼーションが起きている)、ではなく、1+1=3(ヘイロー効果が起きている)となるようなJobと便益の組み合わせを選ばなければなりません。

最後に一つ、もしかしたらPODを考えるうえで最も重要なことを述ベたいと思います。それは、確かなパフォーマンスを伴った製品を開発するということです。当たり前のことかもしれませんが、容易いことではありません。

前述のどのパターンであれ、PODを信じて購入した顧客がちゃんと満足し、納得するものになっていなければならないのです。顧客は賢く、欺くことは出来ません。特に現代においては、EC・SNSの発展と共に、顧客自らが自分の言葉で商品をレビューし、レコメンド(推薦)するという流れが加速しています。熱狂的なファンを持つブランドは、ファンが新たな顧客を連れてくるので加速度的にユーザーが拡大していくのに対して、一度ファンの期待を裏切るとブランドが信用を失っていくスピードもまた速いものです。

謳っていること=コミュニケーションは必ず知覚可能なレベルで消費者が納得できるものでなければなりません。P&Gでは、Perception is everythingという言葉をよく用いています。結局のところ、私たちが何をやっているかではなく、消費者がどのように感じるかが全て、だということです。消費者が実感できないものには、本質的には価値がありません。次のセクションでは、このPerception=知覚を司るコミュニケーションアイデアの領域を深く見ていきたいと思います。

6. ブランドは何を(WHAT)売っているのか?コミュニケーション編

人々が思い浮かべるマーケターの仕事で、真っ先に思い浮かぶものがコミュニケーション開発でしょう。マーケティングという、Jobを発見・解決するプロセス中でも最もセクシーなパートと言えるかもしれません。優れたコミュニケーションは、実際に消費者が目にし、話題とし、ヒット商品となってブランドを潤します

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これは紛れもない事実ではありますが、敢えて冷めたことを言わせて下さい。あくまで、コミュニケーションは、ブランドのPODをより引き立て、顧客に知覚してもらう為の手段であることを忘れてはいけません。

ヒトで例えるならば、PODは体型で、コミュニケーションは服みたいなものです。どんなに素晴らしい服(強いコミュニケーション)を纏っていても、体重が120KGを超えるような肥満体型(弱いPOD)では一般的に魅力的な外見と呼ぶには難しいでしょう。逆に言うと、健康的で引き締まったシックスパック体型(強いPOD)ならば、多少ダサい服(弱いコミュニケーション)でも魅力的に映るものです。

ここでのコミュニケーションの定義とは、どのような形で消費者の抱えるJobをPODが解決するか(結果として売れるか)、を実際に消費者に伝えるか、であります。コミュニケーションのタッチポイントは多岐に渡るので、マーケターは各コミュニケーション間の一貫性を保って消費者の混乱を防ぐために、各タッチポイント向けにばらばらとコミュニケーションを開発する前に、核となるコミュニケーションアイデアを開発しなければなりません

よくオフラインマーケ担当者とオンラインマーケ担当者が違う、という話しを聞きますが、僕は正しい形だとは思いません。消費者にとってみれば、オンラインもオフラインもなく、ブランドは一つなのです。イメージとしては以下の通り、中心にコミュニケーションアイデアがり、それが各タッチポイントに最適化されて消費者に届くという形が理想となります。

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優れたコミュニケーションの3要素

優れたコミュニケーションの条件が分かるでしょうか?広告賞を受賞するものでしょうか?それとも、見終わったあとに面白いと感じるものでしょうか?優れたコミュニケーション=ブランドの売り上げを伸ばすコミュニケーション、という前提の下に優れたコミュニケーションは具体的に以下の3要素に分解することが出来ると考えています。

1. 正しくブランドが想起される
2. 独自性のおかげで印象に残る
3. PODが伝わる

あまりにも当たり前のことかもしれませんが、この三つが満たされているCMを見たとき、人の購入意向が促進されます(正しいJobに正しいPODでタックルしているという前提です)

認知の部分でも述べましたが、知らないものを消費者は買いません。なので、コミュニケーションに触れた人が正しくブランドを想起する必要があります。また、2019年現在、人々が一日で見る情報の量は10年前に比較して500倍近くになっているそうです。なので、印象に残らないものは、全く頭に残りません。印象的な、つまり独自性のあるコミュニケーションを開発しなければ、記憶の端っこにも引っかからずに消えていきます。そして何より重要なことは、コミュニケーションを見た消費者がPODを理解し、Jobの解決を想像できなければ、ただの面白い広告で終わってしまい、購入には至らない、ということです。

これらの要素を考えるとき、僕が実際に人生で触れてきたコミュニケーションの中で最も秀逸だなと思うのは、2009年にロッテから発売されて大ヒットを記録したFit'sというガムです。年間400万個売れればヒットというガム業界で初年度に8000万個以上打ったというメガヒット商品です。印象的なCMを大量に投稿していたので、覚えている方も多いのではないでしょうか?(もしCMを見たことが無かったら是非Youtubeで見てみて下さい。)

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噛むとフニャンフニャンで有名なこのブランドは、なぜ売れたのでしょうか?ダンスが面白かったからでしょうか?まずは、顧客背景、Job、PODをみてみましょう。

顧客背景:若者のガム離れが進んでいた。原因は、柔らかい食事が多くなったことに伴う若者のあごの力の低下。
Job:口は寂しいけどあごが疲れるからガムは噛みたくない
POD:やわらかくて味長持ち。ずっと噛んでてもあごが疲れない。

顧客理解から製品パフォーマンス、そしてなによりその製品パフォーマンスを覚えやすく印象に残る形で伝えているコミュニケーションアイデア、全てがドンピシャで当てはまった結果の大ヒットだったわけです。やはり、ヒットの裏には秘密があるのですね。

コミュニケーションアイデアの作り方

ある程度資金力に余裕のある会社では、広告代理店を雇ってクリエイターと一緒になってコミュニケーションアイデアを作ることが普通です。規模が小さくて代理店に依頼する資金力がなかったり、インハウスでクリエイティブチームを持っている場合には自社開発するケースもあるでしょう。

いずれにしても、このコミュニケーションアイデアを作る段階では、左脳部分から右脳部分への大幅なジャンプが求められます。だからこそ、広告代理店のクリエイティブには高いお金がついていて、トップクリエイターのもとには依頼が常に殺到しているのです。

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広告代理店に依頼することを、Briefing(ブリーフィング)、もしくはOrientation(オリエンテーション)と呼びます。私はP&G以外のBriefingに出たことがありませんが、いろんな広告代理店の方と話す中でよく聞くのは、「ぶっちゃけ、企業さんのBriefingの内容がめちゃくちゃでよくわ分からんこと多いっす」というものです。

これはP&Gの新米ABM(アシスタントブランドマネージャー)だった時の自分も痛いほど反省しなければならないことですが、自分ですらどんなものが作りたいのか分かっていない状態で「クリエイターなんだからなんか面白いもの作ってよ!」というBriefingには決してしてはいけません。というか、そういうBriefingから、実際に良いコミュニケーションが生まれることはありません。

広告代理店のクリエイターの皆様はもてるクリエイティビティの全てを使って、我々が左脳で理解しているJobとPODを、消費者が理解して購入したくなる形に翻訳してくれる翻訳家なのです。翻訳するべきもともとの言葉を持ち合わせていないマーケターにはBriefingすることは出来ないし、ましてやそれで優れたコミュニケーションなど望むべくもありません。

ではBriefingでカバーされなければならないことは何があるのか?もちろんケースバイケースではあると思いますが、ここに書いてみたいと思います(ちなみに、これはP&GでスタンダードとされているBriefingシートとは異なります。)

・目的
・WHO情報(Job、デモグラ、ペルソナ)
・コミュニケーションで起こしたい消費者の態度変容
・コンセプト/訴求内容
・製品情報(POD、テクノロジー、デモ)
・変更不可能なポイント(ロゴ、パッケージ、起用するタレント等)
・予算
・スケジュール

Briefing内容に関しては書き始めればキリがないので、ここではこれくらいにしておいて、もし要望があれば別途NOTEを作りたいと思います。

アイデアを練り上げていく際に、常にもともとブリーフした時に共有している目的、達成したい消費者の態度変容と客観的に照らし合わせてフィードバックすることを心がけることが大切です。「面白いと思わない」「もっと楽しく」のような主観的なフィードバックは反映するのが難しい上に、もともと言っていた内容とずれてきて、ただ提出されたものに対する文句、になっていることがしばしばです。

クリエイターさんも人間であり、信じられないぐらい情熱と命を注いで(本当に寝ないで)アイデアを振り絞っています。そこに対するリスペクトが無ければ、いいものなど一緒に作り上げることは出来ないのです。

確かなJobの理解が出来て、それに基づいた製品POD、そして消費者に伝わるコミュニケーションアイデアが作れました。あとは、正しい方法で消費者との接点を持って伝えていくだけです。次章ではフレームワークの最後、HOWに関してみていきましょう。

7. 冷静に計画し、情熱的な実行(HOW)で勝つ!

The only strategy that consumer and shopper see is execution

上記の言葉は、いつぞやのP&Gの社長が言ったもので、今でもたまに社内で語られていたりします。直訳すれば、「消費者が唯一見ることができる戦略は実行だけだ」となります。要するに、どんなに美しい戦略を描いても、結局消費者が見るのは実行だけなのだ、という"絵に描いた餅"状態への警鐘であります。

戦略を描くことも、その戦略を実行するのも、どちらも重要になります。例えるなら、建築士と大工の間に優劣がないのと同じです。建築士がいないと家の設計図は出来ませんが、大工がいないといくら優れた設計図があっても実際には家が建ちません。

しかし傾向として、どうしても戦略のほうが業務上セクシーに見えてしまうものです。戦略立案と聞くとなにか凄まじい知的労働を行っているような気がしませんか?戦略コンサルティングファームと聞くと、すごく賢そうに聞こえませんか?一方で、例えばインスタグラムのエンゲージメントレートの1%を改善するために毎日ABテストを繰り返して最適化するのは、どことなく泥臭く地味な印象があります。

もちろん役職によって、もしくは自分自身のスキルによって、どちらの比率をより求められるかは異なります。但し、結局マーケターとして成果を出そうと思えば、実行(HOW)も同じくらい重要になってくることは理解しておかなければなりません。この前提が抜け落ちると、頑張って気づき上げた強靭だと思われた戦略も、一瞬で足元から崩れ落ちる、なんてことになりかねないので注意が必要です。

カスタマージャーニーから各プランの役割を考える

実行(HOW)を考える際に、最も有効に頭を整理してくれるのがカスタマージャーニーマップの活用になります。カスタマージャーニーマップとは、消費者の認知から購入、他者への推薦に至るまでの態度変容を可視化したもので、該当するブランドがどのような意図でプランを注げば良いのかを明らかにします。伝統的にはAIDAモデルやAIDMAモデルといったものが有名ですが、こここでは2020年に最もフィットしているであろう5Aモデルを取り上げたいと思います。(コトラーがマーケティング4.0の中で説明していたことで有名)

5Aモデル
Aware(認知)・・・ブランドを知っている
Appeal(訴求)・・・ブランドを好きだ
Ask(調査)・・・比較・検討した結果良いと思う
Act(行動・購入)・・・使う・購入する
Advocate(推奨)・・・他者に推奨する

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消費者のミクロな態度変容を追っかけたときに、このカスタマージャーニーマップ上のどこのフェーズで躓いているのかを理解すれば、その部分の実行(HOW)を変更することで改善を期待することが出来ます。また、自社ブランドが行っている活動がこのカスタマージャーニーのどの部分を狙っているものなのかを明確に理解することで、なんとなく予算を投下するという非効率的なリソース投下を避けることができ、KPI設定と投資効果検証が容易くなるでしょう。

私がP&Gの時に扱っていたお皿洗い洗剤や布用消臭剤のような、価格帯が安く、危険性もないような商品は、購入の意思決定を失敗した(つまり、買ってみたけどダメだった)時の購入リスクが低い傾向にあります。究極、満足できなかったら次の日にドラッグストアで買いなおせば良いだけでしょう。

なので結果として、認知(Ask)や推奨(Advocate)のフェーズはそもそも存在しなかったり、限定的だったりします。例えば、これを読んでいる方で、ファブリーズとリセッシュを十分に比較検討して違いを理解したうえで購入を決めているような人は稀(いない?)だと思うのです。

一方で、購入のリスクが高いもの、家・車・高級化粧品・バッグ・エステ・美容師、などはむしろ認知(Aware)の部分が小さくなっていて、逆に調査(Ask)や推奨(Advocate)が分厚く存在することになります。車をお店に行ってなんとなくで買う人は殆ど居ないはずです。一方で、熱狂的なファンが多いのもこういう商品で、一度気に入ってもらうと、彼らが率先して他者に進めてくれる可能性が高くなります。みなさんも、一度は仲いい友人から、聞いたこともないような化粧品や車を薦められたことがあるのではないでしょうか。

何が言いたいかというと、カスタマージャーニーは、それぞれのブランド・所属するカテゴリーによって異なる、ということです。自社ブランドが消費者にとってどのようなカスタマージャーニーになっているかというのは、むしろ各マーケターが自分で考えなければならないことです。そして、施策のたびに少しづつ精度を高めていけば、プランニングの成功確率が飛躍するはずです。

ここからは、多くのマーケターにとって実行(HOW)の大部分であるメディアを3種類に分類したうえでそれぞれ取り上げ、主にカスタマージャーニー上でどこに効いてくるのか、どのような業界に特に効果があるのかを解説していきたいと思います。あくまで代表的なものを取り上げており、業界によりブランドにより差は出てくるかと思います。個別ケースでどのように考えるべきか知りたい場合には、別途お調べ頂くか、末尾のSNSまでDMいただければと思います。

ペイドメディア (Paid Media)

メディアを通じた広告出稿といえば、まず頭に思い浮かぶのがこのペイドメディアになると思います。読んで字のごとく、企業がお金を払ったうえで媒体から広告枠を購入し、自分たちの伝えたい内容を広告主として提供するという手法です。テレビ、ラジオ、新聞、電車の中刷りなどはもちろんのこと、Youtubeで挟み込まれるTrue View広告や、GDN、YDNなどブラウザ上で働くディスプレイ広告もこれに当たります。

ペイドメディアの圧倒的なメリットは、なんといってもマスに対して確実で広範なリーチを確保することが出来ることです。例えば、テレビで500GRP購入すれば85%のリーチと平均3回の視聴頻度になる、というのはある程度決待っています。(数字はざっくり適当です) この性質を生かして、主にペイドメディアは、マス向けに事業を展開しているブランドの認知(Awareness)、訴求(Appeal)を目的として使用されることが多いでしょう。

実は、国民全体のリーチで50%を超えてくるような媒体は基本的にこのペイドメディア以外に考えられません。例えば大人気のYoutuberのヒカキンさんでも、ざっと見る限り1動画当たりの再生回数は200万再生前後です。20-59歳人口を4000万人と見積もってもリーチは5%ほどしかありません(ヒカキンさんの視聴者は実際にはキッズが多いと思います)。

後ほど後述するアーンドメディアに広い意味で属するインフルエンサーコラボ動画などは近年注目を集めていますが、実際にはリーチという意味でこの程度に過ぎない、ということは理解しておきましょう。

オフラインメディア対オンライン(デジタル)メディアでどちらが有効か、みたいな二項対立の議論をよく目に見ますが、本質を見失っていると思います。自社ブランドのWHOとWHATを考え、予算も加味したうえでカスタマージャーニーに照らした時に、どのタッチポイントを認知ドライバーとして選択するべきか、だけの話しです。最終的に起こしたい態度変容から逆算すれば、消費者がどこに自社ブランドとの接点を持つのかは究極的には関係がありません。

このような謎の不毛な議論を起こさないためにも、戦略ーWHO-WHATの部分をマーケターたるもの誰よりもクリアに把握する必要があります。そこさえぶれなければ、HOWの議論がとっ散らかることはある程度避けることが出来るでしょう。

オウンドメディア (Owned Media)

カスタマージャーニーの訴求(Appeal)から調査(Ask)にかけて特に活躍するのがオウンドメディアになります。また、そこまでマス向けでもないブランドであれば、認知(Aware)にも十分に役割を果たすでしょう。

"Owned=保有されている"という直訳の通り、ブランドによって直接保有・運用されているメディアのことを指します。伝統的にはブランドのホームページやブログなど、最近ではインスタやYoutube上のブランドアカウントや社員個人アカウントも、ここではオウンドメディアに入れて考えます。

メリットは、完全にブランドがメッセージをコントロールして伝えることが出来る点です。また、基本的に広告出稿コストもかかりません。その特性から、ある程度購入リスクが高い=中ー高価格帯のブランドは、他ブランドとの比較用のチャネルとしてオウンドメディアの強化を心掛ける必要があります。

例えば、僕は最近マットレスを購入しましたが、購入にあたり、実際に様々なメーカーのホームページに行って商品特性を見たりレビューを見たりと、かなり入念に各ブランドのオウンドメディア間を行き来しました。マットレスはそれなりに高価な買い物の上、ミスったら毎日の生産性に甚大な影響を及ぼす為、調査段階が重要だったですわけです。

また、直近で僕が度肝を抜かれたオウンドメディアの認知拡大活用は、Youtuberのヒカルさんと、靴ECのロコンド社のコラボ靴販売です。簡単な背景としては、ヒカルさんがロコンド社の社長を説得してコラボ靴を開発し、ヒカルさんがYoutube告知で完売しきったらロコンドのTVCMに出してくれという交渉をロコンド社長に焚きつけます。

ヒカルさんの呼びかけのもと、全国のヒカルファン(400万人近い登録者)が販売直後からロコンドサイトに靴を求めてアクセスし、ロコンドは即サーバーダウン。結局2-3日で4億円売り上げるというトンデモな事態に発展し、ヒカルさんはTVCMデビューを果たしました。実際にこれがどこまで演出かは知りませんが、一視聴者として、マーケターとして、すごく面白い流れでしたし、実際に靴を購入したくなりました。

ヒカルさんにとってオウンドメディアである自分のYoutubeチャンネルで、自分の開発した商品を、自分のファンに向けて宣伝したわけですから、その効果は甚大です。このように、ブランドそのものに対して強いファンを持っているブランドのオウンドメディア活用は、現在進行形で新しい広告モデルとして集客上必須だと考えています。(エステ、美容室、ファッション、など)

アーンドメディア(Earned Media)

Earned=獲得された、という意味ですが、具体的には第三者によって取り上げられ、拡散されたメディア露出のことを指します。いわゆるSNS上での"バズった"というのもアーンドメディアでの拡散になりますし、トレンド商品として王様のブランチやヒルナンデスで取り上げられる、なども広い意味ではアーンドメディアになります。

第三者の言葉によって共感・信頼が付与されて拡散されているので、購入(Act)、推奨(Advocate)への影響度が高くなります。アーンドで沢山の信頼を獲得しているブランドは、ファン自らがブランドそのものの広告塔となってファン層を広げてくれます。毎日飽きるほどの広告を見ている消費者からすると、第三者による共感・信頼が与えられているブランドは非常に魅力的に映るわけです。

但し、これも万能ではありません。まず、拡散される内容をブランド側がコントロールすることが出来ないのです。よく巷でいう"炎上"という状態は、まさにアーンドメディアがネガティブに爆発したパターンのことで、場合によってはブランド価値を再起不能なまでに陥れます。牛丼屋チェーンで深夜にテラ豚丼なる画像をアルバイトが登校して炎上したのは、記憶に新しいと思います。

また、狙ってバズを作り出すのは容易ではないため、事前にプランニングの段階ではリーチの予測を立てずらいという難しさもあります。頑張って拡散される仕組みを作ってやってみたけど、蓋を開けたら誰も話題にしていなかった、なんてことはザラにある話しです。

共感・信頼されるためには、社会や人々の間に渦巻く情緒的なストレスを理解し、ブランドのメッセージに織り込むことが必要となってきます。分かりやすい例として、P&Gのパンテーンが実施した"#Hair We Goさぁ、この髪でいこう"、キャンペーンを挙げたいと思います。

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「なりたい髪を叶えることによって一歩前に踏み出す勇気を与える」というブランド目的のパンテーンと、「みんな同じリクルートスーツに同じ髪型で就活する」という日本の就職活動に蔓延する同調圧力へのアンチテーゼが、人々の心を動かし、SNS・テレビ・口コムで拡散されました。今では、就活だけでなく、学校の髪型校則などにも広がって、多くの方々から支持を集めています。

アーンドメディアの最後に、PRに関して触れたいと思います。よくPR活動をマーケティング活動と分けて考えることがありますが、僕個人の意見としては、PRというのはアーンドメディアを活用していかにして購入(Act)、推奨(Advocate)を作り出していくか、というマーケティングプロセスの一部分の話しです。

確かにパブリッシャーとのやりとりや、プレスリリース、プランの作りこみなど高度な専門性を要しますが、あくまでブランドの戦略ーWHOーWHATの下に統合され、ブランド担当者によってメッセージの一貫性を担保されているべきで、広報部とマーケティング部が別々のプログラムを行うべきではないと考えます。

非メディア接触

実行(HOW)は多岐に渡り、なにもメディア接触だけに限りません。イベントや、店頭でのプロモーション(デパ地下の試食など)なども含まれてきます。一度体験してもらえれば購入率がぐっと上がるようなブランドは、思い切って非メディアでのブランド接触を検討してみるのも手になります。

たくさんある非メディア接触の中で、多くの企業にとってブレークスルーになり得る武器が戦略的提携=パートナーマーケティングです。Youtube的に言うと"コラボする"ということになるのでしょう。特定の課題を抱えている両ブランドが、お互いのPODでお互いの課題を解決しあうことで、1+1が3にも4にもなるような魅力的な提案が出来れば、自社だけの努力よりも魅力的なものにすることが可能です。

例として、僕が担当としてファブリーズがタクシー最大手の日本交通様と提携して行ったファブリーズタクシーというキャンペーンを挙げたいと思います。"タクシーがクサい"というお客様の声が少なからずあり、課題として感じていたタクシー会社様と、"認知度の低い車用ファブリーズをもっと多くの人に体感して欲しい"という両ブランドの意図がばっちりとはまりました。

ファブリーズからすると一日に何十万人というお客様に、車用ファブリーズの効果を体感してもらえます。タクシー会社様からすると、そのお客様の社内の香り体験を高めることが出来、ロイヤルティの獲得に繋がります。結果として、WinーWinのパートナリングとなりました。試み自体が大きく取り上げられ、アーンドメディアでもかなりのリーチを獲得するに至り、期間の売り上げ目標の大幅な更新に寄与しました。

自社だけでは課題を解決できそうもないとき、自社が解決策を提示できそうな提携先を見つけてきて、Win-Winのプログラムを組むことを考えてみるのも手です。ただし、両社に明確なWinが無ければ他社を巻き込むことは出来ませんし、細かい折衝などが必要になってくるので、難易度は比較的高いかと思います。

実行(HOW)の話しは果てしない

代表的なHOWを話してきましたが、もちろんこれら以外にも何千何万ものHOWが世の中には存在します。この瞬間にも、新たなメニュー・手法が生み出されていることでしょう。改めて強調しますが、新しい手法ありきで飛びつくことは正しくありません。戦略ーWHO-WHATの徹底的理解のもとに、カスタマージャーニーから照らしてブランドの課題を最も解決するであろうHOWを選択することが大事です。

8. 最後に 僕はマーケティングを進化させたい!

ここまで3万文字以上に渡り、マーケティングの基本的な体系を説明してきました。まずマーケティングを定義し、戦略ーWHOーWHATーHOWと超基本的かつ普遍的な思考の流れを、なるだけわかりやすく書いてきたつもりです。もちろん実際に実践しようと思えば、ブランドや社内の環境ごとに大小様々なチャレンジが待っていることは間違いないと思います。しかし、突き詰めると、マーケティングの本質はここに戻ってくると確信しています。ぜひ、少しでも日々の業務にお役立てて頂ければ、頑張って書いた僕としてもこれ以上幸せなことはありません。

最後に、僕個人の考えを書いてこの長いNOTEの締めとしたいと思います。

僕は、P&Gに在籍中から他社さんのブランド戦略立案、マーケティングプランニングのお手伝いを行ってきました(もちろん、P&Gとは全く競合していません)。その中で、P&Gで当然のように行われているディスカッションが、実は世の中では随分と"目から鱗"の情報だったり、価値の高い提案であることがしばしばある、ということを学びました。このことは、多くのP&Gを卒業された先輩方が、みなそれぞれの業界で一貫して結果を出されていることからも裏付けされていると思います。

これはなぜか。大きくは、以下の二つの理由によるものだと考えています。
1. マーケティングを体系的に理解している人が不足している
2. 企業がマーケティングをシステムとして浸透させていない(ので俗人的になっている)

このNOTEを書こうと思ったきっかけは1.によるものです。想定しているWHOとしては、P&Gに商社から転職したばかりの自分自身です。もちろんこのNOTEがどれぐらい読まれるかに関しては知りませんし、自信もありませんが、今の自分の影響力の範囲内では満足がいくものに出来たかなと思っています。

そして、P&Gを辞めた僕のチャレンジとしては、2.に取り組みたい思っています。つまり、どんな会社でも、どんな組織でも、最高峰のマーケティングをシステムとして内包できるように、それをたくさんの会社にインストールしたいのです。僕は、究極的には製品として、マーケティングの思考法そのものを誰でも使えるようにしたいと思っています。

ここで困ったことに、自分のNOTEでWHO(フー)ではなく"不(フ)"が大事、と言いながら、実は僕はP&G以外の会社のマーケティング事情を沢山は知りません。当然、"不"に関しても理解していないはずです。なので、ぜひ教えてください。お礼として、お手伝いできる範囲で無料での事業相談や、マーケティング研修のニーズがあればお受けしたいと思っています。以下にFacebookとメールアドレスを貼っておきますので、少しでも興味がある方は、DMお待ちしております!

ishii.kensuke@mktdemo.com

長々とお付き合い頂き有難うございました! 石井

参考文献



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MarketingをDemonstrate(お手本を見せる)、およびDemocracy(民主化)する、Marketing Demo株式会社を創業。 経歴 東大農学部→住友商事→P&G(アジア本社転勤)→今