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ARM MacあらためApple Silicon Mac

以前、6年前ぐらいに「ARM Mac」の噂について書いたことがありました。一応、そのことについてケジメとして書いておく必要を感じたので、書いておきましょう。

当時はMacもIntel CPUを採用していました(大昔の出来事のようです)。いまでは、すべてのMacがARM系のApple Silicon(M1/M2/M3)を搭載しています。この、IntelからApple Siliconへの切り替えは、ここ数年で一番驚いた話ではあります。

そんな自分もいまこれを、M1 Mac miniで書いているわけで、ARM Macが実現しているという不思議な感動を覚えています。途中、買って1時間もたたずに「M1 Macで特定の処理がびっくりするぐらい遅い」ことに気づいて、Appleにバグレポートを書いて修正させたり、人知れずいろいろ活動しておりました(誰もほめてはくれないのですが)。

「君たちの最新機種、10年前のローエンド機種の10倍遅いよ!」と、バグレポートを書いたらAppleの屈強のエンジニアたちがムキになって修正していました。こんな個人に毛が生えた程度の零細デベロッパーではなく、大企業で悠々と仕事しているデベロッパーにそういうのを書いてほしいところです。

▲こちらの電子書籍にレポートしたプログラムやグラフを収録

Intel CPUからARM(Apple Silicon)への切り替えは、最上位機種(Mac Pro)次第だとは思っていました。ARM系のCPUでそこまでハイパワーなものは見たことがなかったからです。

そうした世間の空気をガラリと変えたのが、スーパーコンピュータ「富岳」の登場です。

「富岳」でARM系のSoCを多数搭載した計算ノードを多数組み合わせて、大規模かつ強力なシステムが組まれたのを見て、「Mac Proもあるかもしれない」と感じたものでした。

でも、それでも、Mac ProとSoCの組み合わせは「難しい」のです。クローズドな構成にするかわりに速度と電力効率を稼ぐSoCと、Mac Proみたいな拡張性モンスターでは方向性が真逆です。とくに、グラフィックボード(GPU)をどうするのかという疑問がありました。

結局、M1世代でのMac Proは見送りとなり、M2世代でM2 Maxを2つ組み合わせた構成のM2 UltraをMac Proに搭載

GPUについては、Apple製のGPUコアがSoCに内蔵されるかっこうで、「ストレージやPCIカードの拡張が可能なMac Studio」というレベル。Mac Studioと処理性能は差がありません。

RAM最大192GBといっても拡張は一切できないので、Intel Xeonプロセッサを搭載した前モデルが1.5TBまで拡張可能といっていたのと比べると「ナニソレ?」と大声を出してしまいそうなおかわいらしいたたずまいです。

処理速度は前モデルよりも上がっているようですが、RAMの搭載量が少ないことで用途を狭めてしまうことでしょう。特定用途(高解像度ビデオ編集、映画制作)以外ではMac Proの存在感は、ほぼ「空気」。製品名がProなのに存在感はAirなんだな、みたいな感想です。

「じゃあ、前機種と同じぐらいのRAMが積めたらお前買うんだな?」

と言われても、そんな高価で、大きくて、ドライヤーを常時つけているぐらいの電力を喰うようなマシンを回しておくわけにも行かないので、ある程度方向性としては理解できつつも、史上もっとも最上位機種らしからぬ最上位機種ではあったと思います。

「すみません! 頑張ったけどここまでしかできませんでした!」

という、そういう製品と受け止めました。始末書みたいな存在です。Apple社内でも、製品がラインナップから消えると、担当していた人はクビになるようなので(よほどのことがないかぎり配置転換とかはしないらしい)、とりあえず組織維持のために出したみたいな雰囲気を感じます。

Mac Proの後継製品が出なかったら、そういうものとして理解すべきなんでしょう(2010年代後半はそういう数年間放置状態の製品が複数あったので、油断できないのですが)。

M1世代では「こりゃすげえ!」「時代、かわっちゃうかも?」と驚きの声で迎えられたApple Silicon Macですが、バッテリー駆動させてもパフォーマンスが落ちないという脅威の電力効率の良さに定評がありつつも、最上位機種の処理性能という面では伸び悩みを感じるところです。

おまけに、為替レートの変動を受けてApple Silicon世代の製品がお高くなっているため、M1/M2/M3世代になってMacが「買いにくくなった」ことも気になります。

こうした情勢では、先を読むことの難しさを感じます。まったく分かりません。




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