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かさ高試験(フィルパワー)、吹き出し試験〜ダウンウェア周辺の話❶〜

アパレル・繊維製品の試験機関をご存知でしょうか。

カケンさん、ボーケンさん、キューテックさん、ケケンさん、、、、などなど

『染色堅牢度』とか『引裂き強度』とか聞いたことあると思いますがそういった一連の繊維、繊維製品の品質検査をする民間の試験機関です。

その辺の各種試験関係の話も機会があれば別でやろうと思いますが、今回はダウンウェアで実施される試験についてです。

1、かさ高性測定

お馴染みのフィルパワーを測定する試験です。
ここ最近、以前ほど重視されなくなりましたが、フィルパワーについて少しだけ触れておきます。

どこかの回で書きましたがダウンボールの断熱材(空気をためる力)としての能力を表す基準です。
(防寒能力は暖かさに直結しますが、ダウンウェアの暖かさはこの試験の数字のみで判断はできません。ダウンの量、ウェアのつくり、使っている生地などなども考慮が必要です。でも目安にはなります)

詳しくは試験方法など含め下記のQーTECさんのサイトで確認してください。

2013年にIDFB法という国際規格で試験方法が統一され、現在の世界共通基準ができました。

よく700フィルパワー、850フィルパワー、1000フィルパワーとか表記されてますが数字が大きいほど良質のダウンということでおぼえておけば一応OKです。

500FP             低品質ダウン
600〜700FP  良質ダウン
700FP以上  高品質ダウン

みたいによく紹介されてます。実際どのくらいの品質の違いがあるのかリアルにはわからないのですが参考までにのせておきます。(低品質の低品質具合とかもどんなもんなんでしょ?)

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(フィルパワー表記タグ:アライド社)


UA・BYで扱っているダウンウェアのダウンはおそらく500FP以下のものはないはずですので、お店のダウンウェアの品質の心配は一応いらないです。(ということになってます。)

以前にも書きましたが能力が高くてどっちかというと都心ではオーバースペックになりがちくらいだと思われます。


2、羽毛吹き出し耐久試験

最近、滅多にクレームも発生しなくなりましたが、ダウンの吹き出しはいまだなくなってはいません。

大元の原因はだいたいご存知だと思います。

・ダウンボールの小羽枝が細かすぎて、パッキングしてる生地の織り目の隙間からでてくる、縫製の針穴からでてくる

・ダウンボールに混ざるスモールフェザーの羽軸が生地に刺さってでてくる、縫製の針穴からででてくる

人類がダウンを防寒用の断熱材として利用するようになってから現在に至るまで
「ダウンの吹き出し問題」は多分ずーっとついて回ってます。

ダウンウェアの歴史は「吹き出し」との戦いの歴史でもあります。

それもダウンという素材が、
「防寒能力がとても高くてとても軽いけど、タンポポの綿毛状のまま使わないとその能力が発揮されない特殊な素材」だからです。

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(ダウンボール画像:アライド社のトレーサビリティ管理を示すタグ、処理したダウンをLOT ナンバーで管理)

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下サイトはQーTECさんの「ダウンの吹き出し耐久試験」の紹介ページです。

試験方法は
「表記に従って洗濯、乾燥してみる」
その上で、“どのくらいダウンがでてくるか?“ を測定、評価するようです。
詳しい基準値などはちょっとわからなかったです。
「ダウンの羽枝が微細なのでどうしてもある程度はでてきてしまう。が、許容範囲を超えてでてくるものには何かしら他の原因がある」と、判断するみたいです。

不良と評価した場合の『主な吹き出し原因』も列挙してあるのでそちらも是非、参考に見てください。
一定量をこえて吹き出すものはやはりそれなりの原因があるようで、

・縫製
・生地
・ダウン、フェザーの品質

に何かしらの問題があるよということのようです。
縫製や生地の問題だけでなく、不良ダウンが多く混ざるのも吹き出しの原因になってます。
破損したダウン・フェザーや未成熟なダウン・フェザーが多く混ざっていたり、
着用によって破損がすすむと吹き出しも多くなります。
(絡み合うダウン同士の塊から欠損して落ちてしまうみたいです)

=吹き出しの原因になる不良ダウン・フェザーの種類=
・ファイバー(ダウンやフェザーからちぎれた細かい羽枝)
・ネックフェザー(首元近くからとれる細かいフェザー)
・未成熟ダウン、フェザー(飼育期間が十分でなく成熟しなかった羽毛)

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「ウールの表地に付着しているダウンファイバー:ナイロン地だとダウンが吹き出してもそのまま落ちるケースが多いですがウール地はダウンが毛足にくっついて残りがちです。そのせいで表地ウールのダウンウェアの吹き出しは目立ちます。」

<まとめ>
・フィルパワー表記はダウンウェアの暖かさを全てあらわすものではないですが、目安にはなります。
・ダウンウェアにはダウンの吹き出し問題がついて回りますが、羽毛の羽枝が細かすぎてでてきてしまうのはある程度しょうがない。
・吹き出し耐久試験ではそれ以外の製品不良にあたる原因を確認する
・主な不良は縫製、生地、ダウンの品質のいずれかに問題あることが多い

次回は「ダウンの吹き出しを防ぐ工夫や技術」について紹介します。

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