永遠井 雷人

太陽が沈むと月が出る 黄昏はほんの一瞬 そんな一瞬に足を止める

永遠井 雷人

太陽が沈むと月が出る 黄昏はほんの一瞬 そんな一瞬に足を止める

最近の記事

幸運のヒゲ

うちには真っ黒な生きたぬいぐるみがいる。 スタンダードプードルという犬種でカールのかかった毛が特徴の犬だ。 うちの子は真っ黒だから目がどこにあるのかすぐには分からない。 横を見た時に見える白目の部分で判断するのだ。 犬を飼っている方はご存知かと思うが、犬には体毛の他に口周りに生えている太いヒゲがある。 想像に容易いことだろう。 うちの子は本当に分からない。 ヒゲを目視できたことがないのだ。 ある日フローリングに落ちている毛に目が留まった。 明らかに人の髪の毛ではない。 太

    • 開戦の狼煙

      「こんなことも分からないのか」 「学生時代何やってたんだ」 「いつまでも学生気分でいるんじゃねーよ」 分かってんだよ。 こっちだって必死でやってる。 去年まで学生だったから少しでもアンタ達に追い付きたくて毎日仕事に向き合ってる。 「図面も読めないの?」 「高校物理のレベルなんだけど」 「お前には積極性がない」 こんなはずじゃなかった。 俺の思い描いていた社会人1年目はもっと教えてもらえるものだと思っていた。 それが間違いだった。 学生時代は教科書があって、問題集があって

      • 機械な世界

        人と機械って何が違うんだろう 機械は疲れを知らない エスカレーターは人が乗っているときも乗っていないときも 休まず動いている 人はずっと働くなんてできない でも機械も人も働きすぎたら壊れてしまう 違いなんてない 機械は代わりがいる 壊れてしまっても新しく買えばいい 人はみんなが唯一無二の存在で代わりはいない それは家族の話 家族の中の自分に代わりなんていない でも社会で見たら自分の代わりで溢れてる 君が壊れたりしても世界はずっと回っていく 何もなかったかのように 人だっ