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【映画感想】TITANE


あらすじ

幼い頃、交通事故により頭蓋骨にチタンプレートが埋め込まれたアレクシア。
彼女はそれ以来<車>に対し異常な執着心を抱き、危険な衝動に駆られるようになる。自らの犯した罪により行き場を失った彼女はある日、消防士のヴァンサンと出会う。10年前に息子が行方不明となり、今は孤独に生きる彼に引き取られ、ふたりは奇妙な共同生活を始める。だが、彼女は自らの体にある重大な秘密を抱えていた──

TITANE公式サイトより

登場人物

アレクシア(アガト・ルセル)
主人公のチタンガール。

ヴァンサン(ヴァンサン・ランドン)
消防署の隊長。


感想

約2時間の間、一度も目が離せないほど見入ってしまった。だが、この映画を完全に理解できるほど自分の読解力がなかったのが残念だ。
あと、すごく痛そうな描写が多くてギェ〜〜〜となった。妊婦って大変なんだなあというクソバカの感想を抱いた。
これが本当のカーセックス。ってね笑🤣🤣🤣と言いたくなるのを必死に堪えて感想を書いた。もう言ってしまったので台無しなのですが。
最初はもっとグロテスクで陰惨な結末になるんじゃないかと思っていた。隊長の息子への執着心と、ステロイド打ちまくりの様子を見て、ドントブリーズのような激ヤバ親父なのではと心配して(期待して)いたのだが、意外にもハートフルなオチで終わっていた。

まず、この映画は父と娘の親子愛を描いたものであると思う。
アレクシアの父はどうやら娘のことがあまり好きではないようで、車の事故以来2人の間には大きな溝ができてしまった(最初の交通事故はアレクシアも悪いと思う)
そんな彼女は両親を焼き殺し、ヴァンサンの家に逃げ込む。彼も、かつて自分の息子を失った後悔に苛まれていた。特にヴァンサンの方は『守る』という行為に並々ならぬ執着を持っているようで、いつまでも強い父で居ようと毎日ステロイドを打ちまくっている。
父の愛のない娘と、子を守れなかった父が、複雑な歪みの中で共同生活を営んでゆく。というのが本作の内容である。
話の筋自体は理解し難いものではない。しかし、本作の恐ろしさは、このストーリーに『チタンを埋め込まれ、車と愛し合うようになった女』というとんでもない設定を組み込んでいるところにある。
まさに、この作品自体がチタンと愛のハイブリッドベイビーだといえよう。

ヴァンサンの息子アドリアンは多分火事で死んでいる。途中で子供部屋のタンス?の中で焼け死んでいる子供の幻覚を見るのだが、あれがアドリアンなのではないだろうか。ヴァンサンは消防士でありながら息子が死んでしまったことを受け入れられず、行方不明届けを出したのではないだろうか。と思った。

私は、アレクシアが車との子を孕んだ意味について、まだ理解できていないが、現時点での考察を書いておく。
これは妊娠という行為に対する恐怖を表現したものではないか?と思った。
妊娠とは愛の結晶であり、慈しむべき素晴らしいものだと世間一般には考えられている。しかし、親から子への愛を十分に得ていないアレクシアにとって、妊娠とは自分の体内で悍ましい異物が膨れ上がっていく現象だと感じていたのではないだろうか。
実際に彼女は子供を堕ろそうとするし、妊娠しているにも関わらずお腹にサラシをきつく巻き上げる。彼女にとって子供は得体の知れない化け物でしかない。というのを表現しているのではないか?と思った。

今思いついた。
アレクシアはアドリアンに変装して隊長に取り入るのだが、これは娘から息子になることで父の愛を享受しようとしていたと考えられるのではないだろうか。
彼女は自分が娘だから、女だから父に愛されないと感じていたのではないかと思った。息子として産まれていれば、もっと愛してもらえたのではないか……と。
しかし、彼女は車の子を妊娠してしまう。妊娠は女性の象徴として描かれていて、人間ではないから堕ろすこともできない。女性であることを隠しながら生きていくが、最後には隊長に(父親に)自分の本当の姿を受け入れてもらえる。という構造なのではないかと思った。

産まれてきたチタンベイビーはこの後どうやって生きていくのだろうか。なんだか悲しい過去を持つヒーローの誕生秘話みたいだと思った。
ぜひチタン2を作って、チタンの体を持つスーパーヒーローが大活躍するアクション映画を撮ってほしい。

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